カイアが巣箱で寝ているキラプシアの無防備なオシリに向けて、そーっと枝の手を伸ばしている。巣箱に上半身を突っ込んで、小っちゃなあんよをプラーンと垂らしているキラプシアは、当然それに気が付いていない。
カイアの枝の手がキラプシアのオシリをつつこうかという寸前。
直前でグッとこらえたように枝の手を引っ込めるカイア。でもまたそーっと枝の手をのばしては、再び引っ込めるのを繰り返していた。……キラプシアの可愛らしい無防備なオシリをつつきたいんだな。まあ、気持ちは分かる。かわいいよな、ハムケツって。というか、動物のオシリって全般可愛らしいよな。
俺は動物のオシリが大好きだ。特に犬のオシリが大好きで、休日は散歩させて貰っている犬のオシリをひたすらおいかけるだけの動画を見たり、実際ついつい散歩している犬のオシリに夢中になって、しばらく後ろを歩いてしまったこともある。とにかく癒やされるし触りたくてたまらなくなる。それが俺にとっての犬や動物のオシリなのだ。
犬はよそのうちの子でも触らせてくれることが多いから、触らせてくれと声をかけて撫でさせて貰うが、ハムスターはびっくりしちゃうからな。触りたいけど、遠慮しちゃうよな。まあ、キラプシアは妖精さんで、実際ハムスターではないんだが、パッと見はイチゴのヘタを頭にくっつけたハムスターだ。
カイアは今度は無防備にプラーンと垂れ下がっている小っちゃなあんよのほうが気になったらしく、つまみたそうに枝の手を伸ばしては、引っ込めるのを繰り返していた。
──うんうん、それも分かるぞ。
可愛らしいよな、小さなあんよは。
キラプシアはハムスターに見えても、実際はそうじゃないから、別に夜行性じゃあないんだが、たまにこうして昼間に寝ていることがある。普段は俺たちと一緒にご飯を食べるんだが、食べずに寝ていたり、キラプシアの為に出した木の上で休んでいることもある。
体調が悪いのかと思って、最初の頃は心配になって、キラプシアの元のすみかの近くに住む、木工加工職人のアンデオールさんに、ミーティアを使って相談をしたのだが、元からそうした性質らしく、特に問題ないとのことだった。むしろ樹木の妖精が樹木からエネルギーを貰うことのほうが普通で、食べ物を食べることのほうが少ないらしい。
キラプシアにとって、食事はオヤツのようなものだそうだ。というか、本来精霊も大気からエネルギーを集めるので、食事をしないものだそうだ。ましてや人間と同じものを食べる、カイアとアエラキが珍しいらしい。
試しにコボルトのアシュリーさんにもミーティアを送って聞いてみたところ、やはり同じ答えが返ってきた。
コボルトのすみかには、カイアの兄弟株にあたるドライアドがいるのだが、日頃から基本何も食べないそうだ。だがコボルトが差し出した供物は食べられるのだとのこと。
アシュリーさんいわく、俺の作るものが2人にとってエネルギーになるから、他のものからもエネルギーを得られるようになったってことじゃない?とのことだった。
俺を守護しているからっていうのもあるのか。まあ、アエラキの兄弟は、普通に俺の出したお餅を食べていたし、元からまったく食べられないってわけじゃあないんだろうが。
けど、一緒にご飯を食べられたほうが、俺としてはいいからな。ちゃんと2人の栄養になっているのが分かってよかった。
カイアが何度も枝の手を出したり引っ込めたりしているのに、キラプシアが気が付いたようだ。ふと目を覚まして巣箱から出てくると、不思議そうにヒゲを動かしながら、カイアの手の匂いをかいでいる。カイアはちょっぴり残念そうな、ホッとしたような表情を浮かべていた。
「ああ、そうだ、2人とも、ご飯だぞ。」
俺はキラプシアのオシリの愛らしさと、その誘惑にあらがっているカイアの可愛らしさに気を取られて、そのことを伝えに来たのをすっかり忘れていたのを思い出した。
ご飯と聞いて、キラプシアがカイアの体にピョンと飛び乗った。
カイアとキラプシアと一緒にゆっくりと階段を降りる。ダイニングには、お腹をすかせた円璃花とアエラキが、既にテーブルの上に料理を並べて待ってくれていた。
「さ、いただきますしよう。」
「いただきます。」
「ピョルル!」
「ピューイ!」
「チチィ!」
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