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第134話 ハンバーグ工房の社員食堂①

「──これは、なんの肉なんですか?」

 オリバーさんらしき人が、手を上げてたずねてくる。オリバーさんは、マイヤーさん、ガーリンさんの息子さんで、アーリーちゃんのお父さんだ。横にいるのが奥さんのエミリーさんかな。たぶん、だが。

 ハンバーグ工房の仕事にみんなを誘う時に説明した筈なんだがな、まあいいか。


「こちらはオーク、こちらはミノタウロスです。ハンバーグには、オークの肉を7、ミノタウロスの肉を3の割合で使います。」

 途端にザワザワしだす村人たち。

「オークはまだしも、ミノタウロスの肉だって!?そんな高い肉を使うのか!?」

 ハンバーグ工房長に就任した、ラズロさんが大きな声を上げる。


「お父さん、声が大きい……。」

 と、困り眉でラズロさんの服の裾を引っ張っているのが、娘のティファさんだろう。

「高い部分はステーキ肉として売りに出します。ハンバーグに使うのは、すね肉だとか、一般的にはクズ肉にあたる部分です。それらを美味しく食べられる料理法なのですよ。」


 そうは言われても、お高いミノタウロス肉を使うと言われて、みんなどうやらソワソワしているようだった。

「あ、あの……、ここの工房は、食堂で昼休みにハンバーグを安く食べられると聞いたんだが、本当なんだろうか?」

 誰かがそっと手を上げる。


「はい、もちろんですよ。社員食堂を用意していますので、お昼ご飯はそちらで召し上がっていただくことが可能です。ハンバーグも当然メニューにありますよ。持ち込みも問題ありませんので、ご自宅から持っていらしたものを食べても構いません。」

「ミノタウロス肉を食べられるのか!」


 わあっと全員から歓声が上がる。

「もちろんハンバーグだけでなく、日替わりの定食もご準備しますので、お好きなほうをどうぞ。そんなに種類は用意出来ませんが、ハンバーグも毎日味は変える予定です。美味しさを知って欲しいので、まずはハンバーグを召し上がっていただきたいですけどね。」

 と俺は笑った。


「アーリーにも食べさせたいわね……。」

 エミリーさんがポツリと言う。

「そうだな、親父たちにも……。」

 みんな家族の顔を思い浮かべたようだ。

「移動販売用の未加工品でしたら、社割りで安く買えますよ。ぜひご自宅でご家族にもふるまってみてください。」


「そうか!楽しみだ!」

「皆さんの喜びを、お客様たちにも分けて差し上げられるように頑張って下さい。

 ハンバーグは大人も子どもも大好きなものですから。きっと誰しも喜びます。」

「よし、頑張ろう!」

「おおー!」


 それから、ハンバーグの作り方をひと通りラグナス村長の村人たちに教えると、まだ個人差はあるものの、なかなか手際よくハンバーグのタネが出来てゆく。たくさん数を作れるようになるには、時間がかかりそうだな。

「じゃあ、ある程度出来ましたので、さっそく試食してみましょうか。」


「試食?」

「はい、ハンバーグを食べるんです。

 どんなものを作っていたのか、知っていただきたいですし。これが誇りの持てる仕事だと、きっと皆さんに伝わる筈です。」

 ハンバーグをビニールシートを敷いたトレイに並べて、トレイをカートワゴンに置き、社員食堂に通じる通路を通って運んで行く。


「それではリラクルさん、あとはよろしくお願いいたします。」

「はい、任されました。」

 リラクルさんが俺からハンバーグの乗ったカートワゴンを引き継いで、ゴロゴロと社員食堂の厨房の奥へと運んで行くと、俺はハンバーグ工房に戻った。


「残りのハンバーグを馬車の冷蔵庫におさめたら、食堂に移動しましょうか。」

 ハンバーグをぴっちりとラップに包んで、トレイに乗せたものを冷蔵庫におさめると、馬房担当のナッツさんに手渡す。ナッツさんが馬車に冷蔵庫を設置してくれる。冷蔵庫ももちろん、ヴァッシュさんの工房でミスティさんが開発してくれた魔道具だ。


「毎日これを繰り返します。お昼休憩を挟んで、午後からまた作業をします。

 さ、今日は試食ですから無料ですよ。

 ぜひ皆さんのこねたハンバーグのタネがどうなったのかを舌で確認してみて下さい。」

 1度服を着替えて貰って、着ていた服はすべて脱ぎ捨てて貰う。


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