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第67話 第1章エピローグ・1 戦い終わって


「キミたちは! ボクの扱いが悪すぎる!」


 師匠との戦いが一息ついたあと。「むがー!」と抗議したのはシャルロットだった。


 なんでも、一生懸命身体強化ミュスクルをしていたらメイスとミラが水蒸気爆発を発生させ、また吹き飛ばされてしまったらしい。


 身体強化ミュスクルを掛け続けて周りを見る余裕がなかったシャルロット。


 俺を支援するため急いで水蒸気爆発を起こしたメイスとミラ。


 正直、どっちの立場も分かる俺であった。


 うん、ここは実害を受けたシャルロットをまずは慰めるか。


「いや、シャルロット。助かったぜ。お前さんの身体強化ミュスクルがなければ確実に負けていただろう。さすがだな」


「っ! ふっふーん! そうだろうそうだろう! やはり分かっているじゃないかアーク君! もっと褒め称えたまえよ!」


「凄いぞシャルロット!」


「うんうん!」


「格好いいぞシャルロット!」


「格好――レディに対してそれはどうかな……?」


「じゃあ、可愛いぞシャルロット!」


「――ぐっふ!」


 なにやら『ふにゃふにゃ』しながらその場にしゃがみ込むシャルロットだった。おもしれー女。


「女たらし」


「女たらし」


「相変わらずの女たらし」


 メイス、ミラ、そしてなぜか師匠からもなじられてしまう俺だった。なぜだ?


 ちなみに師匠は俺に投げ飛ばされた体勢のままだ。いい加減起きませんか……?





「アークぅ、考え直さないか~?」


 地面に叩きつけられた体勢のまま、俺のズボンの裾を引っ張る師匠だった。なんだこの「だら~ん」とした感じ? ほんとに師匠か? まさか頭もぶつけたか?


 ……なにやら副団長が「その人、素はそんな感じですよ。頑張ってください」とため息をついた気がする。もちろん気のせいだろう。


「ええい! 諦めるって約束したでしょうが!」


「うむ! 連れて帰るのは諦めた! だから改めてスカウトしよう! 近衛師団に入らないか!?」


「無しです! 無し! そんなの無し! 潔く諦めてください!」


「そんなぁ」


 俺のズボンの裾を掴んだまま『だら~ん』と伸びる師匠だった。これ、割と近衛師団の恥じゃね? というか皆は『元勇者』だって知っているんだろ? どうなんだこれ?


 皆に視線を向けると、誰も彼もがサッと視線を逸らした。関わりたくない、何も見ていないとその横顔に書いてある。


 そんな皆の態度を師匠も見たらしい。


「――ふっ、どうやら交渉は決裂か」


 すくっと立ち上がり、キリッとした顔をする師匠だった。手遅れっす。


「仕方がない。アホ太子には私の方から上手いこと伝えておこう」


 アホ太子って。王太子をアホって。まぁアホだが。


「騎士アークと騎士ラック、そしてご令嬢方は魔の森のドラゴンに襲われて死亡。という筋書きで構わないか?」


「えぇ、それでお願いします」


「ふむ、魔の森の入り口にはドラゴンの爪痕が残されているからな。疑われることはまずないだろう。……あとは、ドラゴンの討伐軍が編成され、こちらにやって来る可能性もあるが……」


「へ? ドラゴンを、討伐っすか?」


 にわかには信じがたい話だ。一国の軍隊程度でどうにかなる存在ではないのだドラゴンは。というか王都まで飛んでいって、ドラゴンブレスを吐かれるだけで国が滅びかねないし。


「普通ならばあり得ないがな。普通じゃない馬鹿がいるのでな」


「……あー」


 あのバカか。じゃなかった。王太子か。それならあり得るよな。


 納得するしかない俺だった。






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