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第136話 エレインさんが斜面から落ちた原因③

「ハーピィどころか、このランダ村には、今なんの討伐依頼も出ていないという回答でしたよ。それに、討伐依頼を受けたと言うのなら、あなたのパーティーメンバーはどなたですか?見たところ、お一人のようですが。」

 俺にそう言われて周囲を慌てて見回すと、他の冒険者たちはパーティーでかたまって立っていて、男性から離れるように見ていた。


「こんな人里近い場所で討伐依頼を受ける冒険者なんてな下位ランクばかりだ。採取ならいざ知らず、単独で討伐依頼を受ける奴なんざいねえ。……お前、なんか隠してるな?

 森に入られると都合の悪い何かを。」

「い、言い間違えたんだ!

 討伐じゃなくて、採取で来たんだ俺は!」


「あーっ!!!」

 その時、俺の肩の上によじ登ったポッチュが、男を指差して大きな声をあげた!

「こいつ、エレインを困らせてた奴だ!

 みんな!覚えてるだろ!?」

 その言葉に冒険者の男がギョッとする。

 俺たちの後ろに隠れていたコロポックルたちも、わらわらと俺の肩や頭に登った。


「俺はお前を知ってるぞ。エレインに、毎日俺の為にパンを作らないと、結婚してやらないぞ?とか言っていたのを俺も見た。」

 おじいちゃんコロポックルが言う。

「断っても断っても、パン屋なんて放っておいて、2人で遊びに行こうと言ってたわ。」

「エレイン困ってたよ。」

 他のコロポックルたちも口々に言う。


「……エレインから聞いたことがあるわ。しつこいお客がいて困っているんです、と。」

 村人の女性がそう呟いた。

「そ、それはエレインが照れているだけだ!

 俺たちは付き合っているんだからな!」

「──は?」

 アスターさんが眉間にシワを寄せて睨む。


「何度も断られているんですよね?

 エレインさんにお付き合いを申し込んだことはありますか?──それを了承して貰ったことは?そもそも結婚についても、エレインさんは了承されているんでしょうか。」

 俺は嫌な予感がしながらそうたずねた。


「しているさ!あいつが俺に惚れているから仕方なく結婚してやるんだからな!まあ、パン屋の女なんて、いずれ有名な冒険者になる俺には釣り合わないが。あんなに惚れられちまったら、仕方がないからな。」

 冒険者の男がニヤニヤとそう言った。


「私たち誰も、エレインから、そんな大切な人が出来たなんて聞いたことがないわ。

 どうして惚れられているとわかるのよ?」

 村人の女性が冒険者の男に問いかける。

「初めて会った時に笑顔で俺に挨拶をしたんだ。それに、いつもパン屋に行くと、俺の欲しいパンを取って渡してくれるのさ。

 それも俺の目を見ながらだ。」


「エレインは私たちにもそうしてくれるわ。

 欲しいパンが分からなければ、説明しながら取ってくれる。別にあなただけのことじゃないし、お客様が来たら笑顔で応対するなんて当たり前じゃないの。あんた私の店にも来たけど、私も笑顔だったでしょう?」

 村人の女性は呆れたように言った。


「俺のプレゼントだって受け取ったぞ!」

「なんですか、それは。」

「店で使う消耗品や、店に飾る花さ!

 指輪も贈ったんだが遠慮したんだ。

 まあ控えめな女だからな。贅沢を好まないというところも気に入っているんだが。」

 と冒険者の男はニヤニヤする。


「花くらい、わしらもよくあげとるぞ。

 店の中に飾られてる花は、客からの贈り物のことも多いんだ。店で使えそうなものがあれば、常連ほど差し入れとるしな。」

 と、村人の老人が言う。

 俺もだ、俺も、私もよ、と、他の冒険者や村人たちが口々にそう言った。


「そんな筈はない!言うことをきかないのならプレゼントを返せと言ったら嫌がったんだぞ!俺を好きだからだろう!?」

「返したくない、ではなく、返せるものがないから、ではなく、ですか?花とか消耗品なんですよね?贈られたのは。なら、返したくても返せませんよね。ないんだから。」


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