目次
ブックマーク
応援する
2
コメント
シェア
通報

第135話 消えたアスターさんの想い人②

「今、何かが動きませんでしたか?」

「確かに、何か動いたな。ネズミか?」

「おいおい、パン屋にネズミだって?さっさと追い出すか退治してやらねえと……。」

 俺の脇を、サッと通り過ぎようとした何かを、俺が瞬時に手の中につかまえる。

「ジョージ!ネズミを掴んだら汚いぞ!

 ……なんだ、そりゃあ?」


 俺の握りこぶしの中で、抜け出そうともがいているのは、拳サイズの人間だった。

「ポッチュをはなせ!」

「帰れ人間!」

 すると、パン屋のあちらこちらから、小さな人間たちが姿を表した。子ども、老人、すべてが同じサイズの小さな体をしていて、ストンとした民族衣装に身を包んでいる。


 ラーメンのどんぶりのふちにありそうなデザインの模様で、バンダナと、それとお揃いの模様が、服の袖や服に入っている。色はバラバラだが、デザインそのものは同じだ。

「コロポックルみたいだな……。」

 俺がポツリとそう言うと、俺の手の中の小さな人間と、周囲で見守っていた小さな人間たちが、ギョッとしたような顔をする。


「──え?ほんとにコロポックルなのか?」

「お、お前、俺たちを知っているのか?」

 お年寄りのコロポックルがそうたずねる。

「まあ、俺の地元にいたからな……。

 コロポックルは。」

 地元と言っても、日本という意味でだけどな。北海道のアイヌの先住民とも言われる種族で、物語の中じゃ妖精なことも多い。


 名前の由来は下に住む人という意味で、穴の中で生活をしている。小さな葉っぱを持ったイラストを見たことがある人もいる筈だ。

 あれは蕗の葉で、1枚の葉っぱに10人入れるくらいの大きさの、アイヌの前の日本の先住民説がある存在なのだ。

 こっちのコロポックルは妖精なのかな?

 まさか見れるとは思わなかった。


「だからか?お前からは大地と植物の加護を感じる。我らに近しい存在だ。」

 おじいちゃんコロポックルが俺を指さしてそう言うと、まわりのコロポックルたちもうんうんとうなずきだす。

「いや、それはたぶん、俺の子どもがドライアドだからだと思う。俺を守護して加護を与えてくれているからな。」


「なんと……!それはほんとうか!?」

「ドライアドさまの加護だって!」

「ほんとかな?」

 ザワザワと話し出す声がする。

「だがほんとうにせよ、そうでないにせよ、お前が我らと近しい存在であることに変わりはない。どうか我々を助けて欲しい。

 この店の主人と関わりのあることだ。」


「エレインと関係があるだって!?」

 アスターさんが食い気味におじいちゃんコロポックルに近寄り、子どものコロポックルたちが、その後ろにササッと隠れた。

「この店のご主人……、エレインさんが、どうかなさったのですか?」

「エレインは、我らに優しい人間なのだ。

 ……だがもう2日も帰って来ない。」


「エレインはパンに使う材料を取りに、森に行ったんだ!」

「ポッチュのお祝いの為に、素敵なパンを作るわねと言って……。」

「オ、オイラが、子どもが産まれたなんて、エレインに言わなければ……。」

 俺の手の中で、ポッチュと呼ばれたコロポックルが泣き出した。


「そういうことなら、ジョージだけじゃなく俺たちも手を貸すぜ!」

「ああ、そうだな。エレインのパンにはいつも世話になってる。」

「森のどのあたりか分かりますか?

 案内出来る人がいたらついて来ていただきたいです。一刻も早く探しましょう!」

 アスターさん、インダーさんも胸を叩いてうけおってくれた。


「オイラが案内するよ!エレインがいつも行く場所は分かってる!……けど、そこには夜になると魔物が出るんだ。昼間でも、もし寝ているところを邪魔したりしたら……。

 オイラたちじゃ歯が立たないんだ。」

「だいじょうぶです。俺たちは冒険者だ。」

「1人、元、だけどな。」

「よし、急ごうぜ!」


 俺たちは、マジオさんとザキさんに、馬車と移動販売の店を任せると頼み、エレインさんを探しに行くことを告げた。

 任せておいてくれ!と2人がこたえ、俺たちはポッチュとともに森へと急いだ。

「ここだよ。エレインは今の時期はここの木の実を取ってることが多いんだ。」

 ポッチュが案内してくれた場所は、小高い丘の上に木の実がたくさんなっていた。


「ここ、土が崩れてませんか?」

 木が丘の端っこに立っている場所の、足元の土が不自然にえぐれていた。

「下に滑り落ちたのかも知れんな。

 ……見たところ姿がないようだが。」

 下を覗き見たが、エレインさんらしき人の姿はなかった。

「ちょっと降りてみよう。」

「ロープを出すぜ!俺が行く!」


────────────────────


X(旧Twitter)始めてみました。

よろしければアカウントフォローお願いします。

@YinYang2145675


少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。


7/29よりピッコマでコミカライズ先行配信中です!

9話(1話3分割)まで無料で読めます。

1話につきハート10個までつけられます。


たくさんの応援お待ちしています!

継続の為には売れ行きが大切なので、よければ買って下さい(*^^*)

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?