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第79話 特別任務の決行






 ギガダンジョン付近の空。


 遂にファスター親衛隊特別任務が始まる。

 宙にホバーする緊張に漲る面々の仲間達。


 ファスターの脳内量子演算〈分析智〉により練り上げた作戦の本丸である。


 召集された戦士は副隊長ソフィーの元、選抜したサイキック精鋭部隊二十名、四元素の各長たる四天星の四人、レイメイ兄弟、エマ、さらに末席にルナ達。


 総勢32名による特別任務。



 各面々の意思を確認するように見渡すファスター。

 出陣に向けて円陣を組む。



「今からこの闘いこそがこの決戦の要だ。北方の前線は四天星副隊長以下、主力が総出で頑張ってくれている。

 だがそれは陽動作戦でもある。そしてこちらが少数精鋭なのは敵の虚をつくための隠密性によるものだ」


 全員の真剣な眼差しがファスターに注がれている。


「私はこの戦いに賭けている。キミ達はそのための精鋭として召集された事を忘れないでくれ。

 そして私達はこれに勝利し、今まで成し得なかった次のステージに必ずや繋げる、命を賭けてやりきってみせる。

 だがこれは北方の最前線以上に危険を伴う作業だ。是非気を引き締めて頑張ってくれ!」



「了解!」



 一分の隙もなく志気も高い面々。ニガニガしい記憶もそれに一役買っていた。


 以前、四天星やレイメイを含むパーティーがこの第1、第2層を統べる2大魔導師を倒すも地獄の門番に歯が立たず撤退、という過去が脳裏をぎる。


 エマにしてもスーパーラヴァ地獄の門番は見るだけに終わった。それぞれの想い。


 絶対リベンジだ!と意気込みは高まる。




  * * *




 暫くして北方戦線より抜けさせた四天星の動きに気付き憤慨する政府首脳陣。


 その大幅な戦力減を咎めようとするも、自らが先頭を切って期待を越えて活躍する四天星の副隊長たちが千倍の軍勢に怯む事なく互角の戦いを見せる。


 何より、今迄にない四元素全隊の協力的な奮闘ぶりに戦局は想定よりも有利に進んでいた。


 これには黙らざるを得ない首脳陣。




  * * *




 一方、ファスターの作戦準備が進んでゆく。各要所へ適材適所、連れテレポートしてゆく。



「私達の行動は全てサイキックバリアのひとつ、〈思念ブロック〉で隠密行動と成っている。その為の少数精鋭。この人数なら派手に動いても敵に気付かれないから大いに暴れてくれ。

 まず四天星の土、水の魔術で大河の塞き止め最適化、これを頼む。要所は指示した通りだ。下準備の後、合流する!」



 そうしていよいよ作戦の肝、ソフィー、ファスター、レイメイ兄弟の四人でギガダンジョンより更に北の果ての海へ、海中へと入って行く。


 そのソフィーのサイコキネシスで球状に避けた海水の中で思わずうなるレイ。


「しかしファスターさんもスゴイこと考える! 俺等はただ正面からぶつかることしか考えて来なかったのだから……」


 そう、約二年前、ダンジョン第二層へと突入し、〈超核分裂・ヌークリアディビジョン〉を地獄の門番へと直撃。


 この一日に一、二度しか出来ない魔法界最大の爆裂大技エクスプロードスキルでも一瞬形を歪めただけですぐ元通りとなり茫然自失となったあの過去。


 取り囲む屈強な魔物たちを命からがら振り切って逃げ帰って来た屈辱の記憶。


「これなら安全かつ最高に嫌がってもらえるプレゼント間違いなし!」


 海底の地中へ爆裂スキルを埋め、限界最大の猛爆発を巻き起こすレイ・メイ。


「いくぞ、メイ……最大強度!」


〈ヌークリア・ディビジョンッ!!(超核分裂)〉



 すると同時にその水中の衝撃をファスターが更に増幅。



〈超サイパワーウェーブ加速!〉



 すかさずソフィーによるテレポートで全員地上へと脱出させて一味と合流。



 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド……


 唸りを上げた海底の大衝撃波が超巨大津波を誘発。

 計画通り巻き起こる怒涛の超巨大洪水。


 ギガダンジョンをも水没させる程のそれは山なりに急襲、激しい速度で陸を駆け上がる。


 膨大な海水は上下流の塞き止め効果もあり、進路を横ぎる大河すら突き抜けホールへと到達。


 第一層の外縁部のクレーター円環状尾根を越え、その内部中央ヘのすり鉢状の第二層ホールへと大瀑布となって雪崩れ込む。



 ジュジュジュジュジュジュジュジュジュジュジュジュジュジュジュジュ―――――――ッッッッッッ



 その第二層底面に蠢くマグマ怪物に触れた海水は瞬時に蒸発して周囲を蒸し風呂に。



 だが浸かる程になると第二層が茹で釜状態へ。更に完全に水没し第二層がボコボコと超巨大沸騰温泉となり高温高圧のスチーム地獄へ。


 このまま蓋をしていればいかに通常の溶岩より温度が高いマグマ怪物でも膨大な海水へと熱が奪われ岩の塊と化してしまう。


「怪物よ、お前は上がるしかない! 」


 第二層の穴付近の宙から見下ろしながらそう呟くファスター。

 抜かりなく、だが自信に満ちたその表情。


 ファスターを囲むように宙をホバリングする全メンバー。

 水没してゆくその圧倒的な光景を陶然と見つめていた。



「第一作戦成功、次に移る。

      ……前線も頑張ってくれよ」







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