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第131話 間違い探し

「ちょっとしたゲーム思いついた」

 そんなメッセージが俺達の使うグループチャットに来たのは学校終わりのこと。

 いつものように自宅で寛ぐのを邪魔するようなタイミングであり、発信したのは加賀見であった。

 加賀見の考えることなんて俺からすれば苦行以外の何物でもないことは今までの経験から嫌というほど理解していた。


「え、何それ聞きたい」

「俺は聞きたくない」

「黙れ」

「はい」

 とりあえず送ってみた俺の要望を一蹴した後、加賀見が勝手に説明を始める。聞きたくないのに。

「私達五人の内四人が普段の装いと違う箇所を一点だけ用意して登校する。そして残り一人がその違いを見つけ出すっていうルール」

 至ってシンプルなゲームだった。要はメンバー全員参加の間違い探しというところだ。

「それ面白そう」

「へー、いいんじゃない?」

 春野がノリノリだ。日高もやぶさかではないらしい。これやる流れだな。

 俺が間違いを用意する役に回ったらとびきり難しい奴にしようか。

 相手が間違いを見つけられず焦るところを見るのも結構面白いかもしれない。


 ゲームについて乗っかってもいいかとほんの少しだけ考えていると、

「というわけで黒山見つける役でよろしく」

 加賀見が勝手に俺の役を指定してきた。

 え? 何で? 何でもう役割決まってんの?

 こういうのって公正を期すためにジャンケンやらクジ引きやらして勝った人から希望の役に回るもんじゃないの?

 ほら、俺だけじゃなく他の女子四人だって不満が、

「じゃあ私達が違う所を用意する役か」

「うん、わかった」

「楽しみにしてるよー」

 特に出てきませんでした。

 え? 何で? 何で皆この流れに疑問を抱かないの? 最近はそういうのが主流なの?

 当然疑問が湧いてくるものの、ここであれこれ追及しても結局躱しきれないことはやはり今までの苦い経験から思い知らされていた。よって俺は素直に従うことにする。全く関係ないけど俺って今から社会人になって社会の荒波に揉まれまくっても平気でやっていけそうな気がする。

「やればいいんだな」

 とメッセージを送ると女子四人が内容を少し詰めて、明日早速やることになった。


 そして最後に加賀見の

「ちなみに全部見つけられなかった場合、黒山は罰ゲームね」

 というありがたいお言葉を受けて、俺は素直に従ったことを大いに後悔することになる。

「おい待て、後出しで罰ゲームなんて言われても納得できるか」

「黒山君、落ち着きなよ。罰ゲームって言ってもマユちゃんならそんなヒドいことしないって」

 お前安達相手ならな! 俺に対してはどこまでも滅茶苦茶するんだよあのラスボスは。

「確かに罰ゲームあった方が盛り上がるよね」

 俺にだけ一方的にじゃねーか。お前らはノーリスクでゲームを満喫するだけなのに俺はどう盛り上がれってんだよ。

「黒山君、頑張って!」

 春野……お前だけはこの手の理不尽を止めてくれると信じてたのに。とうとうお前も加賀見に感化されたのか。


 さあどうするか。明日はもういっそ休むか?

 いやダメだ、加賀見のことだから俺が登校するときまでゲームを延期するだろう。問題の先延ばしにしかならない。

 こうなったらさっさとこんなくだらないゲームを終わらせて平穏を取り戻すか。

 ……平穏に終わるよな? ゲームをクリアしても結局罰ゲームを受けるとか全くもって不可解なオチにはなんないよな? ああでもゲームを考えた奴は理不尽が服着て歩いてるようなツインテールなんだよなあ。


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