「薬草採取が『
そんなに強くはないがこの森でも魔物はいるんだからな」
森に入るところで、リュウはみんなに伝えた。
「わかってるって!
そん時はそん時だ。
腕がなるってもんだ」
持っている杖をブンブンと振り回すロマリア。
パワフルだが、これでも魔法使いである。
魔法も使うが杖でぶん殴っても魔物を倒せる武闘派な魔法使いだ。
「……新作のアイテムを持ってきた。
魔物が出てきたら……使う」
武器やアイテムの開発に余念がないサラはヒーラーだ。
自身の火力が足りない分をアイテムで補っている。
今回はどんな新作を作ってきたやら。
「はーい」
元気よく答えるアリサ。
アリサは万能型の剣士。
剣の攻撃も出来るし魔法攻撃も回復も出来る。
全て備えている分、それぞれの熟練度が必要で、力が足りていない印象が否めない。
ただそんなことも気にせずに持ち前の明るさと前向きさで頑張っている。
個性的な三人が所属する勇者ギルド『アンジュドシエル』
今はまだ
新加入したアリサとロマリアもいるため、ギルドマネージャーのリュウが最初に選んだのは難易度が低い薬草サナーレ草の採取だった。
「とにかく、魔物が出てきても勝手に戦うなよ。
俺の指揮下にあるってことだけ忘れるなよ」
リュウは念を押した。
「はいはい」
「はーい!」
「……了解……」
それぞれの返事で返す三人。
個性的な三人をまとめるリュウも大変である。
魔物を警戒しつつも、サナーレ草が生えているという森の奥地へと向かっていった。
◇
しばらく森を歩いてくと、魔物が急に現れた。
スライムの群れだ。
「こいつらはそこまで強くないけど、多いのは厄介だ。
それに俺たちは今回、初実戦だ。
しっかりとオーダー通りに動けよ」
リュウは三人に指示し、陣形を整えた。
「まずはロマリア!
フレイムで攻撃するんだ」
「まかせろ!」
ロマリアは勢いよく相手に突っ込んで、杖で思いっきり一匹のスライムを叩いた。
そのスライムはダメージを受けて、消滅した。
「おいおい、フレイムだって言ったんだけど」
オーダー無視のロマリアに、リュウは苦笑いをする。
「えーっ、これで十分倒せるのに」
ロマリアは自分の正当性を主張する。
「……
まぁ、仕方ない。
次は聞けよ」
「はいはい」
ロマリアは不機嫌に返事をした。
「サラ、ウインドカッターで攻撃してくれ!」
リュウはサラに対して命令をするも
「……マネージャー
……新作のアイテム使っていい……?」
サラはアイテムを使いたがってうずうずしている。
リュウが躊躇っていると、サラは指示を無視して、新作アイテムを使い始めた。
「ファイアボール……」
ボール状のアイテムを上に掲げると、ボールが開き、なかから火の玉が数発飛び出てきた。
しかし、真っ直ぐ飛ばずにスライムには当たらなかった。
「……あれ……
真っ直ぐ飛ばなかった……
何が悪かったのかな……」
サラはアイテムの中身を見始めてしまい、スライムとの戦いには興味がなくなっていた。
「はーっ……
ああなるとサラは聞く耳持たないしな……
アリサ、お前は行けるな」
リュウは慌ててアリサに声をかけた。
「はい!」
元気よく答えたアリサは、リュウのオーダーを待った。
「フレイムソードで、スライムを薙ぎ払え!」
「はい!
フレイムソード!」
アリサは炎を纏わせた剣でスライムを一閃する。
スライムたちは炎に包まれてダメージを追ってはいるが、倒すまでには至ってない。
「すみません、力が足りなくて」
アリサはリュウに頭を下げた。
「そんなこと気にするな。
戦いに集中しろ!
まだ終わってないぞ」
アリサはリュウに言われると改めてスライムと対峙する。
「ダメージは与えられたから、あともう少しだ。
今度は俺の命令を聞けよ、ロマリア!
再度フレイムで、スライムを一掃しろ!」
アリサの攻撃でスライムたちは弱っていた。
追い打ちをかけるように、リュウはロマリアにオーダーをした。
「あいよ!
フレイム!」
杖から炎の波が放たれ、スライムたちを焼き尽くした。
「ふぅーっ
どうなることかと思ったけど……」
リュウは大きくため息をつき、天を見上げた。
「やりましたね!」
アリサはスライムに勝ったことを素直に喜んでいた。
「へっ、どんなもんよ」
自慢げに話すロマリアだが、リュウが雷を落とす。
「あのなぁ、オーダーを無視すんなっていっただろ。
なんとかなったからいいものの……」
「ごめんごめん」
舌を出して謝るロマリアだが、本当に反省しているようには見えない。
「サラだって、誰がアイテム使っていいって言った」
「……だって……」
シュンとしたサラは反論しようとしたが、言葉に詰まってしまう。
「まぁ、いいじゃないですか!
撃退出来たわけですし、先に進みましょう!」
怒っているリュウに対してアリサは満面の笑みでそう言った。
「次からはちゃんと聞けよ、二人とも」
リュウは怒るのをやめて、再度注意をした。
「はいはい」
「……はい」
二人ともバツが悪そうに返事をした。
「しかし、さっきの戦い、どう見られていたかな」
リュウは気になり、ヒロアクキャストTVの画面を開いた。
――視聴者数:5人
結成したばかりということもあり、あまり見られてはいないようだ。
コメントも
「幸か不幸か、あまり見ている人はいないようだな。
一応常に見られているってことは意識してくれ。
リュウは諭すように三人に話をした。
「わかったよ!」
「……はい」
「はーい!」
相変わらず三人の返事は揃わない。
それぞれの答え方での返事だった。
その後、何度かスライムに遭遇したが、三人はオーダー通りに行動をした。
リュウの指示も的確だったため、苦戦せずになんなくスライムたちを退けていった。
そして目的のサナーレ草を採取し、王都へ帰還した。
――アンジュドシエル
――ノルマ……
――
――評価……B
以上が今回の『
「最初のスライム戦がなければもう少し評価や
リュウは上手く行かなかったことをうなだれて後悔し始めた。
「いいじゃないですか!
しっかりノルマは
笑顔でリュウの顔を覗き込むアリサだった。
「初
そんなに落ち込むなって」
ロマリアは能天気にそう言ったが、かぶせる様にリュウが言い放つ。
「だいたい、お前らがしっかり俺のオーダー聞いていればなぁ……」
「……ごめんなさい。
次は……気をつけます。
でも……アイテムはバッチリ調整するので、次は大丈夫……」
反省の言葉を言うも、サラは次もアイテムを使う気満々だ。
「はぁ……
先が思いやられるよ……」
首を左右に振って嘆くリュウにアリサは元気よく励ました。
「大丈夫です!
これからですよ、これから!
私たちはここからスタートじゃないですか!」
こうしてアンジュドシエルの最初の『