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第129話 プレゼントボックス

「あ、あー、ありがとね」

 安達が落ち着きを取り戻し、加賀見・春野・日高にお礼を言う。

「ビックリしちゃったよ。皆そういう素振り全く見せなかったもん」

「フフ、うまくサプライズできてよかった」

 そう、今の今まで安達の誕生日については誰も一切触れていなかった。

 普段の学校生活の中では安達といつもの会話をするものの、安達の誕生日祝いに関する事柄は安達を除く俺達四人のグループチャットでやり取りをしていた。

 途中春野が安達もいる方のチャットへ誤爆しかけたらしいが、その寸前で気付いて事なきを得た以外は特に危ういシーンもなかった。皆演技派だなあ。ドッキリの仕掛け人に向いてるんじゃないの。


 安達は加賀見が差し出したプレゼントを受け取った。

「プレゼントも、ありがとね」

「皆で選んできた」

「ここで開けるのも何だから、家に帰って開けてみて」

 加賀見と春野が補足すると、安達が笑顔でこくりと頷く。


「それで、これから誕生日会をやりたいと思うんだけど」

 加賀見が安達に話を切り出す。

「ミユの家でやるっていうのは難しいかな」

 場所の候補として俺・加賀見・春野・日高の誰かの家でやる案も出たが、全員が訪ねたことのありかつ学校から一番近い家となると、安達家が一番都合がよかった。

 勿論当日にいきなり頼むわけだから断られても何ら文句は言えない。そしたら春野家でやる予定でいた。

「うん、いいよ。今日も家族が帰るの遅いから」

 安達が微笑んでそう答えた。

 かくして俺達は安達家へ向かった。



 安達家の最寄り駅から安達家へ歩く道中のこと。

「あれマユちゃん、今日は自転車貸してって言わないんだね」

 安達が加賀見へそんな言葉を掛ける。安達家へ行くときは口癖のように頼んでいるもんだからすっかり皮肉られてるな。

「大丈夫、平気。……今日だけは」

「そっか」

 加賀見はひたすら前を見て歩き続ける。

 安達はそんな加賀見の隣に立って加賀見のペースに合わせている。

 それを春野・日高が後ろからついていった。

「仲良いよねー、二人とも」

「邪魔しちゃ悪いかもね」

 春野と日高は前を歩く二人に聞こえづらい程度の声量で楽しそうに喋る。

 俺は最後尾で女子四人の様子を眺め、ただ歩いていた。



 安達家に着いた俺達は各々荷物を下ろした。

 そして道中のコンビニで買ったケーキとジュース、その他お菓子でパーティーを始めた。

「ねえアンタ、いつになったら隠し芸すんのさ」

「しないって話だっただろ」

「え、あれってフリじゃなかったの」

「どんなフリだよ」

 そんなしょうもない会話を加賀見と繰り広げながらも、皆でそこそこ盛り上がった。


「ミユ、プレゼントを開けてみて」

 パーティーを始めて時間が経ち、加賀見が切り出す。

「うん」

 安達がプレゼントボックスのラッピングを綺麗に解いていき、中身を見た。

「これ可愛い!」

 中身は小物を入れるのに向いたポーチだ。

 デザインについては女子三人のセンスに任せた。

「ちょっと外へ出る際に便利かと思って」

「ありがとう! 皆と遊ぶときとかに使うよ」

 安達がポーチを両手に持ち、自分の顔の前に持ってくる。

 皆からのプレゼントをしっかり目に焼き付けているように思われた。


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