続く治癒。予知通り再会した事を感無量に思い返し、互いに変わらぬ想いでいる事に心を温める兄。
手かざし治癒をしつつ更に忘れえぬあの日々にも思いを馳せ始めた。
……俺の心の
ルナ……
いつも……一緒だった――――
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――――幼少期――――
兄・
いつも親から叱られる妹ルナ。特に悪い事はしていなくとも成績優秀でないと執拗に叩かれる。ストレスのはけ口、虐待だ。
兄は生後僅かから小2頃まで異常なほど執拗に受け続けてた虐待によりノイローゼになっていた。それは無数の骨折の跡が物語る。常に死んだ目をしていた。
そう、生きながらにして既に心は死んでいた。
だがそんな兄にも一つだけ心が温かくなる瞬間があった。そう、2才下のルナを見て兄は心を癒やされていた。
「なんて笑顔がキレイなんだろ……」
その女の子は生まれながら本当によく笑う笑顔の似合う子であった。
兄はその後も続く虐待が怖くて必死に勉強し、成績が良くなった頃、徐々に矛先がルナへ向かう。
「ごめんなさい、ごめんなさい、もうしません、ちゃんとやります……」
ルナは常時受ける暴力にオドオドして親に謝り続けていた。兄は何もしてあげられず、
『あんなにいつも笑顔だった子が、こんなにおびえきって……結局、ボクと同じ運命……』
せめて慰めてあげる事が精一杯だった。
震える日には抱きしめて眠った。その兄の手の温もり。
その時だけは妹の怯えていた目が嬉しそうに安堵の表情を浮かべた。
次第にエスカレートして、遂にルナは酷いコミュニティ障害となり、一時期声さえも失う。その後、声は戻れど極度の
そうしてその気後れした雰囲気をいじめっ子が嗅ぎつけた。学校では執拗な虐めに合い、常時諦め顔となるルナ。
最初、からかわれていた吃音。それがやがて小突かれる様に。突飛ばし、言葉責め、取り上げ、物隠し、冤罪……
家では母親はその頃再婚もして、相方の男と共に更に虐待を増して来た。体罰、暴力、そして食事抜き。
もう自分が守るしか無い―――小心な兄でさえそう思った。
「こんな悲惨な人生はボクだけにしたい。あの笑顔を取り戻してあげたい……」
こっそりとラップを手に忍ばせて自分の分の食料を包んで隠れて渡す。時としてその日の全てを譲り与えた。
そうした日々に兄が少しでも自信をつけるため始めたカラテ。親友がカラテ道場のオーナー師範の息子という事もあり、月謝は払えないものの見学だけはさせてもらえた。
必死で見よう見まねをしていたら高い素質を見込まれ、大会で優秀者を多く輩出したいからと道場の特待生として無料で教えてもらえる事になった。
やがて兄はカラテの実力も自信もつき、妹へのイジメを風の便りで聞きつけ、直ぐに首を突っ込むようになり、随分助けた。
妹の教室まで頻繁に見守りに来て何かあれば即介入。両手を広げイジメっ子に立ち塞がる。 ルナはその手の陰でいつも申し訳無さそうにしていた。
しかしそんな日は家に帰ると嬉しそうに言った。
『お兄ちゃん、ありがと』
……お兄ちゃん……あんなにいつも死にそうに怯え続けてたのに、こんなにも一生懸命になってくれて……
こんなダメな妹のために……
そんなある時、学校から帰るとルナの顔に大きなアザが出来ていたのを見て問い詰めた。
イジメが激化してないか心配して聞いたが、ルナは断固として口を割ろうとしなかった。
「それならお兄ちゃんはルナのことキライになるよ!」
なかなか口を割ろうとせず眉尻を下げる妹。
だがそれ以上に嫌な事は無かった。
白状したアザの原因、それは親だった。
『アンタをいたぶる事でオマエの兄さんは楽出来てんだよ! 《ドカッ》……ホントはアイツの分だけど最近やたら成績も良くて……《ドカッ》 殴れやしない《ドカッ》
……いちせ(一星)もアンタに感謝して貰わないとね―っ《ドカッ、ドカッ》
オラ、言いつけてみなよ、歯向かったらしばけるし、ホラ、ヤツの前で泣いてみろ!《ドカッ》
『うぐっ……』
(―――お兄ちゃんを巻き込ませるもんか……)
タマにはあいつを殴らせろっ! 小さい頃のヤツは《ドカッ》もっと泣き喚いて楽しかったんだよ!《ドカッ……ドカッ……ドカッ……ドカッ……ドカッ……》』
―――ルナは身代わりになってた? 僕のせい?
……どうしたら……