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第98話 裏庭の改装②

 大きな木があると落ち着くのか、あまり木から離れていると良くないのかも知れない。

 俺は神様から貰った能力で、直接大木そのものを出すことも出来るには出来るが、それだと本当にただ出すだけなのだ。地面の上にドンッと大木が乗っかるだけになってしまって、根っこが地面の奥にのびてゆかない。


 根っこが地面に深く根付かなくては栄養が吸収されなくて、すぐ駄目になってしまうからな。カイアの植物を育てる力を借りることにしたのだ。こっち側は兵士の人たちも来ないし、向かいは川で人家もない。わざわざ遠くに出すより近くにあったほうがいいだろうからな。カイアが若木に両枝をかざすと、若木はぐんぐんと大きくなり、2階に届こうかという大きさまで成長した。


「そんなものでいいぞ。ありがとうな、

 キラプシアは大きくなった木を見て、嬉しそうにチチィ!チチィ!と鳴いた。

 ピョン!とカイアの頭の上から飛び降りると、すぐに木の上に器用に登っていき、枝の上にチョコンと乗っかって、枝の上から流れる川を眺めているようだった。


「気に入ってくれたようだな、良かった。」

 しかしいい感じの日陰が出来たなあ。これはウッドデッキなんて置いたら気持ちがいいんじゃないか?外でお昼寝やバーベキューなんてのも良さそうだ。そう思うとすぐにやらないと気が済まなくなるのが俺だ。さっそく道具を取り出して、トンテンカンテンやっていると、音が気になった円璃花が部屋から裏庭に出てきて様子をのぞきだした。


「何を作ってるの?」

「ああ。──パーゴラ屋根付きのウッドデッキを、ちょっとな。」

「パーゴラ?」

 と円璃花が首を傾げた。パーゴラとは、つる性の植物をからませる棚のことで、隙間をあけて組んだ木に葉を茂らせることで、屋根代わりとして利用するものだ。


 花や果実など好みの物を育てる楽しさもあり、冬場に落葉する植物を選べば、季節によって日差しの量を調節も出来る。普通の屋根でもいいんだが、植物が多いほうが、カイアもキラプシアも喜ぶだろうからな。

 しかし何を植えようかな?食べられるものにするなら、ぶどう、アケビ、ゴーヤなんかが代表的だが。みんな喜ぶかな?


 ただ、雌しべに雄しべの花粉を手でつけてやらないと、受粉がしにくい。ぶどうは特にそうだ。おまけに甘くするのが大変だから、普通に育てていると、ちょっと酸っぱい実になってしまう。緑の皮の状態の時の、ちょっと酸っぱい果実も俺は好きだが。冷凍してアイスの実のようにしてよく食べたものだ。


 アケビはパックリと割れたところから見える黒い種のまわりの白い部分が甘くなっていて、そこを食べるのだが、ほとんどついていないのでほぼほぼ種だけだと言ってもいい。

 うちでは種のまわりしか食べなかったが、皮を料理して食べる地方もあるという。ゴーヤに似た苦味のある味らしいが。


「ここに植物を植えて、つるをパーゴラにからませて、植物に日陰を作って貰おうと思っているんだが、お前なら何がいいと思う?まだ何を植えるべきか悩んでいるんだ。」

「素敵!なら薔薇がいいわ!」

「薔薇か……。育てたことないんだよな。」

 確かにつる薔薇を植えているパーゴラはよく見かけるな。とても美しいが。


「──ん?」

 カイアが俺の服の裾をクイクイッと引っ張って見上げてくる。両枝を嬉しそうにフリフリしているのがとても愛らしい。

「なんだ、カイアが手伝ってくれるのか?」

 カイアがコックリとうなずいたので、

「なら薔薇にしてみるか。」


 俺は全体をフランソワ・ジュランビルというつる薔薇に決め、パーゴラの両サイドにフェリシアとマダム・ピエール・オジェという薔薇を植えてみた。それをカイアが両枝をのばして薔薇に向け、みるみるうちに、ぐんぐん大きくしてくれた。つるがパーゴラに絡んでいき、とても美しい姿を見せた。


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