目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第30話 真面目な話・3


 エリザベス嬢たちが一般庶民として町や村で生きていくのが難しいのはよく分かった。

 なので、俺は別の可能性を提案してみる。


「どこかご令嬢の実家の領地で匿ってもらうのはどうだ?」


「実家がご令嬢たちの味方になってくれればいいが、そうでないなら危険だな。王太子――未来の国王に媚を売るために、娘一人くらい切り捨てるのが貴族という存在だ。……少なくとも、エリザベス様のご実家は除名処分の手続きをしているだろう」


「分家のお前が言うなら、そうなんだろうな」


「お? 分家だって話したか?」


「シャルロットから聞いた」


「なるほど……」


 それはとにかく、エリザベス嬢の実家は無理っぽいと。

 シャルロットたちの実家にしても、どうなるかは分からないな。実家が王太子に味方するなら領地で捕まってしまうし、そのときは上手く逃げられたとしても『実は生きている』とバレてしまうことになる。


 リスクを考えるなら、そもそも近づかないのが利口か。


「なら、外国に逃げるとかは?」


「それができればいいが……エリザベス様たちは追放されたのだから貴族としての身分が使えないし、俺たちも死亡を偽装するなら身分証は使えない。うまく出国できるかどうか……」


「あー……」


 そうだよな。俺とラックだけなら国境の森を抜けるとか川を渡るなどの無茶ができるが、ご令嬢たちに無茶をさせるわけにはいかない。出国するなら関所(国境検問所)を通るしかないのか。


「そう考えていくと魔の森で暮らしていくのが順当だろうが……。魔の森だぞ? 人間が平穏に暮らせるような場所があるのか?」


「分からん。とりあえず魔の森を調査して、無理そうなら別の場所を探すしかない」


「それもそうか」


 あとはシルシュに頼んで魔の森の魔物を駆逐してもらうとか? ……う~ん、そもそも協力してくれるかどうか。出会ったばかりなので性格が掴みきれていないんだよなぁ。


「……なんというか、行き当たりばったりだな」


「事前に計画しようがなかったんだから、しょうがないさ」


「そりゃそうか」


 いや。

 事前に計画のしようがあったシャルロットなら何か準備しているか?


 いやいやさすがにないか。

 だが、一応聞いてみるか?


 まぁ。魔の森に着いたら尋ねてみよう。そう決める俺だった。




この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?