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第42話 メガネスキー・アクヤクキシ


「ぎゃー!?」


 ドラゴン・ブレスの余波(?)で吹き飛ばされる俺たち。ちなみに「ぎゃー!?」という叫びは俺やラックではなく、シャルロットのものだ。おもしれー女。


 土煙やら熱波やら。

 視界が効かないどころか目も開けられないが、全員が無事であることは見なくても分かる・・・・・・・・。……なんかこんなことばかりに『力』を使っているな、俺。


 ちなみにその『力』によると、シルシュのブレスは一直線に魔の森を貫き。10キロルほど進んでから爆発。半径数十キロルの木やら魔物やらを吹き飛ばしたようだった。わぁ綺麗な平地だなー。


「か、加減しろシルシュ!」


『む? すまんな。味方の人間が近くにいる状態でブレスを吐いたのは初めてだったのでな』


「……そ、そうだったのかー」


 じゃあ敵の人間相手に吐いたことはあるのな? という質問はグッと飲み込んでおく俺だった。良い男ってのは女の過去を気にしないものなんだぜ。


「ヘタレ」


 近くでミラのツッコミが。どうやらミラも視界ゼロの状態で心が読めるらしい。便利なことで。


 おそらく十分ほど掛け、土煙が収まったので皆の状態を確認。生きていることは分かるが細かいケガの状態までは不明だからな。レベルアップでもすれば分かるようになるのかね?


「おーい、ケガ人はいるかー?」


「め、眼鏡は死守しましたー」


 かなり真剣なメイスの声だった。眼鏡がなくなると視力が一気に落ちるものな。


『なんじゃ、何か壊れたなら直してやるぞ?』


 ドラゴン様にはそんな眼鏡っ娘の必死さは伝わらなかったようだ。というか直せるんかい。すげーなドラゴンって。


『ふむ、眼鏡を直すくらいなら、視力を治したほうがいいか? いや治すと言うよりは固定状態を部分的に解除すると言った方が正確か』


 よく分からんが、視力まで治せるらしい。


 それはいかん。

 いやいいのか。視力が元に戻るなら。

 いやしかし眼鏡。メイスの眼鏡姿もまた魅力的だ。

 いやいやだからって相手の視力が悪いままを望むだなんて。

 いやけれども眼鏡。

 いやだが眼鏡のないメイスも魅力的。

 いやでも眼鏡姿もまた素敵だ。


 俺がそんな葛藤をしていると。ミラがメイスに何か耳打ちしていた。


 ちょっとミラさんや?

 もしや俺の心を読んでいませんかね?

 そしてそれをメイスさんに伝えてはいませんかね?


「…………」


 じっとーっとした目で俺を見てくるメイス様。あー、すみません欲望まみれでー。


「……シルシュ様。私はしばらくこのままでいいです」


『うむ、そうか』


 こうしてメイスの眼鏡は守られたのだった。代償として色々なものが失われた気がしないでもない。俺の名誉とか。頼れる騎士としての立場とか。





 人の姿になったシルシュの先導で魔の森を征く。


 とは言ってもブレスのおかげでデカい直線道路ができてしまっているし、不思議と魔物も出ないので安全な道程だった。一応、魔の森の奥へと進むのは命がけであるはずなんだけどな。


 おっと、しかし問題はご令嬢たちか。


 なにせ馬車は壊されてしまったので、全員が徒歩。彼女たちが着用しているのはパーティ用ドレスに、ピンヒール。何かと動きにくいだろうし、靴擦れなども心配だ。


「疲れたり、靴擦れをしたら遠慮なく言ってくれ」


 俺が一度立ち止まって確認すると、


「ボクはとりあえず大丈夫かな」


「私も今のところは」


「ん、平気」


「……問題ないですわね」


 シャルロット、メイス、ミラ、エリザベス嬢から次々と返事が。エリザベス嬢は少し返事が遅れたから無理をしているか……? いやしかし彼女なら回復魔法で自分を癒やせるだろうし、本当に無理をしているならラックが止めるだろう。


 なので、俺は一番年下であるミラに確認することにした。


「ミラは本当に大丈夫か?」


「ん。平気。私はピンヒールなんて履いてないし」


 ミラの靴をよく見ると、なるほど靴底は平らだった。まだ子供だからピンヒールは履かなかったのか。


 ならいいけど無理するなよ~すぐに言うんだぞ~っとミラの頭を撫でていると、なにやらこちらに向けられる視線×2が。


「……アーク君って、ミラ君にばかり優しくない?」


 そりゃまだ子供なんだから当たり前だろ?


「……なるほど、これがシャルロット様の教えてくださった『ロリコン』ですか……」


 メイスさん、メイスさん、とんでもない発言をするのはやめていただけませんか? というか何を教えているんだシャルロットは。




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