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第16話 勇者キラレオナルドと本物の恐怖 前編

魔物「フハハハハ!貴様ら勇者パーティはここで全滅だ!」


勇者「クッ……」


騎士「勇者殿……………」


魔法使い「私たちもここまでかしらね」


騎士「そんな…………」


魔物「食らえ!我が奥義!」


勇者「ま……待ってくれ!!」


魔物「なんだ勇者命乞いか?まあ今更そんなところしたところで……」


勇者「俺はどうなってもいい!だがこの二人は見逃してやってくれないか?」


騎士「勇者殿!?」


魔法使い「勇者……あなた…………」


魔物「ダメだ。貴様らにはここで死んでもらう」


勇者「この通りだ!!!俺のことは煮るなり焼くなり好きにしてもらっていい!!どうかこの二人だけは!この二人だけは見逃してやってくれ!!」


騎士「勇者殿そんな!やめてくだされ!頭を上げてくだされ!


魔物「フハハハッ!魔物に土下座で懇願する勇者とはなかなか面白いものが見れたぞ!」


勇者「お願いします!!!」


魔物「ふん……しょうがない。貴様に免じてそこの二人の命だけは勘弁してやろう」


魔法使い「!!」


勇者「本当か!?」


魔物「そのかわり貴様にはこちらの兵としてたっぷり働いてもらうぞ勇者」


勇者「…………わかった。それで二人の命が助かるのなら」


騎士「いけません勇者殿!勇者殿ー!」


魔法使い「勇者、あんた自分が何やってるかわかってるの……」


勇者「あぁ…………お前ら、何があっても生きろよ……」


『魔物はスリープを唱えた!騎士と魔法使いは眠ってしまった!』


魔物「よし、行くぞ勇者!ついてこい魔王城に案内してやる!」


勇者「わかった……」



数日後



騎士「勇者殿ーどこですかのー」


魔法使い「だめよそんなんじゃ。もっとバナナとか置いておびき寄せないと」


騎士「それであっさり出てきたらそれはそれで複雑ですぞ」


魔法使い「まあ何にしても今回ばかりは本気であいつを探さないとね」


騎士「おぉ!魔法使い殿!いつになくやる気ですな!」


魔法使い「当たり前じゃない。これから先ずっとあんたと二人きりなんて嫌だもの」


騎士「それはまた複雑ですな」


魔法使い「ねぇ……あそこにいるのってまさか……」


騎士「あれは……勇者殿!?」


魔法使い「えぇ、きっとそうよ……!でもなにか」


騎士「勇者殿ー!!探しましたぞー!」


魔法使い「あっ、待ちなさいバカ!」


勇者「…………」


騎士「いやー勇者殿が魔物に連れて行かれた時はどうなることかと思いましt」


『勇者の攻撃!騎士に240のダメージ!』


騎士「ぐあああああああ」


魔法使い「懲りないわねあんたも」


騎士「ゆ……勇者殿なぜ……」


勇者「…………コロス…」


魔法使い「あらあら今度はどうしちゃったのかしらこの子」


勇者「ニンゲン…………コロス……」


『勇者の攻撃!騎士は盾でガードした!』


騎士「ぐおおお!どうしてしまったんですか勇者殿!!」


勇者「コロスコロスコロスコロス」


魔法使い「洗脳されたみたいね」


騎士「洗脳?」


魔法使い「恐らく魔物によって記憶や感情を消され、殺戮兵器として生まれ変わってしまったんじゃないかしら」


騎士「よくパッと見ただけでわかりますな」


魔法使い「私もよくやるから」


騎士「えっ」


魔法使い「なんでもないわ」



……………………。



勇者「コロス……ニンゲン……コロス」


魔法使い「とりあえず一旦勇者から身を隠したけども、まだ私たちを探してるわね」


騎士「しかし弱りましたなあ……どうしたものか」


魔法使い「しょうがないわね。こうなったら責任持って私たちの手で始末しましょう」


騎士「なぜ初手から最終手段に出ようとするのか」


魔法使い「冗談よ。一応あいつには借りがあるから助けるわよ」


騎士「勇者殿はもう完全に我々のことを忘れてしまったのですかな」


魔法使い「……いえ、そうじゃないわ。人の記憶や感情は基本失くなることはない。なにか余程強いショックを受けて一時的に心に蓋をしてしまっているに過ぎないはずよ」


騎士「強いショックを……」


魔法使い「かわいそうに……魔王城でどんなことされたんでしょうね……ふふふ」


騎士「顔がニヤついとりますぞ」


魔法使い「……とりあえず戻す方法としては、ベタだけどこちらから勇者の心に訴えかけて感情と記憶を取り戻してもらうしかないわ」


騎士「なるほど……して、どうやって」


魔法使い「そんなもん……」ドンッ


『魔法使いは騎士を茂みから蹴り出した!』


騎士「うおっとっとっとっ!魔法使い殿何を」


勇者「イタ……ニンゲン……コロス……」ズダダダダ!


