綾人が目を開けると、見慣れた探偵事務所の天井が目に入った。
「やべっ。寝てたのか」
呟いた綾人が体を起こした時、事務所のチャイムが鳴った。
「はい」
返事をしドアを開けるとそこには、茶色のロングコートを着た、長い黒髪を肩までのばした色白の女性が立っていた。
「あの・・・月見里探偵事務所はここですか?」
戸惑ったようにしながら白い息を吐いている女性を見た綾人はずぐに事務所の中に通した。
「はじめまして。探偵事務所の所長の月見里 綾人です」
そう自己紹介をすると、少し驚いた表情を浮かべた。当たり前だろう。なんせ目の前にいるのが、黒いタートルネックに白いパーカーにジーパン、耳にはピアスというなんとも探偵らしからぬラフな
「今日はどういったご用件でしょうか」
そう言いながら綾人は女性に手でソファーを指し示した。
「今日はその・・・行方不明になった家族を探して欲しくて来たんです」
「温かい飲み物お出ししたら詳しくお話聞かせていただきますね」
そう言いながら綾人はキッチンに行きコーヒーをコーヒーカップに入れると女性の前に出し向かいのソファーに腰掛けた。
「あ、ありがとうございます」
女性はそう言い1口飲んだ。
「では、改めてお名前とご依頼の内容をお願いいたします」
「あ、申し遅れました。私の名前は
説明する女性の声は泣くのを我慢するように震えていた。
「なるほど。·····ちなみに警察には相談は?」
「はい。捜索願も出しましたが、まだ何も·····」
「そうですか·····」
「あのっ」
考え込んでいた綾人は女性が声で顔を上げた。
「はい」
「そういえば・・・こんな物が光輝から届いて」
そう言うと持っていた手提げカバンから1冊のハードカバーの最近発売された推理小説と手紙を差し出した。
「これが届いたその日にいなくなったって両親から連絡があったんです」
凛から本を受け取った綾人は手紙を開けると。
『姉ちゃんへ。姉ちゃんが好きそうな小説を見つけたから買っといたよ。良かったらあとで感想聞かせてよ、僕のお気に入りは1番最後だよ。光輝』
と書かれていたメッセージカードが入っていた。次に本を手にしパラパラめくっていくと見返しの部分に小さな封筒が同じ色の紙についていることに気づいた。
「封筒?開けていいですか?」
綾人が凛を見ると凛は頷いた。綾人が封筒を開けると中には、小さな鍵が入ってた。
「それ光輝の部屋の鍵です。でもなんで・・・」
鍵を見た凛は呟き首を傾げた。
「なにかあるんでしょうか·····」
綾人は腕を組み考えていると、ふわっと凛が話しかけた。
「あのよかったら光輝の部屋に行ってみますか?」
「よろしいですか?」
「はい」
綾人が訪ねると凛は頷いた。
「では」
そう言うと綾人は自分のコートを手にすると、凛と一緒に綾人は事務所をあとにした。