クローバールの近くに広がる戦士たちの墓地。そこは英雄やギルドの戦士たちが静かに眠る神聖な場所だ。ゴドムだけでなく、アカネの仲間たちもこの墓地で永遠の休息を得ている。
その日、零夜率いるブレイブエイトに加え、アカネ、ベティ、メディの三人もこの墓地を訪れていた。目的は、ゴドムとアカネの仲間たちへの墓参りである。
一行はまず、アカネの仲間たちの墓へと向かい、一つひとつの墓石に丁寧に花を手向けた。アカネの眼差しは穏やかで、過去の重みを振り払う決意に満ちている。
「お前ら。因縁の戦いは和解という戦いで決着となった。今後は罪を償って新たな道を突き進もうとしている。二人とはまだやりきれない部分があるが、いずれにしてもプロレスの試合で決着をつけるのみだ。今後はずっと見守ってくれよ」
アカネは柔らかな笑みを浮かべると、零夜たちと共に静かに黙祷を捧げた。過去の因縁を清算し、新たなスタートを切ろうとする彼女の姿は、力強く希望に満ちていた。今後は零夜のパートナーモンスターとして活動するだけでなく、プロレスラーとしても新たな一歩を踏み出すだろう。
アカネの仲間たちへの墓参りを終えた一行は、次にゴドムの墓へと足を進めた。そこには「元勇者パーティー、ここに眠る」と刻まれた墓石が、厳かな佇まいで立っている。
「行くわよ、二人共」
アイリンの凛とした声に、ベティとメディは小さく頷き、静かな覚悟を胸に前へ進む。三人はゴドムの墓の前に立ち、まず花束をそっと置いた。墓石を見つめる彼女たちの瞳には、深い想いが宿っている。これまでの出来事をゴドムに報告する時が来たのだ。
「ゴドム。あなたを死なせた因縁は終わりを告げたわ。彼女たちは罪を償って、新たな人生を歩もうとしている。その二人も今、ここにいるわ」
アイリンが静かに、しかし力強く報告すると、次にベティとメディが前に進み出た。彼女たちは一礼し、墓石に視線を合わせ、心からの言葉を紡ぎ始めた。
「ゴドム。あなたを死なせてしまって本当にごめんなさい。許される事ではないかも知れないけど、私たちは罪を償って一からやり直しているわ
「これ以上の罪は重ねず、今後は新たな道を進みます。だから……ずっと……見守ってください……」
ベティとメディは涙をこらえきれず、頬を伝う涙と共に黙祷を捧げる。それを見守るアイリンたちもまた、静かに頭を下げ、ゴドムが天国で安らかに眠れることを心から願った。
ゴドムを殺した罪は重い。だが、彼女たちはその罪を背負いながら、ゴドムの分まで精一杯生きることを決意していた。それが彼女たちの新たな目標であり、揺るぎない覚悟だった。
※
墓参りを終えた一行は、墓地を後にし、日本へと戻る準備を始めた。過去の未練を断ち切った今、ここに留まる理由はもうない。
「墓参りも終わったし……後は日本に戻って何か食べに向かいましょう」
「そうですね。では、天ぷらのお店はどうでしょうか?」
「私はイタリアンが良いな」
「和食がある定食屋も良いと思うわ」
「ステーキハウスも良いわね」
ベルの提案にカルアが賛同し、天ぷらを提案すると、トワたちが次々に自分の好みを口にする。こうなると、どの店にするか決められず、話がまとまらないのも無理はない。
その時、零夜がふと閃いたように全員を見渡し、口を開いた。
「全ての食事の種類を楽しめるバイキングはどうでしょうか? 和食、洋食、中華、更には様々な世界の料理を楽しめる事ができます」
零夜の提案に、一同の視線が一斉に彼に集まる。その顔には満面の笑みが広がり、誰もがそのアイデアに心を奪われていた。
「それはありだと思う! 全ての料理を楽しめるのなら、そこに行かないと!」
「アタイ、シュラスコという料理を食べて見たかったからな!」
「ブラジル料理ですね。イスラムの料理もありますよ」
「じゃあ、そこで決定で宜しいでしょうか?」
「「「異議なし!」」」
零夜の宣言に対して、倫子たちは満場一致で賛成の声を上げた。昼食の場所が決まり、皆の気分が高揚する中、アイリンがふと足を止め、雲一つない青空を見上げた。太陽の光が彼女を優しく照らし、まるで新たな始まりを祝福しているようだった。
「アイリン、どうしたんだ?」
アカネが心配そうな表情でアイリンに視線を向ける。他のメンバーも彼女の行動に疑問を抱き、じっと見つめた。
「私、決意したの。この戦いが終わったらプロレスラーと格闘家だけでなく、料理人としての道を歩もうとしているわ」
「「「料理人?」」」
の突然の宣言に、皆が驚きつつ首を傾げる。彼女の料理の腕前は誰もが認めるところだが、料理人としての道を歩むとは予想外だった。
「ええ。私は料理の才能があるけど、誰もがあっと驚く料理を作ってみたいの。基本的には中華だけど、それを更に広めようと考えているからね。例えば北京ダックとか、特製肉まん、
アイリンの夢を聞いた零夜たちは、納得の表情で頷く。彼女の料理スキルは、仲間と共に過ごす中で磨かれ、確かな強みとなっていた。この才能を活かし、夢を実現させようとする彼女の決意に、皆が心を動かされる。
「なるほど。本場の中国料理はありだと思うな。
「あとワンタンメン、鶏肉のピーナッツ炒め、
零夜たちが本場の中華に興味津々で反応すると、ベルが少し心配そうな顔で質問を投げかけた。中華料理は種類も多く、すべてを極めるには長い年月が必要だ。アイリンがその挑戦をどう乗り越えるかが鍵となるだろう。
「勿論できるわよ。今から作って披露するから! という訳でレストランは中止! すぐに家に帰って中国料理を作るから、あなたたちも手伝ってね!」
「「「そんな……はぁ……」」」
アイリンの熱い宣言に、零夜たちは驚きと同時にがっくりと肩を落とす。ベルがあの質問をしなければ、レストランに行く計画は変わらなかったはずだ。今さら後悔しても後の祭りだが。
(今後はタマズサを倒すだけでなく、料理人、プロレスラー、格闘家としての三刀流を目指さないと! 私なら大丈夫。絶対にやれる!)
アイリンは自信に満ちた笑顔で、雲一つない青空を見上げる。太陽の光が彼女を明るく照らし、彼女の未来を祝福しているかのようだった。