「おぉー」
と、俺は思わず声を漏らしてしまった。
シルシュのドラゴン・ブレスによってできた一直線の道を進んだ先。ブレスの爆発によってできた半径数十キロルはあろうかという広場……いや、平地に到着したためだ。
ちょっとした地平線となっている大地。地面は高温に晒されたせいか少し黒ずんでいる。
木々は綺麗に消し飛び、株すら残っていない。所々に大きめの穴が開いているから、もしや根っこまで燃えてしまったのだろうか?
(もしそうなら、畑を耕すのは楽になりそうだな)
前世でひたすら木の根っこを掘り続けた経験がある俺としては素晴らしい状態だった。
一応周辺を『気配察知』してみる。
「魔物の姿は……ないな」
ここにいた魔物はブレスで消し炭になったとして。別の場所にいた魔物が様子を見に来たり、新たな縄張りを求めてやって来たりしても良さそうなものだが。『力』を使っても周囲に魔物の気配はない。
『うむ。ドラゴン・ブレスの跡地じゃからな。魔物も本能で近づかぬのだろう』
なるほど。下手すりゃもう一発飛んでくるからなぁ。魔物だってわざわざ近づかないか。
『あと、この場はブレスのせいで濃密な魔力に溢れておるからな。それを嫌っているのかもしれぬ』
「濃密な魔力?」
俺は
シャルロットたちは俺とシルシュから少し離れたところに陣取り、そして、
「――ここにボクたちの国を建てる!」
またまた演劇のようなポーズを取ったシャルロットが高らかに宣言し。
「わー」
「わー」
意外とノリがいいメイスとミラが拍手していた。……なにやってんだあいつら?
まぁ、おもしれー女たちがおもしれーことをするのは当然だとして。シャルロットやミラが『濃密な魔力』とやらの影響を受けた様子はないな。顔色も良さそうだし。
いや、もしかしたら魔力の影響であんな変なことをしている可能性が――ないな。アレは元々だ。
「魔物すら嫌う濃密な魔力か……。それ、俺たちにも悪影響があるんじゃないか?」
『平気じゃろう。おぬしらは我の血を浴びたからな。すでに普通の人間を逸脱しておるはずじゃ』
「……なんだって?」
血?
血なんて浴びたか?
『直接は浴びておらんがな。我の血が溶け込んだ池に飛び込んだではないか』
「……あー」
俺はシルシュから聖剣を引き抜いた勢いで池に落っこちて。シャルロットたちは空中に転移してそのまま池に落下したんだっけ。
「そう考えれば確かに血を浴びたとも言えるかもしれねぇが……池の水に溶けたものだろ? 血を直接浴びたわけじゃないのに、そんな影響があるのか?」
『ある。というか、普通の人間が
「さらっと怖いこと言うなよ……」
いや、よく考えれば、シルシュの流した血が溶け込んだ水を飲んだ村人たちには悪影響があったというものな。全身の痺れなどの症状が出たとかで。
…………。
……いやいやおかしい。あの村に流れ込んだ水なんて、俺たちが落ちた池よりさらに血は薄まっているはず。なのに村人には症状が出て、俺たちは平気だったというのはあり得ないだろう。
『おぬしらは普通の人間より魔力が高いからな。そのおかげで耐えられたのじゃろう。あとは直接体内に入れたものと、表皮に触れただけの違いか』
「……あー」
高位貴族の娘であるシャルロットたちはもちろんのこと。俺とラックも貴族の息子だからな。たしかに一般庶民よりは魔力が高いか。庶民出身の騎士は
そのあたりはまぁ納得するしかないが……。
「普通の人間を逸脱するってのは、どういうことだ?」