勇者「うおおおおおおおお!!」
オーク「甘い」ヒラッ
勇者「かわされた……!?」
オーク『
勇者「ぐわああああああああ!」
オーク「これが、超えることのできない魔物と人間の力の差です」
勇者「クッ……こいつ、一介のオークでありながらなんて力だ…………」
オーク「ほう……その目……まだ諦めていませんか。ならば」
勇者「!?」
オーク『
勇者「ぐあああああ……!なんだこの音は……頭が……おかしくなりそうだ!!」
オーク「フフフ……この美しき旋律……我々魔物には甘美だが人間が長く聴いていると心が壊れてしまいますよ」
勇者「音楽を使って聴覚に訴えかける精神攻撃とは……まさか、オークがこんな技を使うなんて……」
オーク「さて、そろそろ諦めてはいかがかな?愚かなる勇者よ」
勇者「貴様……なぜそんなに品がある……オークのくせに………」
オーク「所詮人間は我々魔物には敵うことのない下等な生き物でしかないのです」クイッ
勇者「オークなのにメガネかけてる……」
オーク「まあもう反撃する気力もないでしょう……後はゆっくりと料理して……」
勇者「ぐっ……お前の好きなように……させてたまるか!!!!!うおおおおお!!!」
オーク「ほう」
勇者「しねええええええええ!」
オーク『
勇者「ガハッ……攻撃が……跳ね返された?」
オーク「惜しかったですね」
勇者「なんでオークが精霊に祝福されてんだよ……おかしいだろ…………疎まれる側だろ普通……ていうかなんでさっきからそんなかっこいいんだよ魔法…………オークなのに……」
オーク「しかし、貴方のその強靭な心……私なかなか気に入りましたよ」
勇者「一人称私なんだ」
オーク「そこで貴方に一つ提案があるのですが」
勇者「……なんだ」
オーク「我々魔王軍の配下に降りませんか?そうすれば貴方には魔王様の右腕としてのポストを用意します」
勇者「オークなのにめっちゃ人事権持ってる……」
オーク「さあどうします?」
勇者「ふざけるな!俺がお前達魔物の仲間になるはずないだろうが!!」
オーク「そうですか……残念です。貴方の力があれば私の『
勇者「なにそのヤバそうな計画……オークが考えるスケールじゃないよ……」
オーク「しかしそうとなればもう容赦はしませんよ。貴方には死んでいただきます」
勇者「お前達の仲間になるくらいなら死んだほうがマシだ……殺せ!」
オーク「最後まで命乞いもしないとは見事な騎士道。よろしい、その心意気に免じて冥土の土産に私の最強奥義をお見せしましょう」
勇者「オークにも騎士道とかあるんだ……」
オーク「一つ、闇の屍朽ちて紅き炎に燃ゆること。二つ、雷に打たれし神威の花の散るが如く。三つ、生命の理に其方の首を差し出したもうに……」
勇者「オークなのになんかめっちゃすごい詠唱してる……」
オーク「ああ主よ、今宵この子羊に悲しみの道を行かせることをお許しください」
勇者「オークなのに信心深い……」
オーク「…………」シュッシュッ
勇者「オークなのに十時切ってる……」
オーク『
勇者「オークなのになんか神っぽい壮大な呪文……ていうか俺これ絶対死ぬううううううううういやああああああああ!!!!」
女騎士「そこまでよ!!!」
勇者「え!?」
オーク「ほう……また一人迷える子羊が…………」
女騎士「よかった勇者!無事だったのね!!」
勇者「お前……なんで来たんだよ!お前だけは絶対に来るなって言ったろ!!このバカ!!!」
女騎士「バカってなによ!あんたが心配だから来てあげたんじゃない!!」
勇者「おっ……お前なんかに心配されなくったって俺が負けるわけねえだろ!」
女騎士「へー?それで今死にかけてたのはどこのどなたかしら??」
勇者「なんだとこいつー!…………って待って今それどころじゃない」
オーク「終わりましたか?」
女騎士「これが……オーク…………結構フォーマルな格好をしているのね」
勇者「ああ、これがオークなのに俺たちの痴話喧嘩を怒りもせず黙って聞いててくれたオークさんだ」
女騎士「私の大事な勇者をこんなにして……許さない!」
勇者「やめろ!お前じゃ絶対に勝てない!お前は色々と本当に勝てないからやめろ!逃げるんだ!!」
女騎士「わかってる……!私のレベルじゃ勝てないってことくらい……」
勇者「レベルとかの問題じゃないんよ」
女騎士「だから……私は……」
オーク「ほう……どうなさるおつもりですかな?」
女騎士「…………お願い!私の命はどうやってもいい!!でも勇者だけは見逃して!」
勇者「おまっ、ばかっ、なんてこと言うんだ!わかってんのか相手オークだぞ!」
女騎士「わかってる!!だからこうするしかないの!!!お願い!なんでもするから!私のことはどうしてくれたっていいから!!お願いだから勇者の命だけは見逃して!!!」
勇者「お前ほんとやめろバカお前!!なんだそれ狙ってんのか!!マジでやめろ!!!そのあからさまなセリフ全部撤回しろバカ!!!!」
オーク「ほう……なんでもすると………?」
女騎士「えぇ……約束するわ…………」
勇者「あーもう最悪もう……だから連れてこなかったのに…………」
オーク「足が震えていますよ?」
女騎士「こ……これは……」
オーク「フフフ……やれやれ…………今日のところはここまでですね」スタスタ
勇者「お、おいどこに行くんだ」
オーク「騎士とはいえ女性に手をあげるなどといった行為は、私のオークとしての美学に反するのでね」
勇者「オークなのに!?!?!?!?!?」
女騎士「あ……あ………」ヘナヘナ
勇者「あっ、おい!大丈夫か!」
オーク「気を失ってしまいましたか。よほど怖かったのでしょう。私としたことがレディーを怖がらせてしまい申し訳ない」
勇者「すごい紳士」
オーク「勇者、あなたをここで殺すのはやめにします。もっと上の世界で強くなった貴方達をもう一度見てみたい」
勇者「オーク普段上の世界にいるの?」
オーク「その日が来たらまた戦いましょう勇者…………」バサッバサッ
勇者「オークなのに翼が生えてるの!?」
オーク「いや…………息子よ……!」
勇者「え!?父さん……!?父さんだったの……!?オークなのに勇者の生き別れの父さんだったの!?なにそれ!!!ちょっ、えっ、マジで!?ていうかほんとにオークなの!?もう絶対オークじゃないでしょそのプロフィール!!」
オーク「さらばブヒ!」バサッバサッバサッ
勇者「あっ、やっぱオークはオークなんや」