「そうだったのか?ジョージ。自分は料理人じゃないと、いつも俺に言うじゃないか。」
とエドモンドさんが首を傾げる。
「俺の国では、正式に就職する前に、お試しで働く習慣があるんですよ。少しの間それで料理人をしてたってだけです。それを本職にするつもりはなかったので。」
実際学生時代のバイトだしな。
自分が食べたいから色々作ってるっていうだけで、人に毎日作りたいとは思わなかったしな。それを仕事にする人たちは、逆に家じゃ作りたくなくなるというし、自分の為の料理をしたい俺からすると、そうなっちまったら本末転倒だ。
オリジナルのレシピを研究するほど、料理に興味があったわけでもないしな。
「調味料棚がこちらですね。使い勝手のよいようにしていただいて構いません。
こちらでも準備しますが、必要なものがあればおっしゃって下さい。揃えますので。」
「とても使いやすいです。何から何までありがとうございます。」
リラクルさんは嬉しそうに目を細めた。
「ハンバーグのタネは、工房でミンチにする予定です。成形したものをご用意も出来ますが、ご自分でなさいますか?」
「そうですね、研究したいので……。」
「では、挽肉にしただけの状態のものを、厨房に運ばせるようにしますね。」
「はい、よろしくお願いいたします。」
後は手順をつめて、今日は解散となった。
リラクルさんを送り届けると、俺はエドモンドさんと一緒に自宅に戻った。
ドアを閉めると、カイアだけが俺を出迎えて抱き着いてくれるので抱き上げて、ただいまを言う。アエラキはまだ会わせられないので、隠れて貰うよう頼んであったのだ。
円璃花が2階で相手をしてくれている。
今日でいったんアシュリーさんとララさんがコボルトの集落に戻ることになっている。
その前に、一緒に見て欲しい場所があったのだ。だからエドモンドさんとともに、2人を迎えに来たのだった。
「しばらくお別れなのね。寂しいわ。」
「色々とお世話になりました。」
アシュリーさんとララさんが俺に挨拶をしてくれる。
「こちらこそ、色々と教えていただいたり、円璃花の話し相手になっていただいて助かりました。お2人といれて、とても楽しかったみたいです。ありがとうございました。」
「こちらこそよ。人間のネイルって面白いのね!私たちのクスカとはだいぶ違うわ。」
「クスカに取り入れられる模様がたくさんありました!お店で提供するのが、今からとても楽しみです!」
クスカはコボルトのネイルのことだ。護身用の魔法石をあしらったもので、デザインも一応あるにはあるが、装飾品ではないので、あまりデザインに種類がない。そこをネイリストである円璃花に、クスカを活かしたデザインを考えて貰って、2人にそのやり方を勉強して貰っていたのだ。かわりにコボルトのつまみ細工のやり方を教えて貰ったりした。
「それじゃあ、そろそろ行きましょうか。
帰る前に、お2人に見ていただきたい場所があるのです。」
「見て貰いたい場所?」
「はい、ついに完成したんですよ。コボルトの伝統品を売る店が。ただ、内装が未完成なので、実際に始めるのはもう少しだけ先になりますが、外観は完成しています。」
「……ついになのね……!」
「見てみたいです!」
2人とも嬉しそうだ。
「一応、まだ何があるか分かりませんから、エドモンドさんと店の護衛をしている人に、店の前で周囲を囲んで貰う予定でいます。馬車に乗る時だけ、マジックバッグの中に入って下さい。馬車の中ではご自由にどうぞ。」
今日はリラクルさんを送り届けるついでもあったので、いつもの荷馬車ではなく、人が乗れるタイプの馬車で、エドモンドさんに来て貰っている。コボルトの通勤には馬車を使う予定だからな、そこからの景色を見て貰うつもりだ。いずれコボルトが歩いて通っても何事もなく過ごせるようになった時の為に、道を覚えてもらうという目的もある。
「──円璃花!帰るわね!」
「またお会いしましょう!」
アシュリーさんとララさんは、階段の上の円璃花とアエラキに手を振った。円璃花がぬいぐるみみたいに、アエラキのお腹を抱っこしたまま、前足を持ってフリフリしている。
アエラキもされるがまま円璃花に抱っこされて、一緒に手を振っていた。
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