めり込んだ木から何とか抜けだし。
俺は生まれたての子鹿みたいな足取りで皆の元へと戻った。
まずはラックと拳を当て合って無事を祝い、皆を守ってくれたシルシュに礼を言う。そうしてから俺は改めてご令嬢たちに向き合った。
出迎えてくれたのは――いや、
「お疲れ様」
「……死ぬかと思ったぜ」
「うんうん、ブラッディベアとの戦いだものね。死を覚悟するのも当然だよね」
脳天気にそんなことをほざくシャルロットだった。死ぬかと思った大部分はお前の
と、俺はツッコミを入れようとしたのだが。
「――格好良かったよ、アーク君。そして、無事で良かった」
「……おう」
少し目を潤ませながらそんなことを言われると、それ以上何も口にできなくなる俺だった。
そんな俺の様子に気づくことなくシャルロットが自分の手を見る。
その手は、僅かに震えていた。
「対するボクは何とも情けない。魔の森では魔物との戦いになるだろうと攻撃魔法を鍛えていたのに、本物の魔物を前にしては震えて何もできなかった」
「……いや、立派に
立派すぎてこっちが死にかけたほどだ。
「あれはアーク君が一人で戦って時間を稼いでくれたうえ、シルシュ君に背中を押されてやっとできたものだよ。本来ならブラッディベアが接近する前に魔法で検知して、攻撃魔法で吹き飛ばすべきだったのに……」
「…………」
悔いているところ非常に恐縮だが、攻撃魔法を放てさえすればブラッディベアを倒せる自信はあるのな?
いや、倒せるのか。
あとは魔物を前にして恐れない心を鍛えれば――
(――って、ご令嬢を鍛える算段を立ててどうするよ、俺?)
あの騎士団長に鍛えられたせいでこっちも脳筋になってしまうところだったぜ。やだやだ。