「そうだそうだ! 表彰式の中継を是非頼む~!」
そう、確かに遠くの戦争より身近な事件の方が、より深刻に感じてしまうのは誰もが実体験している事だ。止まらぬ身近な愛すべき人達に降りかかる悲劇の連鎖の終焉。どれだけ待ち望まれていたか。
世界は狂った様に歓喜に包まれた。
そうした民衆の声に推され、早速準備された政府の表彰の式典。
会場では壁に掲げられた捕獲数トップテンの表を見て、例の少年少女パーティがルナ達に歩み寄ってくる。
「どうですか。僕ら、2位になりましたよ」
少しだけ誇らしげにルナ達に報告する少年少女。
「頑張ったね。並居る先輩転生者達を越えて2百も!やったね!」
「はい! 頑張りましたぁ! 捕獲数2百は3位と倍の差で、かなりの達成感で嬉しいです!……まあでもルナさん達に比べると……」
「エヘヘ……」
そう、トップテンの表の1位は表示し切れず幾重にも折り返されていた。
「だって捕獲数1万って……もう神ですか! さあ、表彰状授与、呼ばれましたよ、ルナさん!」
「えっ……チョッ……ル、ルカ、ボクこう言うの苦手~っ。行って来てよー、それにこれはルカのお陰なんだからぁ~!」
「フフッ。ダ・メ。地上の敵の全掃討はキミが言い出しっぺなんだから。そして最初に行動に移したのもね。だから胸を張っていってらっしゃい」
「ルカァ……」
「ホラ、ルナにはその資格と、そして責任が有るんだよ。だから。 ……さぁ! もっとしゃんとして!」
「う……うん」
そうして全世界へ中継される中、授与と同時に会場の総立ちで盛大に祝福され恥じらうルナであった。
……お兄ちゃん、皆、こんなにも喜んでくれてる。
あなたの事で、すぐダメダメになっちゃう自分だけど……でも今は仲間たちが支えてくれる。だからいつまでも引き摺らないようにしなくちゃね。
ボク、もっと褒めて貰えるよう、また頑張るね。
中継により全世界へと轟く栄誉。そして心から寄せられた感謝と賛辞。盛大な拍手。
その壇上のルナを誇らしげに見るルカとノエルの瞳は潤んで耀いていた。
* *
式典も無事終わり、『地上の敵の全掃討』 という目標に限りなく近づけた事、更に多くのハーフも救出した事に
それにより更に徳を積み重ねたルナ達のステータスを見て決心するファスター。
『予想を上回る成長だ。これは次の私の計画の要としてもぜひ欲しい! ルナ……』
ファスターは式典の帰りに宮殿に立ち寄るよう指示、ルナ達を作戦室に呼び出した。
* *
作戦会議室で待っていたファスターに挨拶するルナ達。すると、その表情は少し嬉しそうに見えた。
「この度の活躍は実に素晴らしいものだった。 そこでその力を見込んで私から任命する!」
任務……遂に親衛隊として……
「政府にさえ内密の最重要作戦、そう、今回の戦乱を
これか! セイカちゃんの言っていた……
《―――何か重要な依頼を得たならば、その時こそ迷わず引き受けて下さい》
祝典ム―ドから一変し、一気に引き締まる。
『はい! 精一杯やらせて頂きますっ』
と居直る二人。その内容を聞かされてその重圧に驚愕するも、決意を固めるルナ達。
―――これ程の任務を任されるならこれ以上の事はない!
きっと命懸けになる……
身の引き締まる思いと興奮の冷めやらぬ中、ルナは作戦室を後にする間際に『ハッ!』と、硬直する。
偶然視界に入った『思わぬもの』を目にして二度見と共に複雑な顔となった。
そっ、そんな!!……
ピアスのデザインがボクのとまるで違う!
でもデザイナーのレイさんがコレを似てると?……それとも単なる記憶違い?……
死ぬほど気になっていたデザイン。ルナの
しかし髪の隙間から見えたそれは確かに月と星だったものの、三日月の中央に星が描かれるといった小さくも大きく異なるものだった。
だが少なくとも兄のそれではない事が分かり、何とも言えない落胆と一つの決意を新たにした。
……それなら見ず知らずのボクを命がけで助けてくれてたって事になる。
なら神がわざわざこんなに似た人と引合わせたのは、イタズラ?
それか恩返しの実感をし易くしてくれたとか……?
何にしても何気にこの人を尊敬してたけど……
だったらもっとこの魂を込めて今回の任務に応えていかないと……
* * *
この大陸の北の大地、人の住む地域よりもずっと先に草木も生えぬ広大な平野が続く。
そして更にその最果てに口開く巨大ホール、ギガダンジョン。この最北の地には魔物以外に虫さえ生息しない。
更に北には年中荒れる大海がこの世の果てを想起させる。
ルナ達はファスター親衛隊として軍へ参加。軍用車で作戦の説明を受けつつ移動した。
説明が終わり車窓から荒涼とした岩石だらけの地が延々と続く景色を眺めるルナとルカ、そしてノエル。いよいよ
「……そろそろだね。ボク、前世ではどんな形であれ戦争に参加するなんて夢にも思わなかった」
特別任務の発動までは待機を兼ねた最前線後方での救助と治癒による援護を指示され、戦地へと向かう。
「こんな事やらずに済めば良いけど悲しむ人を少しでも無くしたい……更に超重要任務にも呼ばれた。
もうただひたすら頑張るしかない」
決意を固めるルナに応じて向かいの席のルカも自分なりの役割を再認識する。
「だね。何もしなければ罪もない人がやられちゃうし、仕方無いんだろうね……だけど先ずは後方支援。戦傷者助けて治癒する任務だから頑張ろうね」
「でもノエちゃんは危ないから戦闘の時はポシェットから絶対出て来ちゃダメ、中からの魔法参加もダメ。わかった?!」
車内をスズメのフォルムを模してチョロついて遊ぶ幽体ノエルに言い聞かせるルナ。
「のえる、たたかいキライだもん、チュンチュン」
平和と遊びを愛するこの妖精の気ままで幼い声に癒される二人。
「そ、そうだったね! 心配ないか。じゃ、ルナの予備のヌンチャク欲しい時だけ中から渡してね! 」
「チュン!(うんっ!) ニシシシ……」
「クスッ……にしても私達、徳の倍率いつの間にか四百倍超えだよ」
ホントいつの間にかだよね、と感慨深げのルナ。
「実力も更に上がってるし……コレは相当活躍出来るんじゃない?……でもそんなに良い事したカナ?」
「[取り返し隊]とかさ、ボクら人助け中心で徳倍率がマシマシ。人に良くした分が評価になるのって気分良いよね」
「うん。更に日々の実戦や本気の乱取りで基本ステータスも上げて遂にルナは
「だね。それにルカも今や超速で動けてる。こうなったら現地でケガ人連れてくる競争をしようよ!」