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第50話 浄水器?


 岩山から流れている水というのはすぐに見つかった。岩の裂け目から結構な水量が湧きだし、それが川となって流れていたのだ。


「おぉ~」


 このレベルの川になるのなんて、もっと標高何千メトルはある山からの湧き水だというイメージなので、高さはそれほどでもないこの岩山からこの水量が湧き出ているのは不思議な感じだった。


 見た目は綺麗そうだが、それで判断しちゃいけないのが水質というものだ。とりあえず濾過はしなくて良さそうだが……。


「メイス、どうだ?」


「そうですね……」


 メイスが眼鏡を外し、水を鑑定していく。


「これは……鑑定できませんね」


「メイスが鑑定できないというと――人を超えた神聖さだったり、邪悪さだったりするんだったか?」


「はい、そうなりますね」


「ふ~ん。魔の森というからには邪悪っぽいイメージだが……」


 どうなんだ? という目でシルシュを見る。元々ここに住んでいたというのだから何か知っているだろう。


『世界樹の下から湧き上がっているのだからな。神聖も神聖じゃろう』


「……世界樹?」


『うむ』


「この岩山が?」


『うむ』


「岩じゃん」


『おぬしの知識にある『化石』だって元々は木だったり生き物だったりするのじゃろう?』


「つまり、世界樹の化石だとでも?」


『化石の詳しい条件は知らぬがな。世界樹が倒れたあと石化したのがこの岩山じゃよ』


「世界樹が倒れたって……この世界、大丈夫なのか?」


 世界樹ってのは世界の中心とか、世界を支えるってものじゃないのか?


『まぁ平気じゃろ。何十本もあるうちの一本が倒れただけなのだから』


「テキトーだなぁおい」


 というか世界樹がそんなにあってもいいのか? こう、もうちょっと希少性が重要なのでは?


 なんだかぁと思いながら俺は元世界樹だという岩山を叩いてみた。……うん、固い。岩としか思えないな。


 砂に埋まってたならとにかく、地上にある状態で化石になることなんてあるのか? と、俺が疑問に思っていると、


「……ふふふ、そうか。そういうことだったんだね」


 いきなり不敵に笑いだすシャルロットだった。こわい。


「世界樹を中心として村を作り! 段々と規模が大きくなって国へと変貌していく! 開拓スローライフものの定番じゃないか!」


「え? そうなん?」


「そうなん、って……キミの前世は物書きじゃなかったのかい!?」


「いやジャンルが違うし」


「ジャンルが」


「開拓スローライフものとかあまり読んだことがないからよく分からないな」


「Oh...」


「そもそもこの世界樹、枯れているし。国の中心とするのはアレじゃないか?」


「なんてこったーい……」


 美少女にあるまじき鳴き声(?)を上げながら地面に膝を突くシャルロットだった。おもしれー女。





 まぁシャルロットが面白いのはいつものことだとして。


「神聖ってなら、飲めるのか?」


『飲めるのではないか? よく知らんが』


「おいおい、テキトーだなぁ。お前さんの鑑定眼アプレイゼルならこの水も鑑定できるんじゃないか?」


『我の鑑定眼アプレイゼルはドラゴン基準だからのぉ。我なら飲んでも平気とは分かるが、人間だとどうなるか……』


「よく考えれば、それもそうか」


 メイスだって人間にとって安全だとは判断できても、それが蟻にとってもそうかは分からないだろうからな。


『我の血を浴びたのだから、多少水が悪くても死にはしないと思うぞ?』


「……騎士俺たちだけならそれでもいいけどよぉ。さすがにレディ相手にそれを強いるのはなぁ」


『女に甘い男じゃな。まったくこれだからアークは……』


「え? なんで罵られてるの俺?」


『ふむ、ならば水が湧き出ているところに聖剣でも突き刺しておけばいいじゃろう』


「聖剣を?」


『人間にとって聖なる剣なのじゃから、水の浄化くらいしてくれるじゃろ』


「そんな浄水器じゃないんだから……」




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