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第133話 ハンバーグ工房始動②

「本当に馬は20頭でよいのですか?皆さんで運ぶには無理があるのでは……。」

 ミオールさんが心配そうにそう言う。

「マジックバッグがあるので、問題ありません。入れて帰りますので。他の馬車も、4台だけ走らせますので、馬をつないで下さい。残りはマジックバッグに入れて帰ります。」


「随分と大きいものをお持ちなのですね、分かりました。──ガリアーノ!」

 ミオールさんが若い男性に声をかける。確か息子さんだったっけか。話にしか聞いていなかったから、お会いするのが初めてだが、ミオールさんとそっくりだな、ふふ。

「馬をぜんぶ連れてきてくれ。」


「分かりました。」

 親子とはいえ、職場では序列をはっきりさせているんだな。敬語でそう言ったガリアーノさんは、すぐに若い職人さんたちとともに馬を連れて戻って来た。

「ご注文の馬です。」

 まだおぼつかないのが微笑ましいな。


「調教済みの馬100頭なんてめったに注文を受けないので、早めに言っていただいて良かったです。くらをつけたりするだけでも、嫌がる子は嫌がるので、慣れるのに少し時間がかかりますので。まあ、それでも背中に人を乗せるわけではないので、それよりは時間がかかりませんがね。」


 調教と言っても競走馬を作るのと違って、人に慣れさせたり、くらをつけて仕事をするのに慣れさせるだけってことらしい。

 まあそうだよな、1年かけて調教しないと売れないんじゃ、馬車馬としては商売にならないよな。対費用効果が合わなすぎる。ほんの少し慣れさせることだけで、馬が売りやすくなるのなら、牧場側も有り難いだろうな。


 慣れてない人がそれをするよりも、既に慣れている馬を手に入れられたほうが、こちらとしても有り難い。そこまで手探りだと、さすがにすぐに商売するのが難しくなる。アンデオールさんに紹介して貰えて良かったな。

「これが馬の特徴と、名前の一覧です。

 よろしくお願い致します。」


 ガリアーノさんがそう言って、木の板に書いた名前一覧を渡してくれた。それに対応する木札が、それぞれの馬の首に下がっているらしい。馬の名前なんて気にしない人は気にしないだろうが、ああして馬を撫でている様子を見ても、動物が好きなんだろうな。

 馬もガリアーノさんに撫でられて、とても気持ちよさそうにしているみたいだ。


「分かりました。ええと、この子は……。

 ──マシュー、かな?

 ああ、うん、そうだ。名札も一致しているな。よしよし、いい子だ。」

「はい!そうです!」

 ガリアーノさんが嬉しそうに笑顔になる。

 馬車工房より、直接馬に携わる仕事のほうが良かったんじゃないかと思うほどだ。


「じゃあ、これから頼んだぞ、マシュー。

 今日からお前はうちの子だ。」

 俺がマシューの首を撫でると、ブルルル、と返事をしてくれた。

 馬が4頭、馬車につけられる。残りの馬車と馬をマジックバッグにしまったら、引き渡し証明書にサインをして終了だ。 


 ここまで数が多い場合は、お金は商人ギルドを通じて支払うので、俺が支払い済みのお金を、この引き渡し証明書と引き換えに、商人ギルドで受け取る手はずになっている。

「それでは、残りの馬車もよろしくお願いいたします。今日はこれで失礼しますね。」

 手を振って馬車工房をあとにした。


 俺はインダーさんとともに御者席に並んで腰掛け、インダーさん、アスターさん、マジオさん、ザキさんの順番に縦に馬車を走らせると、ラグナス村長の村へと向かった。

「──お、来た来た!ジョージたちだ!」

「おーい!」

 村の入口には、既にラグナス村長の村の人たちが待ち構えていてくれた。


「お待たせしました。」

「いい馬車じゃないか!馬も立派だな!」

「はい、調教済みの馬が買える工房だったので助かりました。さ、皆さんで馬車の荷台に乗って下さい。このままハンバーグ工房まで移動しましょう。仕事の手はずをお教えします。それと同僚の方たちを紹介しますね。」


 ワイワイと村人たちが馬車に乗り込む。

 これから毎日、朝はこの馬車でハンバーグ工房まで出勤して貰うのだ。その役目はアスターさんとインダーさんにお願いしてある。

 ハンバーグ工房を人里離れたところに作っちまったからな、通勤手段の足がない。

 だからその為の折りたたみ収納座席を作って貰ったのだった。


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