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第132話 久しぶり

 本日の業間休み、加賀見発案のゲームがスタート。

「おはよう!」

「おはよー」

「うん、おはよう」

「今日はよろしく」

 春野・日高・安達・加賀見の四人がいつものように二組の教室へ集まる。

 場所はいつもと同じく俺の席のすぐ近く。この頃すっかり慣れてしまっている自分が嘆かわしい。

 が、今日はそんな愚痴を言ってる暇はない。

 さっさと女子達の普段と違うポイントを探して事を終わらせねばならない。

 いつもこの時間に読んでいるラノベは机の中にしまい、女子四人を観察する。


 会話を楽しむ女子四人を観察して少しすると加賀見が

「ねえ、アンタはどう?」

 なんて加賀見がいつものように会話を振る。

 平時であればラノベを読みつつ四人の会話に耳を傾けており突然降られても会話が繋がるようにしている。

 だが今日は罰ゲームを賭けた間違い探しだ。当然女子達の会話を聞く余裕も、ましてやそれに応える余裕もありゃしない。

「ん? いや話聞いてないぞ」

 俺の今の状況理解してるだろという含みを持たせながら答えると、いきなり俺の顔の前を拳が通り抜けた。

 その拳は俺の顎の下から唐突に姿を見せて俺の鼻、眉間、額のすぐ前を豪快に上昇したと思うと加賀見の元へ帰っていった。

 平たく言うと、加賀見が俺の顔のすぐ前で素早い右アッパーを繰り出したのだ。もしもう少し位置がズレていたらノーガードな俺の顎にクリティカルヒットして俺は成す術なくノックアウトされていただろう。誰かタオル投げてください。


「お……お前……」

 加賀見からこの手の猫騙しを喰らうのは久しぶりだった。

 一学期のときはよくやられたものの、春野にそれを止められてからはパッタリとやらなくなっていたのだ。

 全然嬉しくない加賀見のお家芸の復活に言葉を失っていると、

「あれ、話さなかった? ゲーム中でも会話に参加しなかったら制裁だって」

 アッパーを放った右手の拳を未だ握りしめながら、加賀見が平然と説明する。例によってそんなルールは全く聞いていない。

「うん、メッセージで流れてたね」

 そう言ったのが安達だけなら二人だけの言いがかりと見て反論していた。

「黒山君、もしかして読んでない……?」

 どうやら春野まで知っているらしいので、俺は急いでメッセージを読み直す。すると

「あ、ひょっとしてアンタだけ抜いたグループの方に間違って送っちゃったかも。ゴメーン♪」

 加賀見(通称:鬼畜)が謝罪風の謝罪をしれっと済ませる。

 やはり俺の受け取ったメッセージの中には制裁に関するルールなど見当たらなかった。


 前から予想はしていたが、安達・加賀見・春野・日高の四人だけのグループチャットというのはやはりあったようだ。

 そのことは構わない。俺を抜いた四人だけで盛り上がって俺と疎遠になるきっかけを作り出してくれる期待もできるので寧ろありがたい。

 しかし、そのグループチャットを加賀見がこんな形で悪用するとは想定外だった。

 何が恐ろしいって今後も加賀見が同じ手を使って俺をハメることができるということだ。

 コイツら、というか加賀見との付き合いがますますおぞましくなっていくのを感じつつも、今はとにかくこのゲームを無事に終えられるよう意識を無理矢理集中させた。


 それにしても春野さん、罰ゲームのくだりでも思ったことだがこんな制裁ありのルールでも咎めることはなくなったんですね。

 このまま安達・春野・日高が加賀見化するようだったらマジで自主退学した方がいいかもな。あ、安達はもう手遅れか。


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