第138話 鶏もも肉と、にんじんと、長ネギと、ほうれん草と、タケノコの水煮と、卵と、絹ごし豆腐と、ブナシメジと、刻み海苔のワカメスープ雑炊④
ワカメスープの雑炊を、アスターさんが、俺も結構手伝ったんだ、と言ってエレインさんに差し出すと、エレインさんもインダーさんも目を丸くして雑炊を見ていた。
「これをアスターが……?」
「初めて料理したんだが、ジョージがいたから、味はちゃんと美味いんだぜ?」
アスターさんが照れくさそうに言う。
「……!美味しい!とても美味しいわ。
凄く優しい味ね……。」
レンゲで雑炊を食べながら、エレインさんは嬉しそうに微笑んだ。
「そうだわ、私からもお礼があるの。」
「お礼?」
「いつも買いに来てくれるパンだけどね。
アスター、うちのパン好きでしょう?」
「ああ、それを買いにも来たんだった。」
「お礼に、タダであげるわ。」
「持ってくるー!」
「くるー!」
子どものコロポックルたちが、そう言ってパン屋の店の奥に飛んで行った。
「お2人も、良かったらどうぞ。お礼に差し上げますので、ぜひ食べてみて下さい。
あ、アスターのはこっちよ。」
エレインさんはそう言って、コロポックルの子どもたちが持って来たパンをくれた。
「ありがとうございます。いただきます。」
「美味いんだよなあ!エレインのパン!」
いただいたパンをさっそく食べてみる。
「これは……、アンパンですね!」
モッチモチのパンに、甘過ぎない粒あんがタップリと詰まっている。実に好みのパンだった。粒あんもさることながら、パンがまあ美味いなあ!ずっとモッチモチ噛んでいなくなる食感だった。
「とあるお店で食べた、クリームサンドがとても美味しかったので、自分でも作ってみたくて、仕入先を教えていただいたんです。」
「アンコを使ったクリームサンド?ひょっとしたら、ナナリーさんのお店ですか?」
「はい、ナナリーさんをご存知ですか?」
「ええ。あの店とても美味しいですよね、俺も町に行くたびに食べに行っています。」
ナナリーさんは、先代の勇者が伝えた食べ物だけど、こっちの国では甘くした豆を食べる人があまりいないんです、出せば食べるんですけどね、と言っていたっけな。他にも美味しいと思う人がいて嬉しい限りだ。
「うんうん、エレインのアンバターパンは本当に美味いよな!俺も大好きだ。」
「「──アンバターパン?」」
アスターさんの言葉に、俺とインダーさんが顔を見合わせた後で、自分たちの食べていたパンの食いさしをじっと見つめ、アスターさんのパンの歯型の部分とを見比べた。
アスターさんの食べているパンにだけ、確かに中にバターらしき白いものが見える。
「……インダーさん、パンの中にバターなんて、入っていましたか?」
「……いや、入ってない……。」
コソコソと小声で、インダーさんと俺は、お互いのアンパンの中に、バターなど入っていないことを確認した。
アンバターパンをモリモリ頬張るアスターさんを、嬉しそうに見つめるエレインさん。
「こりゃあ……。」
「ですね……。」
「──ん?」
生暖かい笑顔で俺たちに微笑まれたアスターさんが、不思議そうにこちらを見てくる。
エレインさんが雑炊を食べ終わり、洗い物をしておくぜ、と言ったアスターさんと、インダーさんと共に、パン屋の厨房に行き、使った鍋や食器の他にも、エレインさんがいなかった間にたまっていた汚れものを片付けていく。パンが傷んでいないのが不思議だったのだが、僕らが祝福してるからだよー、とコロポックルたちが教えてくれた。
エレインさんもコロポックルの祝福を受けていたんだな。それがパン作りに活かされているのか。なにか一緒に出来たらいいな。
洗い物をしながら、アスターさんがソッポを向きつつ、あの、その、奴がまた来るかも知れないし、エレインが心配だから、俺がこのルートの専属ってことでもいいか?と聞いてきた。俺とインダーさんは苦笑しながら、いいんじゃないですか?と言ったのだった。
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