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第59話 破滅の声


「――うっげぇ」


 岩山の洞窟から風呂場(?)にまで戻る途中。それ・・を感じ取った俺は思わず呻き声を上げてしまった。


「何だ、どうしたよ」


「やべぇぜラック。師匠――騎士団長が魔の森を突っ切ってこっちにやって来る」


「マジかよ……最悪だな」


「あぁ、最悪だ」


「ここはアークを生け贄にすればいけるか……?」


「はっはっはっ、そんときは道連れだぜ親友」


「親友ならエリザベス様との幸せな結婚生活を祈ってくれ」


「親友なら俺の心の平穏を考えてくれ」


「……マジでどうするよ?」


「……説得するしかないんじゃないか?」


「あれを?」


「あれを」


「……シルシュさんに倒してもらうってのは?」


「駄目だ。団長はドラゴンすら倒しかねん」


「あぁ……」


 どうするかーっと頭を悩ませつつ、急いで女性陣の元へ。風呂場は土魔法で作った壁なので近づいただけでは覗きにならない。あとは近くで声を掛けて、一旦退避。女性陣が服を着てから対策を話し合えばいいだろう。


 そんなことを考えながら風呂に近づいたところで。


『――はーはっはぁあっ! 来おったか勇者め!』


 シルシュが殺気か覇気でも発したのだろう。

 突如として土壁にヒビが入り、内部から破裂。暴風と共に壁(だったもの)が吹き飛んできた。


「ぬおぉ!?」


「なわぁあ!?」


 しょせん土と侮るなかれ。壁として自立するほどに固められた土が、つぶてとなって暴風と共に飛んでくるのだ。頭に当たれば即死しかねん。


 俺とラックは反射的に地面に伏せ、しばらく待機してから顔を上げると、


 おお!


 壁がなくなったせいで風呂場が丸見えに! つまりは風呂が覗き放題! 獰猛に笑いながら指を鳴らすシルシュ(全裸)や、他の女性陣の裸も――


「――騎士アーク。女子風呂を覗くとはいい度胸ではないか」


 破滅の声が聞こえた。


 ちょっと、到着が早くないっすか師匠?




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