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第136話 クリスマス前

 二学期の期末テストが終わり結果も出た頃。

 冬休みがもう少しでやってくるのを期待した生徒達が各々休みに予定していることを話題に上げるようになった。

 やはり皆休みのことが好きみたいで、そのことを話す様子はいつもより浮き足立っているのがよくわかった。かく言う俺も休み大好きです。

 そして冬休みの最初の方はクリスマスを迎えることもあり、その話が特に多かった。


「ねー、来週のクリスマスって予定ある?」

 安達が加賀見・春野・日高へ質問する。おっとナンパかな? 可愛い女子達を集めてクリスマスに合コンでもすんのかな。なら俺には無縁だな、よかった。

「ん-、特にないよ」

「私も」

「同じく」

 女子達からは異口同音に予定がないことが告げられる。

 恋人持ちであれば二人きりでの甘々なデートを優先する日だと勝手にイメージしているが、コイツらは人々を惹き付ける優れた容姿を有するにも関わらず恋人はいないんだったな。

 相変わらず不思議な奴らだ。この四人から男子のアプローチを受けてとりあえず付き合ってみるっていうタイプが一人は出てもいいんじゃないのか。

 女子四人に付き合わされて結構な時間が経つが、揃いも揃ってコイツらから自分にまつわる色恋の話などは一切聞かない。全員そういうことに興味はないのだろうか。

 かく言う俺も恋人はいないが。ほら俺の場合はモブだから。必要ないときは誰からも相手にされないことが理想だから。

「アンタは、特に予定あるわけないか」

 加賀見が勝手に俺に予定がないことを告げる。コイツは俺のことについてはいつも決めつけてくるな。もう慣れたよ。


「そっか。もしよかったら、皆でクリスマスにどっか出掛けるのもいいかなーって」

 安達が遠慮しいしい遊びに誘う。お前もうコイツらと付き合って半年近くになるんだし、もっと気軽に誘ってもいいと思うぞ。それから俺のことはもう遊びに誘わなくていいと思うぞ。

「うん、行こ!」

「ここら辺でクリスマスにイベントやってるのって……」

「丸船ならあると思う」

「やっぱアソコかー」

 女子四人が早速当日の予定を詰めていく。


 当たり前のように俺を巻き込んでいるが、そうはさせじと俺は一計を案じた。

「あー、イベントもいいけどクリスマスだったらケーキは必要じゃないか」

「え、まあ」

「そりゃ是非欲しいけど」

「よし、当日ケーキを買ってからお前らの元に来るわ」

「え、ホント?」

 俺の提案に女子達が乗り気になる。しめしめ。

「ああ、ホントホント」

「それならお願いしてもいいかな?」

「よしわかっ……」

「リン、騙されないで」

 加賀見がお願いしようとした春野を途中で制した。

「どうしたんだ、加賀見」

「アンタそれ名目でクリスマスをブッチする気だろ」

「……意味がわからんな」

「大方クリスマス当日になってケーキを探し始めて、いいケーキがなかなかないとか売り切れとかで他の店を当たるから来られないとか言い出すんじゃないの」

 加賀見が俺の行動予想を発表していく。ヤバい、的中してる。

「そうなの黒山君?」

「そんなつもりはなかったんだが……」

「ならケーキは皆が集まった後で買い出しにでも行こ。もしくはレストランとか行ったときに注文するでもいいと思う」

「うん、そうだね」

「アンタも懲りないねぇ」

 というわけで俺のクリスマスでの計画が早くも破綻。


 ああ、また俺はこの目立つ女子四人と遊びに付き合わされるのか……。

 それもクリスマスで、か。当日にコイツらをナンパして恋に落としてくれるプレイボーイは現れないものだろうか。そのとき俺はこっそりフェードアウトしたい。そして自宅でじっくり七面鳥を焼いたやつにがっついて最後にゆっくり寝ていたい。


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