僕の名前はアレクシス。
名門リヴィエール公爵家の一人息子にして、次期後継者。
孤児院でくすぶっていた僕を、父上が見つけて拾ってくれた。
そのおかげで、僕の人生は一変した。
新しい家での暮らしは、まるで夢のように居心地がいい。
父上は優しく、使用人たちもみんな親切だ。
──ただ、ひとつだけ。
この家には“魔女”がいる。
ソフィアと名乗る、僕の義理の母だ。
父上がいつも言う。
「彼女は危険な存在だ。決して油断するな」と。
あの
僕だって知っている。あんな存在が、僕たちにとっていいはずがない。
実際、僕は父上に何度も頼んだことがある。
「早く
でも、大人の事情ってやつがあるらしく、そう簡単にはいかないらしい。
そうやって父上を困らせるなんて、やっぱり[[rb:魔女 > ソフィア]]は悪い奴だ。
だから決めたんだ。
僕がこの手で、
今日の僕の誕生日会。
大勢が集まるこの場で、魔女であるおばさん《ソフィア》の正体を暴いてやる。
そうすれば、全員が父上と僕の味方になるだろう。
批判の的となったおばさん《ソフィア》は追い詰められて、今日でおしまいだ。
……そう。
さっきまでは確かに、そう信じていたんだ。
おばさん《ソフィア》が魔女で、危険な存在だって。
でも、今日のおばさん《ソフィア》は何かがおかしい。
いや、まるで別人みたい。
魔女どころか、まるで妖精にでもなったかのように美しい。
いつも派手でキツい顔だとしか思っていなかったのに──
今日は眩しいくらい綺麗で、頭がぼんやりする。
心臓がやけに速く鼓動して、どうしていいかわからなくなる。
横目で父上を見れば、同じようにおばさんを見つめて、呆けたみたいにぼんやりしているようだ。
……そうか。
きっとおばさん《ソフィア》が、悪い魔法を使ったんだ。
こんなふうに僕たちを惑わせるなんて、やっぱりおばさん《ソフィア》はただの人間じゃない。
このままじゃいけない。
僕が正気を保っているうちに、あの
きらきらと輝いて、僕たちを惑わす“魔女”を、僕は全力で睨みつける。
さあ、覚悟してよ、おばさん《ソフィア》?
──大丈夫。
僕は絶対に、悪い魔法に負けたりしないから。