「──これは、なんの肉なんですか?」
オリバーさんらしき人が、手を上げてたずねてくる。オリバーさんは、マイヤーさん、ガーリンさんの息子さんで、アーリーちゃんのお父さんだ。横にいるのが奥さんのエミリーさんかな。たぶん、だが。
ハンバーグ工房の仕事にみんなを誘う時に説明した筈なんだがな、まあいいか。
「こちらはオーク、こちらはミノタウロスです。ハンバーグには、オークの肉を7、ミノタウロスの肉を3の割合で使います。」
途端にザワザワしだす村人たち。
「オークはまだしも、ミノタウロスの肉だって!?そんな高い肉を使うのか!?」
ハンバーグ工房長に就任した、ラズロさんが大きな声を上げる。
「お父さん、声が大きい……。」
と、困り眉でラズロさんの服の裾を引っ張っているのが、娘のティファさんだろう。
「高い部分はステーキ肉として売りに出します。ハンバーグに使うのは、すね肉だとか、一般的にはクズ肉にあたる部分です。それらを美味しく食べられる料理法なのですよ。」
そうは言われても、お高いミノタウロス肉を使うと言われて、みんなどうやらソワソワしているようだった。
「あ、あの……、ここの工房は、食堂で昼休みにハンバーグを安く食べられると聞いたんだが、本当なんだろうか?」
誰かがそっと手を上げる。
「はい、もちろんですよ。社員食堂を用意していますので、お昼ご飯はそちらで召し上がっていただくことが可能です。ハンバーグも当然メニューにありますよ。持ち込みも問題ありませんので、ご自宅から持っていらしたものを食べても構いません。」
「ミノタウロス肉を食べられるのか!」
わあっと全員から歓声が上がる。
「もちろんハンバーグだけでなく、日替わりの定食もご準備しますので、お好きなほうをどうぞ。そんなに種類は用意出来ませんが、ハンバーグも毎日味は変える予定です。美味しさを知って欲しいので、まずはハンバーグを召し上がっていただきたいですけどね。」
と俺は笑った。
「アーリーにも食べさせたいわね……。」
エミリーさんがポツリと言う。
「そうだな、親父たちにも……。」
みんな家族の顔を思い浮かべたようだ。
「移動販売用の未加工品でしたら、社割りで安く買えますよ。ぜひご自宅でご家族にもふるまってみてください。」
「そうか!楽しみだ!」
「皆さんの喜びを、お客様たちにも分けて差し上げられるように頑張って下さい。
ハンバーグは大人も子どもも大好きなものですから。きっと誰しも喜びます。」
「よし、頑張ろう!」
「おおー!」
それから、ハンバーグの作り方をひと通りラグナス村長の村人たちに教えると、まだ個人差はあるものの、なかなか手際よくハンバーグのタネが出来てゆく。たくさん数を作れるようになるには、時間がかかりそうだな。
「じゃあ、ある程度出来ましたので、さっそく試食してみましょうか。」
「試食?」
「はい、ハンバーグを食べるんです。
どんなものを作っていたのか、知っていただきたいですし。これが誇りの持てる仕事だと、きっと皆さんに伝わる筈です。」
ハンバーグをビニールシートを敷いたトレイに並べて、トレイをカートワゴンに置き、社員食堂に通じる通路を通って運んで行く。
「それではリラクルさん、あとはよろしくお願いいたします。」
「はい、任されました。」
リラクルさんが俺からハンバーグの乗ったカートワゴンを引き継いで、ゴロゴロと社員食堂の厨房の奥へと運んで行くと、俺はハンバーグ工房に戻った。
「残りのハンバーグを馬車の冷蔵庫におさめたら、食堂に移動しましょうか。」
ハンバーグをぴっちりとラップに包んで、トレイに乗せたものを冷蔵庫におさめると、馬房担当のナッツさんに手渡す。ナッツさんが馬車に冷蔵庫を設置してくれる。冷蔵庫ももちろん、ヴァッシュさんの工房でミスティさんが開発してくれた魔道具だ。
「毎日これを繰り返します。お昼休憩を挟んで、午後からまた作業をします。
さ、今日は試食ですから無料ですよ。
ぜひ皆さんのこねたハンバーグのタネがどうなったのかを舌で確認してみて下さい。」
1度服を着替えて貰って、着ていた服はすべて脱ぎ捨てて貰う。
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