目次
ブックマーク
応援する
3
コメント
シェア
通報

第62話 出会いの奇跡






「な、何イキナリ! ま……またルカは変なコト考えてるんでしょ!」


 そう言って胸の前で腕をクロスして半歩退く保身のポーズのルナ。苦笑いのルカ。


「いや……ホントよく最近起き抜けにそんな言葉が何処からか頭の中に響いてくるの」


「ついにそこまでイっちゃった?! もうヤバいんじゃない? やっぱ妄想ヘンタイ?」


「って、ルナにだけは言われたくない! じゃなくて何かもっと優しい想いに満ちた感じなの。で、よく考えてみたら『凄い事』に気付いた。


 私のが羨ましいならその通り一つになればいいんだって」


 少し得意げに鼻下に人差し指のルカ。滔々と続ける。


「前に言ってたよね『ルカがサイで透視や予知して指示出せればAIつきスカウター持ってる様なもの』って。


 今私は各倍率掛けて魔力3千、サイ33万、物理4万で丁度ルナと欠点を補い合える。そこでルナを一気にレベルアップする裏ワザを考えたよ」


「えっ! なになに!」



「その名も――――サイキック・ユニティー!」


「おお、なんかカッコイイかも! ルカ、ネーミングセンス良き~」


「フフン!……で、この世界で初めて会った日、私は自分の思念をルナに送りこんだでしょ」


「う、うん……ルカの悲しみをダイレクトに脳内にブチ込まれた……サイによる精神攻撃」


「そう、その様にしてこのサイで捉えた情報を言語テレパスではなく直接共有するの。 その時だけ乗っとる様に私がルナに精神干渉する……

 それをコントロ一ルして、いてはルナが私の様に予知したり合気術も使えて戦況次第で切替・複合する。サイによる私達の精神統合、それがサイキックユニティー!」



「スゴいよ! それが出来ればスカウターなんてもんじゃない!」

「でもこれは余程息が合わないと……」


 却って精神攻撃の様に邪魔になったら本末転倒だからだ。それ故に普段のトレーニングでイザという時に極自然にシンクロ出来る様にならないと使えない。真剣な眼差しでそれを伝えるルカ。


「そうだね……じゃ、さっそくやってみよう! 上手く行った暁にはボクはルカのサイをそのまま手に入れたのに等しいんだから何が何でも会得したい!」


―――早速訓練開始。


 出だしから息の合う二人。元々が運命の出会い。疑う余地もなく互いに自然と受け入れた。そこでポシェットからノエルを呼び出す。


「ノエちゃん! それじゃ、お願いね。その魔法の速射砲をねぇねに当てたらオヤツ2倍になるゲームだよ」



「やる~っ! ぜったいあてるもん! ニシシ……」


 バババババババババババババババババババババババババババババ……



 背後から乱射するノエルの魔法の速射砲を、ルカの予知力で瞑目のまま避けて行く。

 その桁違いの攻撃予知能力にルナは驚嘆する。



「あたらないよー! のえる、もぉおこったー!」



 ドババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババ



 エスカレートするそれは、もはや現代兵器のそれの数十倍高速な大連射。

 それでも万倍速で避けてゆくルナ。



「ルカ……これは……やっぱサイは凄い! 成る程ジャナスがボクの攻撃をものともしないのはコレか?」



  ……でもコレなら大侵攻も恐れるに足らない! 決戦の地で大暴れだ!




  * * 




 訓練を終えて膝を抱えて座り、丘から陶然と星空を見上げる二人。背中合わせで寄りかかる。




 ああルカ……自分にこんな相棒がいるなんて……これはまさしく出会いの奇跡。

 キミはいつでもボクに勇気をくれる。キミがいなければこの異世界でとっくに押し潰されてた……


 お陰でこんなにも希望を持てるなんて……もう、何か胸が一杯だよ……

 このまま一緒に歩める日々がずっと続いてほしいな……


 心地良い夜風が吹くと、月明かりに照る愛らしく真っ白なルカの頬からひと房の美しい髪がルナへとそよぎ、その頬を撫でた。藤桃色の長い髪から花の様に甘く薫るものが鼻腔をくすぐり、ルナの胸を焦がした。


 かけがえのない想いに世界が、満天の星々が、二人の周りをグルリと回った気がした。ルナの焦がれた想いがジンワリとルカに伝わって行く。



 ――ルナ、これでまた少し、キミに近づけたかな。いつか本当に分かり合いたい……。



「これで私達は文字通り二人でひとつだね、ルナっ!」


 これからはもっと役に立てる、とルカの満足顔。

 となれば調子に乗って毎度のたくらみ。


「じゃあさルナ、もっとシンクロ出来るようにやっぱ今晩から寝るのも一緒にしよっ!」


「それはダメ~、ユニティーで何されるか分からないし! (てか、こっちが抑えきれん)」


「チェ~、ルナのケチ~! (フフ、実際その通り! 大好きだから仕方ないもん)」


 あーでもマズったぁ……この交渉は明日すれば良かった。だって明日は満月……明日ならきっと……



 ―――そう、その翌日は満月。ルナにとってそれは特異日だった。










この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?