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第60話 超巨大核攻撃ですら無効







「……実は今回助けられた後、そのサイキック副隊長ソフィーから聞いた話なんだが――――近い内に地下総力を挙げた大軍勢の侵攻が始まるらしい……」



!!  ――――絶句し凍りつくルナ達。思わず本当の事か問いただす。



「確かにこれまでそんな事は一度も無かった。アタシもつい聞き返したさ。ギガダンジョンは守りも固く忍びも潜り込めなくて情報が全く掴めなかった。

 結界で千里眼も通さない。そこでファスター率いるサイキック隊は大規模な『予知隊』を作って力を入れたと」



 大剣を背の鞘に仕舞いながら遥か地平線に目をやり、語り続けるエマ。



「そもそも予知出来るって事は運命は決まっているのかと聞いた。当たって欲しくないしな。したらソフィーは言った。宿命ではなく確率だと。

 時間軸に様々な事象が近付くとその複合的な要因から多くの結果が一つの方向性に収束してゆく。

 その最も可能性が高い所を超越意識が読み取ったもの、だから絶対ではないと。遠くの未来ほど的中率は下がると」



「そんなの絶対に当たって欲しくありません! 」


 と、懇願するようにルカが身を乗り出す。


「だな。だが言ってた。今回のは選りすぐりのサイキッカー全隊を挙げその予知力を結集して精度を高めたもの、しかも近い未来の事象。ほぼ確実だろう、と確信に満ちていた」


「ならそれに対抗出来るんですかっ? こちらにも備えは有りますかっ?」


「どこまでの準備が有るかは分からん。が、その時の戦力としてアタシは誘われて共闘を約束した。もちろん今回の恩もあるが、元々アタシはリ・バース転生者。


 実は幼い頃、地下のヤツらに親を殺された怨恨があってな。アタシも危なかったが、その時にレイさんに助けられた。


 いつか仇討ちを……それで乗り込んだつもりがこのザマだ。一人じゃどうにもならんと分かった。だから彼等に加わる事にした……


 まあそれと、ジャナス以前に第三層にすら行けない理由を目の当たりにしちまってな。 あれじゃぁBROSがショックを受けて口をつぐんだ訳だ。 あれを何とかせんと、もう絶望しかない……」


「…………な……何が居たんですかっ?!」


「ジャナスを攻めの頂点とするなら絶対的守護怪物。第三層への穴を塞ぐ程の巨塊……


 強大な魔力をもつ妖精族戦士でさえ手を引き、かのBROSの〈超核分裂(ヌークリアディビジョン)〉ですら無効だったという超巨大怪物さ」


 ただ硬直するルナに向き直り、いつもの野心に満ち溢れた表情とはまるで違う、厳しくも思い遣りに満ちた真顔で語り始めるエマ。それが深刻さを助長する。


「きっとお前達もこの戦乱に巻き込まれずにはいられない。こっちから行かなくてもやって来る……

 だから今は備えてもっと強くなっておけ。

 そしてその時、市民を守る戦いをするのか、敵を叩く最前線側のアタシ達と共に行くのか……

 異世界に来て間もないお前らには酷だが今から考えておかないとならない。 悔いの無いように覚悟しておけよ」


 固唾かたずを呑み顔を見合わせるルナとルカ。その場から全ての音が消えたように感じていた。


 そのショックの大きさを悟って気を遣ってくれたのか、不意にいつもの調子で、


「だけどルナッ、今日は得るもの得られたしそれに……クスッ、楽しかったな! 互いにステータスも上がった様だし、またやろうな!」


 我に返るルナ達。このアッケラカンとした豪胆ぶりが今は何とも心強いと思わされた。


 茶目っ気返しでビシィッ、と敬礼ポーズをとり、ニカッと笑むルナ。


「ハイッ、ぜひっ! 今日はありがとうございましたぁっ!」


 可愛い妹分達に今までに無い優しげで美しい笑顔を見せたエマ。



 そのまま無言で電化して、いつになく静かに消えて行った――――――




   * * *





 ラグール宮殿で策を講じるファスタ―。



 連邦政府に並ぶ権威として存在する世界の中心ラグレイシア国。その王から最大の信頼を得て王国軍を掌握するこの者は、約二年前に彗星の如く現れ、救助等で活躍し名を馳せた。


 僅か十八才のこの若者がどんな経緯で突如この要職に就けたのか誰もわからず周囲も大きくざわめいた。


 だがこの短期間で人拐いや魔物の浸食から市民を守り、『大陸随一安全』と言わしめる国にのし上げた実績から、今や誰もが認める英雄的存在となっている。




 作戦会議室に一人、サイによる強力な不可侵結界を宮殿全体に張り、いかに味方をまとめるか思いあぐねていた。


 ……現在地上で最大のサイキック力を有する私と有能なサイキック集団で導き出した予知。近い内に地下世界からの総攻撃が開始される。これはまず避けられない。


 ……だが地下世界への千里眼はシールドされていて私でも覗けない。いかに準備し、そして何をもって勝利とするか……しっかり見極めろ! 私の持てる全ての力を使って……



 ファスターはサイキック脳内量子演算=〈分析智〉を使い、サイによる膨大なシミュレーションで最善策をスクリーニング、徐々にその最適解へと迫る。

 そう、その答えの一つ、私に任されたサイキック部隊と地上の全ての部隊との連携が欠かせなくなるだろう。スタンドプレイは好まないがここは動くしかない……


 特にこれまで地上最強戦力と謳われた、連邦政府認定魔法師、火・水・風・土のそれぞれ頂点との連携がカギを握る。


 そう。四天星の召集―――





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