『アークも気づかなかったじゃろうが!』
ビシィ! っと指差されてしまう俺だった。ぐぬぬ!
「だ、だが俺は気づいた! いきなりドラゴン・ブレスで色々吹き飛ばしたのはシルシュじゃないか!」
『ぬぐぐ!』
お前が悪い! いいやお前が! とばかりに指さし合う俺とシルシュだった。
そんな俺たちを見かねたのかラックが間に入ってくる。
「まぁまぁ、二人とも。イチャイチャするのはその辺にして。日が暮れる前に飲み水の確保をしてしまいましょう」
ラックに仲介されてしまった。あの周囲の状況を丸っと無視してエリザベス嬢とイチャイチャしていやがったラックに仲介されてしまった。ぬぐぐぐぐ。
『……ふっ、なるほどこれがイチャイチャというものか。悪くはないのぉ』
なんか知らないけど満足げなシルシュだった。はいはいさっさと転移しましょうねー。
俺がシルシュを促そうとすると、服の裾が引っ張られた。この感じはミラだな。
「私がやる」
「ミラが? しかし今日は魔法を使いすぎじゃないか? 魔力の残りは大丈夫か?」
探知魔法なら消費魔力が少ないと聞くが、さすがに転移魔法は……。
「……ん」
魔力は残っていないのか視線を逸らすミラだった。そんな彼女の両肩にシャルロットが手を乗せる。
「女心が分かってないねぇ。シルシュ君のまったく酔わない集団転移を経験したからこそ、「自分だって」とチャレンジしたがっているんじゃないか」
「あぁ、そういうことか……。その気持ちは何となく分かるが、それは女心じゃなくて向上心とか対抗心じゃないか?」
「細かいことを気にしていると女性にモテないよ?」
「うっせーやーい」
俺が非モテの悲しきツッコミをしていると、なぜかラックが俺の肩に肘を乗せてきた。なんかムカつく顔しているな?
「いやいや、シャルロット嬢。コイツの女たらしっぷりを舐めてはいけませんぜ? 今思いつくだけでも近衛騎士団長や副団長、王女殿下に侍女長からも想いを寄せられていたんですからね」
「おいおい」
また例の妄言かよ。というかこの前から副団長が増えているじゃないか。たしかにあの人は俺好みの知的美人さんだが――と、考えていると、殺気……とも少し違う、どろりどろりとした感情が向けられてきた。ような気がする。
「さて、アーク君」
「詳しい話をお聞かせ願いますか?」
「ん。話す必要はない。全部分かるから」
『
なぜかシルシュの肩に担がれ、どこかに連行されてしまう俺だった。「絶対逃がさん」とばかりに周囲をシャルロット、メイス、ミラに囲まれながら。
いやドラゴンの腕力、強っ!? まったく抜け出せないんだが!?