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第53話 どこ迄知ってる? 百年前の伝説






「……彼らはマジ強い。だがそれに満足せず普段はニガ手を克服する為に『不得意ワザだけ』で戦ってるからな、滅多に本気を出さない!」


「そ! そうなんですかぁ!?」



「BROSの真の実力『爆裂ブラザーズ』その本気は全部二人の連携技にある。二人でやってる理由……

 それは役割分担で同時にやるからこそ高強度に出来るものがあるのさ!」


 そう言って我が事の様に語り始めるエマ。


「例えば一人が超低温氷結して封鎖、もう一人が完全な粉まで爆裂連鎖。打撃や電撃が効かない流体怪物でも徹底的に粉化、更に頑健な物体も凍ると膨張で壊れる氷結破砕作用で何でもバラバラ。フリーズドライ解体の 


<アイシングスキャッター>



超強固な大型魔力ド―ムシールド内をもう一人が原子炉並みの熱地獄になるまで爆発で充満し尽くして完全に蒸発させきっちまう 


<爆発三昧>



 ……そして以前だがアタシでも倒せなかった超弩級のヤツを倒したときの究極技、さっきのを更に発展させ魔法重金属を互いの超臨界にしたエネルギーで核分裂にあてた爆裂連鎖反応による超巨大核攻撃――――超核分裂 〈ヌークリア・ディビジョン〉……」



「ち、超巨大核攻撃……」



「ただし二人で放射能を除去する『お片付け』がキライで滅多に見せない。強力過ぎて巨大獣はおろか魔力シールドが耐えきれず、感謝されるどころかその時は放射能を撒き散らして連邦政府からさんざん叱られたらしい」


「……って、普段の姿からは全っぜん想像出来ませんっ!」



「地下世界ギカダンジョン第二層まで行って帰って来れた数少ない生残り組さ。帰った時、あの強い彼らでも全く歯が立たなかったって言ってた……

 何があったのかショックで語ってもくれなかった……。

 だが彼らの考えはハッキリしてる。そこで戦える様に成る事に賭けているんだ。

 でもまぁ、アタシもそこそこ強くなって来たし速さもあるから、いつまでも人拐い阻止なんて~のもまどろっこしいからナァ、直に乗り込んでこの目で確かめるつもりさ」



 野心に溢れてるはずの顔にはいつもの余裕は感じられない。



「行くんですか……ボクも行きたいけどまだ全然勝てる気が……早く強く成らなきゃって、ずっと焦るばかりで……


 エマさんぐらい凄く動けるようにしないとダメなんです!……」



 ―――ン? いくらスーパールーキー転生者だからって何でそんなに行きたがる? それにその悲壮な顔。


 ワケありなのか? ……


 ま、話したければその内に話して来るだろ。それよりもう少しこの世界の事でも話しておいてやるか……。



「……ところでお前らどこ迄知ってる? 百年前の伝説。遥かずっと昔から続いていた人拐い。それが少しずつ増えてきて遂に百年前立ち上がった勇者の逸話」


 この世界のただならぬ女子誘拐。その核心に迫れるか、と思わず身を乗り出すルナ達。



「……ところでお前らどこ迄知ってる? 百年前の伝説。遥かずっと昔から続いていた人拐い。それが少しずつ増えてきて遂に百年前立ち上がった勇者の逸話」


伝説の勇者……


「天才妖精さんなんですよね」

 確か武器商のマスターがそう言っていた。


「たしか戦士としてだけじゃなくて魔道具制作とか、錬金術とかにも秀でてたとか。ボクのヌンチャク、その方のものなんです!」


「そうか。縁起いいなぁ!……で、その勇者はギカダンジョン最深部第6層まで行って、地下世界最強の統率者を倒した。それが拐われた者達を救い出した唯一の事例だ……」


 ルナの聞きたかった核心を語り出すエマ。


 当時、勇者はその際に受けたダメージも大きく、蜘蛛の子を散らす様に逃げ行く残党を追えるほど余力も無く、駆けつけた援軍と共に拐われていた人と妖精、合わせて二千人程を連れ帰り、引退宣言をして妖精の森に隠遁いんとんしていると語った。


「引退してしまったんですか……それで魔の者達は滅ばなかったと……」


「ああ。勇者も回復には百年以上かかる程の深手と聞いた。逃げ戻った魔の者も暫くは再興に力を入れ地上へは手を出して来なかった……

 で、地上にも凄い戦士がいた事を知ったヤツらは防御にも力を入れて、地上からの千里眼をも通さぬ結界を厳重に張り、あまつさえ第二層を鉄壁の防御にしたとかで、以来そこから先へ行けなくなってしまった……」


「そんなに防御するなんて我々を恐れていると?」


「イヤ、多分そのかつての敗戦がヤツらを用心深くさせた。地上ダントツ最強の天才勇者をして、『相手の弱点を突く戦略が上だったから勝てたが実力は敵の王の方が上だった』と伝記でも言ってる」


 テーブルに両肘を着き、組んだ手の甲にアゴを載せ、その麗しい顔から鋭い眼差しを覗かせるエマ。


「で、その王の実子が生き延びて今の支配者になってると聞いた……それがジャナス! 奇跡の生命体、アンドロジャナス族……

 そう、魔王さえも配下に置くという……」


『ま、魔王が配下~?!?!?!?!』


 その驚きに声も抑えず弾けるように叫ぶルナ達。ガタリと思わず席を立って一斉に注目を浴びてしまう。


「あ……失礼しました~、テヘヘ……」


 後頭部をポリポリとテレ笑いで誤魔化すと、そこへ偶然レイ・メイBROSがランチに現れた。


 気づいたエマからキャ……妙な声色。


「どどどうしようっ」


 とそれまでに見せた事もない 初々しくも可愛い狼狽ろうばいを見せた。


「……って何がですか? 一緒に食べたらいいじゃないですか」

「そ、それもそうよね、コホン、そうだな」


 なんか噛みました?……といぶかるルナの陰に隠れるかの様に身を丸め、頬を染めるエマ。


「お~っ、エミ―じゃないか!」


 とレイに見つかり声を掛けられた。













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