「はあ、はあ、アッ……ノエ……ひゃんっ……くはっ……はああぁっ」
もう限界っ!!
――――ダダダダッ、ガチャッ
「二人でナニやってんのっ!……えっ?!」
ルナにかぶさり唇同士が触れそうな状況でこちらと目が合う同年代の美少女。そして幼女ノエルはいない。だがその特徴的な髪型からしてどう見てもノエルが少女に変身していると直感。
元々天使のように愛らしいノエルだが、その可愛さを保ったまま15才くらいに成長した正に妖精のツヤッぽさも合わせ持つ妖しくもキワどい美しさ。
ルカの叫び声でポヤポヤ目を覚ますルナ。部屋入口で唖然とするルカを寝ぼけ眼で見つける。
上からの吐息を感じてそちらを向くと、被さる美少女と鼻先を触れさせて目が合う。
「キャアアアアアアアアアア――――――ッ」
『ハッ』隣家に迷惑と思い、
満月の直射が遮られた途端、ノエルは縮んで行き、幼女に戻ってスヤスヤ眠りこける。
胸元のボタンを全部外したルナのハダけた姿に拳を握りしめ、一歩、二歩と近づきながら
「コ……コレは……どう言う……ことっっっ ?!」
一途なだけに恐ろしく嫉妬深いルカの逆上。もう正体が何だろうと頭に無く、遂に怒りが爆発する。
「もう本当にアタマ来たぁっ! なんでノエルが許されて私じゃダメなのぉっっ!」
ピシィィッ……ビキビキビキビキィッッ……
サイの暴走で部屋の天井・壁に無数のヒビが走る。嫉妬に狂った表情は初めて見せるものだった。
白目は血走り瞳は今にもサイ攻撃寸前、魔眼の様に不気味に明滅している。
「ちょ、ちょ、ちょっと待った! 今日のルカ、マジ怖いって!」
「当たり前だぁっっ! 私を何だと思ってるの! なんであんな風にベッドを共にしてるのぉっっ!」
「お、落ちついて、ねっ、ねっ! ノエちゃんは単に妹で、ここここれは保護者として……」
「どこがよっ! あんなツヤッぽい女子に何の保護してる! その上あんな事までっ!」
「え、いやいや、な、何にもしてないって、ちょちょちょホント落ち着いてぇ!」
「ふーん、何にもしてないんだ~。それであんな声を出すんだ~……初めて聞いたよあんなの! こんな風にねっっ!」
サイで脳内へと記憶転送され、「ここここれ……誰?」とその声に赤面してうろたえるルナ。
「しらばっくれるなぁっっ! こうなったらアンタを殺して私も死ぬ!」
……グググ……
目を血走らせたままサイキック+千倍フィジカルで首を締めるルカ。
「ぐ……ぐるじぃ――……シヌゥ――……」
グタッ……としたルナにハッと正気に戻るルカ。
「ハッ……ル、ルナ?……あれ……お―い……ガクガク……嘘だよね~……ペシペシ」
死んだフリから戻るルナは呆然と遠い目をしてため息をつき、次第に瞳に涙がたまる。
「……はぅ……もう……死んだ方がいいかなって……」
「な……なに急に……死にたいのはこっちだよ!」
「だってボクはこんなにルカのこと想ってるのに分かって貰うこと出来ないんだから……」
「ど~考えてもそれはこっちのセリフ! 気でも変になった? ……確かにお互い永遠に結ばれぬジェンダー同士。それでも大切に想って我慢してきた……」
不意に人差し指の背で涙を拭い始めるルカ。
「そしていつかは私の望むように努力するって言ってくれたのにナンパばかりかこんなあからさまな侮辱! ヒド過ぎる……面白がってワザと私の気持ちを上げてから
幽霊のように恨めしそうに睨んで呟いた。
「 絶対に許せない……」
その声音からこれはマジに本気だと理解したルナ。血相を変えて訴える。
「違う! これは本当に偶然なの! 本当に本当にルカは大切なのっ! 信じてっ!」
異様な沈黙が続いた。
「――― だったらどうして今迄好きの一言も言ってくれなかったの! いつもエロ目線とかナンパとか……私なんてどうでも良いからでしょ!
怒ればいつも誤魔化して……言い訳なんて今更信じられない! 」
「ち、ちが…」
「ここまで裏切れるなんて人としてもう……ついていけない……」
ルカの余りに本気でこわばった表情。限界を悟ったルナは床目線のまま遂に本音をこぼした。
「……なら本当の事を言う!……だってボクが本気で追う存在なんてみんな消えてしまう……神様がボクから大事なものを全部取り上げるんだ。
なのにもうルカへの想いを止められなくて……無理に斜め上目線とか他の人に目を向けて気持ちを逸らすしかなかった……」
「え!! ……だったら言ってよ! 第一、失った人達の事は偶然でしょ! 私はきっと大丈夫!」
「嘘……この前だって本気になりかけたらルカ、身を盾にして心臓破裂……
こんな戦いの日々、その内
その虚ろな瞳はどうしようもない悲しみを湛えていた。やがて泣き声もなく涙だけが、
ツイッ……、ツイッ……と流れてゆく。
息が止まり言葉に詰まってしまうルカ。微動だに出来ず硬直する。
だが遂にルカも
ゴクリ……