「ここまま運ぼう!」
「運ぼう!」
「わっせ、わっせ!」
「ちょっと待ってくれ!討伐証明を手に入れないと!……ってその暇はなさそうだな。」
「ですね。」
コロポックルたちは、楽しそうにアウドムラの子どもを運んでいく。俺とアスターさんたちは、剥ぎ取りもままならないうちに、倒したハーピィをマジックバッグに入れて、慌ててコロポックルたちを追いかけつつ、アウドムラのすみかの洞穴へと向かった。
「──ほら、母ちゃんだぞ。」
コロポックルたちと共に、アウドムラのすみかの洞穴へと入ると、母親が、ブメエェエエエ!と鳴きながら立ち上がった。その体に背中を預けていたエレインさんが、ずるっとずり落ちて、その動きに目を覚ました。
「良かった!」
「お母さんと一緒!」
「もう離れちゃ駄目だぞ!」
コロポックルたちが口々に、アウドムラの親子を取り囲んで声をかける。アウドムラの親子は、互いに頭を首に擦り寄せて、再会を喜んでいるようだった。
「ブメエェエエエ!」
アウドムラの子どもが目を覚ましたエレインさんに気が付くと、──なぜかエレインさんに近付き、その頭をエレインさんに擦り寄せた。そして、アウドムラの母親までもが。
「え?ど、どういうことだ?」
エレインさんも嬉しそうに、アウドムラの親子を撫でてやっているではないか。
「人間の匂いが苦手だから、俺から逃げたんだろう?なんでエレインは平気なんだ?」
「エレインさんを兄弟と思ってる……とか?そんなわけは……。」
アスターさんもインダーさんも不思議がっていた。寝起きでボウッとしていたエレインさんは、ふとこちらを向いて目を丸くした。
「アスター!?」
そして慌てて、髪を手ぐしで整えたり、汚れた顔を拭ったりしながら、最後は真っ赤になって両手で顔を隠してしまった。──ん?
「ど、どうしてあなたがここにいるの?」
「どうしてって……、お前が帰って来ないつってコロポックルたちが言うから、村人総出で探してたんだぞ?心配したよ……。」
「アウドムラの母親に、子どもと間違われて離して貰えないみたいだったから、子どもを探して連れて来たんだが……。」
「そうだったのね。ごめんなさい……。上から滑り落ちてしまって、登れなくて……。」
エレインさんは怯えたように言った。
「ああ。そのことならだいじょうぶだ。」
「──だいじょうぶ?」
「お前がここに落っこちるきっかけになった奴は、冒険者たちと捕まえたからな。」
「そうだったの……。」
エレインさんはホッとため息をついた。
「でも、どうしてこの子は戻って来なかったのかしら。アウドムラは木を登れるのよ?」
こんな向かいに深い川しかないところに、どうして巣を作っているのかと思ったが、洞穴の周りに立っている木を登り降りして、移動が出来るからなのか。川が目の前なら、泳げない外敵がこちらに来辛い上に、水飲み場が近くて便利だものな。
「ハーピィの群れが近くに住み着いていまして。それから逃げていたようです。
ハーピィを退治して、アウドムラの子どもを連れ帰って来たと言うわけです。」
「そうだったの……。何もなくて良かったわね。べーも子どもが無事で良かったわね。」
「──べー!?」
突然アスターさんが大声を出した。
「えっ、それって、あの時のやつか?」
「そうよ。私があなたと初めて会った時に、私を守ってくれていた、ベーよ。」
ブメエェエエエ!とベーが鳴いた。
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