アイリン、サヤカ、エヴァ、マツリの四人はアドベンチャーエリアに足を踏み入れていた。ここにも刺客が潜んでいるようだが、奇襲の可能性もあるため、油断は禁物だ。
「今のところは異常は無いな。だが、何時敵が襲い掛かるか分からないから油断するな」
「そうね。零夜たちも頑張っているし、私たちも負けずに立ち向かわないと!」
サヤカの忠告にアイリンが力強く頷き、闘志を燃やしていく。零夜たちが奮闘している以上、彼女たちも負けるわけにはいかない。
その後ろでは、エヴァが頬を膨らませ、不満げな表情を浮かべていた。それを見たマツリは苦笑いを浮かべながら、エヴァの背中を優しく擦る。
「零夜と一緒が良かった……くじ運が悪いのが気になるけど……」
「落ち着けよ。合流するまでの辛抱だからさ」
「むう……」
マツリの慰めにエヴァが俯いたその瞬間、アイリンがピタリと立ち止まり、敵の気配を鋭く察知した。ピンクの尻尾がピンと立ち、彼女の直感が危険を告げている。
「この先のアトラクションに敵がいるわ! 名前はライドクルーズNEOよ!」
「ライドクルーズNEO……もしかしてあれなのか?」
アイリンの言葉にサヤカが反応し、目の前にそびえるアトラクションを指さす。そこには「ライドクルーズNEO」と書かれた巨大な看板が掲げられ、不気味な雰囲気を漂わせていた。
「間違いないわ。ここはアトラクションに乗って敵を探しましょう!」
「そうだな。アタイは空を飛んで敵がいないか探してみる!」
アイリンの提案にマツリが即座に賛同し、背中の翼を力強く広げる。彼女は一気に空へと舞い上がり、アトラクション全体を見渡しながら敵の動きを探り始めた。
「私たちはアトラクションに乗って、敵がいないか目を見張らないと!」
「ええ。そうするしか方法は無いし、早く終わって零夜と合流しないと!」
「私も行くとするか!」
アイリン、エヴァ、サヤカはアトラクションに乗り込み、敵を探索する作戦を立てる。成功するかどうかは未知数だが、彼女たちに他の選択肢はなかった。
※
ライドクルーズNEOの乗り物は、頑丈なトロッコ型だ。アイリン、エヴァ、サヤカは迷わずトロッコに乗り込み、スピーカーから流れるアナウンスが響き始める。
『ようこそ、ライドクルーズNEOへ。このアトラクションはトロッコに乗りながら洞窟の中を探検しますが、途中で風景が変わりますので、是非楽しんでください!』
アナウンスが終わると同時に、けたたましい発車ベルが鳴り響き、トロッコがガクンと動き出す。トロッコは目の前に広がる暗い洞窟へと突き進んでいく。ここからが冒険の始まりであるのだ。
「いよいよか……この洞窟の先には何があるのか……」
「分からないわ。恐らくこの先には危険な場所が沢山あるけど、暗闇の中なら私たちでも大丈夫だからね」
サヤカの呟きにアイリンが答え、自信たっぷりにウィンクをしてみせる。キャットヒューマンであるアイリンとサヤカは夜目が利くため、暗闇での戦闘も恐れることはない。
「私は特殊嗅覚と特殊聴覚があるから大丈夫だけど……ん? 敵の匂いがするわ!」
エヴァが苦笑いを浮かべた直後、鼻をヒクつかせて敵の存在を感知する。彼女の表情が一変し、真剣な眼差しで二人を振り返った。
「二人とも、敵が来るわ! 戦闘態勢に入って!」
「やっぱりね! やるからには容赦しないから!」
「こっちも容赦なくやるのみだ!」
トロッコが急停止した瞬間、暗闇から敵が一斉に姿を現す。モグラ型の「モールファイター」、コウモリ型の「バット」、ゾンビ、そして岩のような姿の「ロックヒューマン」。四種類の敵が、殺意をむき出しに迫ってくる。
