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第131話 初恋の想い出と2人だけのディナー⑫

 触り過ぎると生地がかたくなるので、生地が割れた部分や薄い部分は、はみ出た生地を切り取ったものを貼りつけて整えるようにする。フォークで底面全体に小さく穴を開け、冷蔵庫で更に30分間ほど冷やす。その間にオーブンを180度に予熱しておく。


 皮をむいたマンドラゴラ(ごぼう)の千切りを50グラム、水にさらしてアク抜きをして水気を切っておく。クルミを30グラム粗く砕き、乾燥イチジク50グラムも小さく刻んで、バナナは大きければ半本、小さければ1本を、縦半分に切って、更に1センチ幅に切っておく。


 フライパンにごま油を熱し、マンドラゴラ(ごぼう)に油が馴染んだら火を止め、メイプルシロップ大さじ2、醤油少々、クルミ、乾燥イチジク、バナナを加えて予熱で混ぜ合わせる。

 タルト生地とアーモンドクリームを冷蔵庫から取り出して、タルト生地にアーモンドクリームを均等に流し込んだら、マンドラゴラ(ごぼう)たちを並べて飾り付けていく。


 型をオーブン用の網にのせ、180度のオーブンで、30分焼いたところで一度向きを変え、生地が濃いきつね色になるまであと30分焼く。底面にも均等に熱を入れるため、オーブンは引出し棚タイプではなく、必ず網にのせて焼いてやるのがコツだ。


 砂糖大さじ3、水大さじ3を小鍋で沸騰させて冷ましたものでシロップを作っておく。

 タルトが焼き上がったら、熱いうちにハケで上面全体にシロップを塗りると、ツヤが出て美しく仕上がるからだ。型から外して、マンドラゴラ(ごぼう)とバナナとイチジクとクルミのタルト完成だ。すぐ食べても、冷やして食べてもいい。


 2人は頬を染め、なんだかいい雰囲気だ。俺に応えられるか分からなかったが、喜んで貰えて本当に良かった。

 食事会が終わり、ジョスラン侍従長が座を辞したあと、メイベル王太后が改めてお礼を言ってくれた。


「今日は本当にありがとう。おかげでとても楽しい時間が過ごせました。」

「何よりです。この国の王族の皆さまは、本当にとてもお優しいですね。」

 そう言う俺にメイベル王太后がふっと微笑んで、


「他のみんなはそうなのでしょうね。

 けれどわたくしは、ほんの少しだけ違います。ジョスランは少女の頃のわたくしの初恋の君なのですよ。今しかお祝い出来ませんので、少々張り切ってしまいましたの。」

 そう言って、少女のような笑顔を見せた。


 ロンメルにも礼を言い、俺はメイベル王太后が出してくれた馬車で自宅へと戻った。

「ただいま。」

「どうぞ。」

 1階にいなかったので、おそらく円璃花の部屋にいるのだろうと思って声をかけたが、やはり全員円璃花の部屋にいた。


 部屋に入ると、ベッドの上で俺が出したファッション雑誌を読んでいる円璃花の膝を滑り台にみたてて、カイアとアエラキがキャッキャと笑いながら何度も滑り降りている。ツルツルした素材のスカートだからか。子どもは何でも遊びに変えるなあ。


「こーら、2人とも、お姉ちゃんの邪魔したら駄目だろう?」

「いいのよ。可愛いから。」

 そう言って円璃花が、口元がニヨニヨと笑い出しそうなのをこらえているような表情をする。確かに可愛いな。


「遅くなってごめんな、ご飯にしようか。

 出来たら呼びに来るから、もう少しだけ待っていてくれ。」

 俺はみんなにも、同じ料理を振る舞ってやりたかったのだ。まあ、さすがにアビスドラゴンの脚と、一角兎の肉を使ったアヒージョと、マンドラゴラを使ったタルトは出さなかったが。


「出来たぞ、降りてきてくれ。」

 俺は1階から2階に向けて声をかける。

 円璃花がカイアとアエラキを連れて1階に降りて来た。

「何これ、キレイ!」

「だろう?この為にプレート皿も作って貰ったんだ。」


「ピョルル!」

「ピューイ!」

 カイアとアエラキも嬉しそうだ。

 突然頼まれて困惑したが、みんな喜んでくれたし、店にとっても良い結果につながった。結果としてやってよかったな、と思いながら、俺は料理を楽しんだのだった。


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