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第87話 せめて死ぬなら一緒って言ったのに



《これでようやく自由に戦える! 》


 ルナの顔に生気が戻り、治癒されたルカも並び立つ。


「盾役不要ならもうやられないから! いくよルナ」

「うん! よくもルカをいたぶってくれたな!」





 紅蓮に染まる灼熱の世界の中、二人は人智を超えたスピードで壮絶に戦う。

 人々の未来を懸けて、最高の相棒バディと共に。

 数時間に及んだ闘いにケリを付けるべく、残りの力を振り絞る。


 瞬間移動で来る二体のジャナス準戦士を超速ヌンチャク廻しで間合に入らせないルナ。


 連続フェイント移動で隙を伺う敵戦士。

 レーザーと剣撃を組み合わせ上下左右に飛び回る。



 楯役から開放されたルカは予知と合気術・そして瞬間移動で余裕の攻撃回避。

 ルナもレーザーを喰らえど万倍速で撹乱、一瞬ならその超熱耐性ならば無傷。そして反撃に出る。



『現れる所、ソコをつく! 喰らえっ』



 と、光速級ハイパーレールガンを放つが空を切る。

 だが予測困難の全身突入技・ 乱撃ジャンブルウィップの余力はない。



《やはり奴らのサイは強力、予知される。

 なら今こそ鍛練の成果、こっちも予知だルカ!》


《任せてっ!!》




《サイキック・ユニティーッ!》




 ルカと精神合一、ルナの瞳が魔眼の如くサイ発光。


 その敵の不可視の移動と攻撃。それを捉えるべく、感覚をに研ぎ澄ます。そうするほどに時の流れが恐ろしく緩んで感じる。


 全てが数万分の一のスローモーションのよう。


 その逆に、ルカとのテレパスでの脳内のやり取りは、全てが一瞬だ。

 祈る様な姿勢で背後から感覚加力してくれている。超絶スキルが流れ込む。

 そして共に死力を尽くしチャンスを探る。



 スゴイ! この不可視の敵ですら次第に動きが掴めてくる……



 あれ……

 この光景、いつか夢か何かで見たような……


 いや、今は集中だ! 



 アンドロジャナス準戦士と2対2になった事で互角の勝負を繰り広げるルナとルカ。



 一方―――



 全ての解体に目処が立つファスター陣


《アブレーションもあと少しで終わる。

 …… BROS、いよいよ例の頼む!》


「さすがファスターさん達、 あっという間だ! これで皆で飛ばした上空に漂う分も宇宙へ葬れる。さあ、墜ちてくる前に行くぞっ、メイッ!


 爆発の瞬間、シールドを上向きに解放するんだ、パラボラシールドで全衝撃をそらへと向けろ!

 絶対しくじるなよ! いっくぞぉ―――っ!」


「見くびるな兄さん! シールドも、爆発連鎖だって! タイミングがズレた事なんか、ただの一度も無かっただろ。

 これは僕にしか出来ない阿吽の呼吸なんだ! 任せろっ!」



〈ヌークリヤ――――ッッ、

       ……ディビジョンッッッ!〉



 凄まじい光芒が目を眩ませる。

 そして遅れて大轟音が発生。


 その魔法界最大威力の大爆発の衝撃


 それは、遥か上空に留まっていた膨大な共同作業の解体群を、余すところなく宇宙へと吹き飛ばしていった。



   **



《ルカ、レイさん達やってくれたよ! こっちも一発で頼む! ボクの腕はそれで限界》


《任せて……ルナ、次だよ!》


 テレパスと共にルカが合掌し屈みながら瞑目。


〈この一手に全てをかける! ねえ、お願い! キミの全部の力を貸してっ!! 〉


 そしてダブルヌンチャクと共に



《いっけぇ―――――っっ! 》

死の鉤爪リーサル・クロウ!  裂閃ティア―――――――ッ 〉



 ありったけの残りの力を振り絞り猛威を振るうと、ルカによる正鵠せいこくを射た位置出しでリーサルクロウの超振動が遂に二体の敵・出現場所にガッツリ的中、見事バラバラに。



《ああ、この最高に愛しいこの人と共に……遂に……やり遂げたんだ!》


 その瞬間、脳内で二人の歓喜の念が衝突し、花火の様に炸裂した。



《やった――――――――――――っっ!!》



 しかしその超振動が余りに強烈な物質の重なり現象『スーパーオーバーラップ』を発生させ、超核融合を誘発。


 天才的錬金術による特殊金属であるリーサルクロウでさえ散る大爆発発生

 神の怒りと云われる爆発速度は瞬時に二人を襲う。



――――死を前にした一瞬、

 それはあたかも超スローモーションのよう――――



 予想になかった事態に二人は逃げきれないと直感する。

 超速状態の感覚は時の流れが激しく緩み、ましてやテレパスは数百語さえ一瞬で解する。


 二人の意識がその刹那に膨大に交錯した。

 女のジェンダーに戻ったルナは最後の力でルカにテレパスを送っていた。



《『私』はもう限界。この爆圧は逃げられない。ルカはテレポート出来るんだから逃げて!》


 ルカへとそう願う。ルカもこの準備無き状態では『連れテレポート』は無理と判断。

 逆にルナを庇うために僅かな残力のサイ・バリアで身を盾にするテレポート。


 かばい返そうにも腕はもう殆ど上がらぬルナ。もちろん、合気術・ファントムアームズにガッチリホールドされ、何もさせてくれない。



《せめて死ぬなら一緒って言ったのにっ!

 裏切り者―――――――――――っ!

 これだけはもう絶対にイヤなの――――っ!

 ルカァァ―――――――――ッ!!!》



 悲痛に念ずるルナを幸せそうな笑顔で抱えるルカ。


 誘爆に飲まれて行くのが分かる。


《そんな事ないよ。多分一緒に死ねるよ。でも万一助かる可能性があるなら、ルナのためにこうしたいってズット思ってた。

 それでやっとあの日の恩返しが出来る……だから一緒に死ぬとしても形だけでもこうさせて》



 ……それでもしルナだけ助かってしまったら、それは私のワガママ。その時はゴメンね。 短い間だったけど楽しかった……私も愛してたよ



 念願を果たした一点の曇もないルカの表情。対して苦悶のルナ。



 ……ああ、また一番大切なものを守れない。

 結局生まれ変わってもこんな結末。

 所詮不幸だ……

 この悔いだけはもう二度と受けたくなかったのに―――



 完全に誘爆に呑まれ意識が飛びゆく二人。


 その体が霧散する間際、予知したファスタ―が決死の飛び込みをしていた。

 二人を抱えての連れテレポートに死力を尽くす。


 ルナの混濁する意識の中――――



 え !! お兄ちゃん?!

 今度こそ迎えに来てくれたの?

 もうお兄ちゃんの所へ行ってもいいの?……



 ファスターはズタズタに傷付きながらも、超絶テレポーテーションしながら、上空で仲間をシールドするソフィーへテレパス。


《後は頼んだ!》

《お任せ下さい、ファスター様》



 その瞬間、ギガダンジョン第一、第二層の間に巨大な爆圧が急拡大、



 ソフィーの大シールドで丸ごと球状に保護された面々は二つの層が焦土と化して行く様を宙から見届けながらゆっくり退避してゆく。


 神の怒り、超オーバーラップ爆発からギリギリ飲み込まれ切る前に抜け出したファスター。

 戦場処理をソフィーに任せ、王宮の医務室へと瞬間移動を繰り返して急いで飛んで行く。




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