「ここはシルシュ君を崇め奉る神殿を作るべきでは?」
そんな提案をしてくるシャルロットだった。冗談か本気か分からねぇ……。
『嫌じゃ面倒くさい』
スパッと断るシルシュ。崇め奉られるのに面倒くさいとかあるのか?
『分かっとらんのぉ。これだからアークは』
やれやれと肩をすくめられてしまう。え? これ俺が悪いの?
と、シルシュ本人(本竜)から即座に拒否されたというのに。
「先ほど通ってきた道はボクらの『国』の入り口になるからね! そこにデカい神殿を建てて威圧するのは悪くないと思うんだよ!」
シャルロットはノリノリで神殿計画を推進しようとして。
「しかしシャルロット様。神殿を建てられるほどの石材がこの地にあるとは思えません」
メイスが理知的なツッコミをしていた。……いや理知的か? まずは『国』やら神殿建築計画やらに反対してくれないか? やっぱりメイスも何だかんだでおもしれー女だよな……。
「ん。ゴーレムを錬成して運ばせればいい」
そして中々の力業というか魔力業で解決しようとするミラだった。男衆が力で活躍できる場面はなさそうだな。
なんか知らんがノリノリな三人に近づく俺。
「そもそもだ。国を建てるってのはどういうことなんだ?」
俺の疑問に、なぜか胸を張るシャルロット。
「ふっふーん。分かってないねぇアーク君。国王がいて、国民がいて、領土がある。ならばもうここはボクらの国じゃないか!」
「はぁ?」
国民は俺たちだとして。領土は魔の森か? ドラゴン・ブレスの結果とはいえ開拓したと言えなくもない……か? そこまではまぁ納得できるとしてもだ。
「一体誰が王様なんだよ?」
「そんなの、キミに決まっているじゃないか♪ アーク・ガルフォード君♪」
キラキラきゅる~んとアホなことをほざくシャルロットだった。
「……今の俺、空手チョップの一つも喰らわしても許されるんじゃないか?」
もちろん狙いはシャルロットの脳天である。いい音がしそうじゃね?
「ドメスティック・バイオレンス反対!」
「俺とお前がいつ家庭を持ったよ?」
「一つ屋根の下で一晩過ごした仲じゃないか!」
「あの村での一泊か? んなこと言い出したら騎士全員が家族になるわ」
「男の子って美少女から頼まれたら『よっしゃ! 王になってやるぜ!』ってなるものじゃないの!?」
「どこの世界の常識だよ?」
少なくとも前世も今世もそんな男は少数だろう。あ、いや、メイスの元婚約者ならあるいは?
ガクッ、と肩を落とすシャルロット。
「そんな……ボクの計画が……。アーク君を国王にしてボクが王妃になる人生大逆転計画が……」
「穴だらけすぎじゃね?」
というか王妃狙いかよ。図太いというか強欲というかアホというか。
あまりにも雑な未来計画を立てていたシャルロット。
そんな彼女の肩が両方から掴まれた。
メイスと、ミラだ。
「シャルロット様。その辺りについては相談いたしましょう?」
「ん。こういうのはまず手紙の交換からやるべき」
手紙の交換って。ずいぶんと古風な……とは思ったが、ミラの年齢くらいならそんなものなのかもしれないな。婚約したあともまずは手紙のやり取りから始めると聞くし。俺は婚約者もいなかったのでよく知らないが。
そのまま腕を組まれ、どこかへ引っ張られて行くシャルロットだった。いやまぁ周辺は見渡す限りの平地なので『どこかへ』も何もないんだがな。言葉の
そのまま少し離れた場所で会議(?)を始めるおもしれー女たち。
『な? 面倒くさいじゃろ?』
俺の肩を叩くシルシュだった。あれか? 神殿で祀られると信者同士で似たようなことが起きるのか?