ライラの振り下ろした剣を、完璧なタイミングで弾いてみせるアーク。
そのとき、ひときわ鈍い音が周囲に響き渡った。
アークの剣が、折れたのだ。
だが、それも当然だろう。
ライラの剣は特別製。近衛騎士団長としての地位に相応しく、ライラ本人の怪力に耐えられるだけの剣を用いている。
対するアークの剣も良品ではあるが、あくまで平騎士が買える程度の品質。身体強化した肉体でブラッディベアの首を刎ねたり、ライラの剛剣と刃を合わせ続けるような無茶を続ければ――当然、アークの肉体より先に限界が来てしまう。
(不運だが、勝敗を武器のせいにするようでは三流だぞ!)
容赦なくライラは剣を振り上げた。この戦いの決着を付けるために。
対するアークは、何もない空間に右手を突っ込んだ。
アークは魔法が得意ではないが、それでも剣を収納できるくらいの
瞬間、ライラの脳裏にその可能性が閃いた。
(――聖剣か!)
どんな過程であろうとも、結果として
(持久力が上がっていたのは、シャルロット嬢の
聖剣であれば、さすがにライラの剣の方が折られるだろう。
だがしかし、すでに振り降ろし始めた剣を止めることはできない。アーク相手に、そんな半端な勢いで剣を振るってはいないのだ。
(剣は折られるが、アークも衝撃ですぐには動けまい! 予備の刀を取り出せば!)
ライラの意識が今振り下ろしている一撃から、わずかに逸れた。
そう、わずかに。
わずかに速度が緩み。わずかに勢いが落ちた。
常人であれば関係なく押しつぶされる程度の差。
だが、相手はアークだった。
「――それを待っていたんですよ」
アークが
その手に握られていたのは――否。その手には、
さすがに無手でライラの剛剣を受け止められるはずがない。
だが、先ほどの一瞬、ライラの意識はこの一撃から逸れた。その分威力と速度が僅かに緩んでいるのだ。
そして。
ライラも知らないことだが。
アークは、前世の記憶を思い出していた。
「傍流・柳生新陰流秘伝――無刀取り」
アークの両手が、今振り下ろされているライラの剣、その柄を掴んだ。
だが、力で対抗することはない。
むしろ逆。ライラの
「ぐぅ!?」
地面に背中を叩きつけられ、一瞬呼吸もできなくなるライラ。
その隙を見逃さず、ライラに馬乗りとなったアークは
「俺の勝ちですね」
「…………。…………。……あぁ、そうだな」
悔しさはない。
むしろ、そんな技を隠し持っていたかと感心しながら……ライラは