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第61話 伝説を継ぐ者と天才超能力魔法師






 そう。四天星の召集―――



 宮廷地下深部の巨大シェルタ―施設


 四天星をそこへと招き、折り入っての話しを申し込んだファスター。強力な攻撃魔法にも耐えうる頑丈な演習ドームへ四天星達を案内する。


 王宮へも近衛兵を派兵する四天星率いる四元素系魔法師の中には、ファスター就任以来サイキック班が最上位で統率する事を不服とする向きもある。


 複雑な思いで乗り込んで来た四強の面々。



『何なんだこの若造が、一体どうやって王に取り入ったんだ……?』



 だがファスターは主従や序列を論じるつもりの無い事を丁重に話した。


 そして迫り来る全面衝突を予知隊が捉えた事実を告げ、今こそ一つにまとまり、体制を整える必要があると訴えた。



「まとめ役、それがこの中で誰でも良いのです。そして敵の強大さを実感出来るよう、本日見て頂きたい事があるのです。

 私たちがその敵だったと仮定して見て頂きたい」



 そう言って副隊長のソフィーを紹介した。

 この美しき天才魔法師にして天才 超能力者サイキッカーでもあるハーフエルフ。



 彼女に四天星それぞれの有する得意攻撃 大技スキルの模倣をこのドーム内で実演させた。



 驚愕する四天星たち。

 紛れもない完璧なコピーに唖然とし、苦悶の表情の四天星。



 あの苦労して身に付けた俺達の《アブサリュートスキル》がこうもたやすく……

 しかも別属性の魔法をたった一人の者に! それどころか滅多に見せない筈のキメ技が……


 そして極めつけは、敢えてその技を受けたファスターがサイキックにより完全にいなして防御してしまう。 四天星全員、その実力差に言葉を失い到底敵わないと印象づけられた。


 ……俺達はそれでもギガダンジョンの生還組。手も足も出ずに逃げ帰った屈辱がある。そう、ヤツらの強さを誰よりも知ってると思っていた……


 だがそれ以上のこんなのがヤツらにも居るって事か……それにコイツらの実力は本物だ! だったらナゼ?……



「隊長、確かにあなた方は凄い。だがならば今日は何の為に私らを呼んだのですか?」


「次の闘い、圧倒的な数の差に苦戦すると予知しました。長期混乱の末、明るくない未来……。

 そこで条件さえ整えば大きな賭けに出たいのです。王もそれに賛同してくれているが、その賭けには私達だけでは力不足。だからその時が来たならば是非その力を貸して頂きたい!」


「あなたにそう言われたら光栄だが、我々も連邦政府直属である以上議会を通して……」


「その議会の方針でっ!! ……三大ダンジョンの二つのためにあまりに甚大な犠牲を払った。その同じ轍を踏む訳にはいかない。だからいざという時、この私に……いや、私に悲願を託した恩師の想いに……どうか協力して頂けないでしょうか……」



 謙虚な物言いでありながら威厳さえ漂わす眼差しと堂々とした佇まい。



「……恩師?……とは?」


 ファスターがその恩師の名を明かすと、それを耳にした四天星全員が思わずもんどり打つほどけ反って驚嘆、そんなまさかと。


 しかし得心もした。先程の自分達の大技がいとも簡単に模倣され、あまつさえ余裕で封じられたのは!



―――やはり伝説の……。



 これはきっと本当の事だ!と。


『……この者は伝説の勇者の弟子……』


 ならばそれは絶対に従うべき存在。


 瞬時に四天星全員の心は固まっていた。ファスターを見つめる彼らの目は完全に同意していたのだ。

 にも関わらず慈しみをもって次の言葉を心から発するこの若者。



「でも私個人としては理不尽に人生を奪われた人を只ひたすらに救いたい、それだけなんです」



 とその優しい顔に相応しい慈愛の微笑みを浮かべ、他意なき想いを伝えるファスター。



 覇権、利権、後ろ立て……そんな物とは無縁の純粋な想い。 面々の心は打ち震えこの若者に対する決意を固めた。



「そのいざという時が来たならぜひ、あなたに従わせて下さい!」



 まずは最大の力、四天星の協力をとりつけた。




   *




―――あとは四天星以下バラバラだった四元素グループ全てを真の協力体制へとまとめ上げ、我がサイキック隊からもより優れた者たちを選抜、再編を急ごう。

 更に現代軍とも協力し合い、ハグレ者達も生かして行かねば……


 そしてその先、『彼の者達』にも。



「ソフィー、いよいよだ。 私はこの地上決戦の準備が遅れぬよう各方面へ掛け合って行く。キミはエマ、レイメイ兄弟へ特別任務の交渉と例の新型の装置の件も急いでくれ」



「了解しました」




  * * *





 この所の更なる大活躍のルナ達。逆を言えば地下から送られる敵数の増加も顕著だという事だ。


「今日は本当大変だった。街の修復も大変だし……こんなに攻めて来るなんて、やっぱ大侵攻の予兆かな。でもその御蔭で更に実力アップ。ちょっと休憩して行こうか、ルナ」


 その日、活躍を終えて帰宅の途中、丘の上の自然公園に寄る。


「うん。確かにこの所実戦づくし。でもエマさんとの実戦訓練をやっといたお陰で戦闘が楽に感じる。

 更に徳の倍率もついに三百超え。今、魔力はトータル12万、更に物理フィジカルは基礎15 × 報奨と徳倍率三万で45万! ロッドヌンチャクを本当に使いこなせて来た!」


「市街をもっと守れるね。でどう? もう地下へと乗り込める? 例の戦士と戦えそう?」


「多分全然……そもそもこの前のエマさん、全然手加減してた……最初に出会った日の雷光瞬間移動ライトニングシフトは二十箇所同時だったし。そのエマさんでさえジャナス族に敵わなかった」


「だからこそ瞬間移動対策の新技を習得して来た」


「雷神……あれは凄く有効だと思う。多分奴らも手を出しずらい筈」


 今は防御技の雷神だが、もしあれで雷光瞬間移動ライトニングシフトしながら来られたら攻防一体で凄い事になる、と二人は理解していた。


「ああ、早く強く成りたい! あの子がいつまで無事かも分からないのに一向にジャナス攻略に目途が立たないのは速度だけじゃない、サイの力が弱いからだ……」


 思わず拳を握り込むルナ。


「だって戦士でもないセイカちゃんがジャナスの動きを邪魔出来てた……だからサイは大事。 でもボクのサイは未だ転生時のルカの1/10程。すぐに上達は難しいよ、ルカの30万が羨ましい……」


「最近、やたら天のお告げがよくあるの。 もっとルナと一つになりなさいって……」


「な、何イキナリ! ま……またルカは変なコト考えてるんでしょ!」





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