「……そうだな。よし、声をかけるか。」
俺たちはエレインさんのパン屋を出た。
パン屋のそばの大きな木の下で、マジオさんとザキさんが、移動販売の店を始めていたので、興味を持った村人たちが、ちょうど馬車の近くに集まってきていた。
どうやらだいぶ盛況のようだ。
「ああ、ごめんな、他の場所にも回るから、そいつはここのぶんは売り切れなんだ。」
「次はいつ来るの?」
「週に1度来る予定だから、その時はまた頼むよ。はいよ!銀貨1枚だ!」
マジオさんとザキさんが俺たちに気が付くと、エレインさんが見つかったかたずねた。
エレインさんの名前が出たことで、何人かの村人が俺たちを振り返る。振り返らないのは防具をまとった冒険者らしい人たちだ。
みんな昼間働きに出ているから、村の近くにいる人間は、冒険者のほうが多いんだな。
もう少し村人たちに、移動販売が定期的に来ることを伝えたかったんだが。
「──すみません!!村の皆さんにお話があるのですが、ちょっと聞いていただけないでしょうか。エレインさんが大変なんです。」
「エレインが?」
「そういえば、パン屋に寄ったら、店をあけたままどこかに行っていたみたいね。」
「そういやここんとこ見ないな。」
村人たちがザワザワとしだす。
「パンに必要な材料を取りに森に入って、斜面を滑り落ちたようなんですが、そこでアウドムラのメスに、子どもと間違えられて捕まってしまったようなのです。アウドムラの子どもを親に返したいのですが、探すのを手伝っていただけないでしょうか?」
「まあ……。なんてことかしら。」
「子持ちのアウドムラのメスは危険だ。
子どもを探すのはいいが、どうやって親にかえすつもりなんだ?」
「それは我々でなんとかします。我々はAランクとBランクの冒険者ですので。」
俺がそう言うと、1人の冒険者が、へっ、と口をひん曲げながら俺を見て笑った。
「AランクだかBランクだか知らねえが、探すのはこっちだろう?今この森にはハーピィの群れが住み着いているんだぜ。そんなところに村人を送り込もうってのか?探している最中にハーピィに遭遇したらどうする。
あんたらと別々にアウドムラの子どもを探す村人を、どうやって守るつもりなんだ。」
ハーピィだって!?とザワザワしだす。
「それは、このコロポックルたちが居場所を知っていますので、その場所から離れたところを探していただければ……。」
「ハーピィは移動速度が早いんだ。それに雑食で人間でも妖精でも食べちまう。餌を取りに巣から離れてたらどうするつもりだよ。」
「それは……。」
確かにそういうことはあるかも知れない。
「──おい。」
アスターさんが冒険者の男を睨んだ。
「どうしてお前はそれを知ってる?」
「え?」
冒険者の男がギョッとした顔をする。
「ハーピィの群れの巣のことを、どうしてお前が知ってるんだと聞いているんだ。」
どうしたんだ?アスターさん。顔が怖い。
「そ、そりゃあ……、俺が冒険者ギルドで討伐依頼を受けてきたからで……。」
「そりゃおかしいな。俺たちはさっきコロポックルたちから聞いて冒険者ギルドに確認したら、ハーピィの討伐依頼は出ていないと返事があったばかりなんだが?」
「べ……別の討伐依頼で来てて、たまたま見つけたんだよ!だからまだ俺もこれから報告しようとしてたってだけで……。」
「──おかしいですね?」
今度は俺が、顎に軽く握った拳の親指と人差し指で顎をつまみながら言うと、
「な、な、な、なにがおかしいんだよ!?」
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