騎士「うわああきますぞ!殺戮兵器と化した勇者殿がこっちに向かってきますぞおおお!」ズダダダダ!


魔法使い「死にたくなかったら必死で走りなさい!そして勇者に語りかけなさい!逃げながら勇者に思い出話とかしなさい!」


騎士「ええとええと……!勇者殿!先月の飲み屋で立て替えた3万Gのこと覚えてないですかな!」


勇者「……シラナイ……コロス……」


魔法使い「このバカ!!そんなもん、いの一番に忘れてるに決まってんでしょ!もっと思い出したいもん語りなさい!」


騎士「ちなみにこの3万には魔法使い殿の分も含まれておりますぞ!!」


魔法使い「…………シラナイワ」


騎士「なるほど!なんて都合のいい!」


魔法使い「とにかくもっと語りかけて!追いつかれるわよ!」


勇者「コロス……コロス……」


騎士「ぐおおおおお!勇者殿!ワシですぞ!勇者殿の親友にして仲間にして師匠であり、勇者殿の敬愛する勇敢なる騎士ことワシですぞ!!思い出して!」


勇者「…………ダレソレゼンゼンシラナイ…」


魔法使い「なんで設定盛るのよ!!臭いおっさんってとこ以外全部間違ってるわよ!」


騎士「その設定はワシ言ってないですぞ」


勇者「コロス……!」


騎士「いやああああ追いつかれますぞおおおお!」


魔法使い「しょうがないわね……」


勇者「アアアアアアアア」


騎士「いやあああああああ」


魔法使い「待ちなさい勇者!貴方なぜ旅をしているのか忘れたの!?」


勇者「…………タビ…?」


魔法使い「そう!貴方はこの世界を魔王から救うために旅をしていたんでしょう!」


勇者「セカイ……マオウ…………」


騎士「おぉ!少し効いているようですぞ!」


魔法使い「もう一押しね」


勇者「オレハ……セカイヲスクウ……ナゼ……?」


魔法使い「貴方は世界を救ってどうなりたかったの?思い出して」


勇者「セカイスクウ……ミンナカラ………ミトメラレル……」


魔法使い「そうよ」


勇者「コレガ…………自己承認欲求……?」


騎士「思わぬ角度の感情が来ましたな」


魔法使い「最初に思い出す感情に人間性が出るのよ」


勇者「ウオオオオオ!ミトメラレタイ!ミトメラレタイ!!」ズガッ!ボコッ!


『勇者の攻撃!騎士に125のダメージ!』


騎士「ぐわああああああ!これめっちゃとばっちり受けてませんかワシ!」


魔法使い「でもいい兆候よ!………勇者!貴方が魔王を倒せば貴方は英雄として称えらるわ!!」


勇者「エイユウ………コレガ名誉欲……?」


騎士「欲ばっかですな」


勇者「オレヲ……タタエロ!ショウサンシロ!」


『勇者の攻撃!騎士に298のダメージ!』


騎士「ぐわああああああああ」


魔法使い「更に魔王討伐となれば王国から多額の報奨金が出て一生遊んで暮らせるわよ!好きな物なんでも買えるし美味しい物も食べ放題よ!!」


勇者「ウオオオオ金銭欲!!物欲!!!食欲!!!!」


『勇者の攻撃!騎士に467のダメージ!569のダメージ!734のダメージ!』


騎士「ぐわああああ!こ……これなんか攻撃力上がってきとりますぞ!」


魔法使い「欲望ばかり解放されてモチベーションが上がってんのね」


騎士「困りますぞ!早く思い出してもらわないと!」


魔法使い「勇者!魔王を倒したら国中の女からモテモテよ!」


勇者「オンナ…………コレガ……性欲…?」


騎士「嫌な予感しますぞ」


魔法使い「がんばってね」


勇者「ウオオオオオオオオオオ!!!オンナアアアアアアア!!!」


『勇者の攻撃!騎士に7438のダメージ!』


騎士「ぐわあああああああああ」


魔法使い「あらあらモチベーションが桁違いね」


勇者「ウオオオオオオオオオオ!」ズガッ!ボコッ!


騎士「魔法使い殿!早く!早く助けてくだされ!」


魔法使い「個人的には面白いからもう少し見てたいんだけどまあしょうがないわね……勇者!こちらを見なさい!」


勇者「……オマエハ……」


魔法使い「私は魔法使い!貴方と共に長年旅してきた大切な仲間よ!あとそこで死にかけてるおっさんも一応仲間よ。感情を取り戻してきた貴方なら私たちとの記憶も取り戻せるはず!思い出して!」


騎士「一応て」


勇者「マホウツカイ…………ナカマ……」


魔法使い「そうよ」


勇者「マホウツカイ…………マホウツカイ……コレガ……恐怖?」


魔法使い「なんでよ」


騎士「わかりますぞ勇者様」


魔法使い「あんたも始末するわよ」 


後編へつづく……


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