「モールファイターはモグラの能力だけでなく、シャベルを武器として扱うわ。バットとゾンビは同様の攻撃パターン、ロックヒューマンは格闘技で立ち向かうみたい」
「なるほどな。私たちは魔術と拳で挑むのみだ。あんな奴らは私たちの敵じゃない。やるからには倒すのみだ!」
アイリンの冷静な分析にサヤカが頷き、闘志をみなぎらせる。彼女は一気に加速し、敵の群れに飛び込んだ。流れるような格闘技の動きで、モールファイターのシャベルを弾き飛ばし、強烈な拳を叩き込む。敵は次々と倒れ、素材と金貨を撒き散らしながら地面に崩れ落ちていく。
「私たちも急がないと!」
「ええ!」
アイリンとエヴァも遅れじと戦場に飛び込む。アイリンは鋭い爪を振り回し、エヴァはクロー付きのガントレットを輝かせながら、モンスターたちに襲い掛かる。
「キャットスラッシャー!」
アイリンが叫び、雷のような速さで鉤爪攻撃を繰り出す。モールファイターがシャベルを振り上げるも、彼女の攻撃はそれを軽々と切り裂き、敵を一瞬で粉砕。だが、モールファイターも負けじと反撃に転じ、鋭いシャベルで地面を掘り起こしながら襲い掛かってくる。
「そうはさせない! アイスエデン!」
エヴァが叫び、両手を振り上げると、凍てつく魔術が炸裂。モールファイターの群れが瞬時に氷の棺に閉じ込められ、キラキラと光る粒となって消滅する。地面にはシャベルと金貨が散らばった。
「ありがとう、エヴァ。助かったわ」
「気にしないの。それよりもゾンビとバット、ロックヒューマンが残っているわ。こうなったら思う存分立ち向かいましょう!」
「ええ!」
アイリンの礼にエヴァが笑顔で応え、残りの敵に目を向ける。二人は息を合わせ、ゾンビとバットの群れに突進する。ゾンビの腐臭漂う爪が迫るが、アイリンは軽やかな身のこなしでかわし、鋭い爪で一閃。ゾンビが断末魔の叫びを上げて倒れる。
「アイリンはこんなにも仲間がいるのか……私も負けてられないぜ!」
サヤカも気合を入れ直し、ゾンビの群れに飛び込む。彼女の蹴りは風を切り、ゾンビを次々と吹き飛ばす。さらに高く跳躍し、洞窟の天井を飛び回るバットに狙いを定めた。
「連続波動弾!」
両手に光り輝く波動弾を生成し、サヤカは一気に投擲。波動弾は空を切り裂き、バットたちを正確に捉える。バットは為す術もなく光の粒となり、素材と金貨を残して消滅した。
「残りはロックヒューマン! ライジングナックル!」
エヴァが咆哮し、ロックヒューマンに突進。彼女の拳は岩のような敵の身体を貫くほどの威力で、連続パンチが炸裂する。最後の一体には渾身の回し蹴りを叩き込み、岩の巨体を粉々に砕いた。洞窟に響く轟音とともに、敵は全滅した。
「これで全部みたいね。けど、この先には刺客がいるから油断できないし、気を引き締めていかないとね」
「そうだな。ここのアトラクションは風景も変わると言っている。ともかく先に進むぞ!」
アイリンたちは急いでトロッコに飛び乗り、ガタンと動き出す乗り物に身を委ねる。この先に待ち受ける試練は未知数だが、彼女たちの結束力ならどんな敵も打ち倒せるだろう。
※
一方、マツリは空を滑空しながらアトラクションの状況を確認していた。彼女の前に召喚されたウインドウには、敵の詳細データが映し出されている。
「モンスターについてはこうなっているのか……ボスは……」
マツリがボスのデータを調べると、画面が一瞬にして切り替わる。その内容を見た彼女の顔が驚愕に染まる。
「こいつはヤバい事になりそうだ! すぐにアイリンたちと合流しないと!」
マツリは翼を大きく広げ、風を切って急降下。アイリンたちがボスと対峙する前に、必ず合流しなければならない。彼女の心に強い決意が宿りながら、仲間たちの元へと急ぐのだった……。