「そのとおりです。クリーニング工房は、とても未来のある事業です。今まで排水業者しかあてがなく、スキルを持っていても仕事に結びつかなかった生活魔法使いに、新たな道を開く結果にもつながった。使えないスキルとされていたのが、稼げるスキルとして羨望を集めたのです。これは長い目で見て、国に多大な収益をもたらし、かつ何もスキルを持たない人々の生活を安定させる、驚異的な功績なのですよ、メッペンさん。」
メッペンさんは感動に打ちひしがれて、言葉も出ないようだった。今にも叫び出したいのをおさえるように、軽く開いた足の膝の上で、ぐっと両手の拳を握りしめていた。
「そして、エイトさん、あなたのハンバーグ工房も同様です。今まで安定した雇用を得ることの出来なかった、スキル持ちでない平民を、大量に採用され、なおかつ新たな定住者を増やされましたね。」
社員寮のことかな?
「この国の平民は、長らく続いた干ばつにより、孤児である者が多いのです。親が家を持っていなければ、そもそも家具もなく、宿屋に住んでいますからね。借家を借りれている人でも、かなり恵まれている、ということになるのですよ。エイトさんはそんな人たちに新たな住まいを用意されました。それも破格の値段でです。これはとても驚異的なことなのです。彼らの身分が保証されますから。」
「──身分が保証される?」
「商人は商人ギルドが、冒険者は冒険者ギルトが身分証を発行しますが、平民にはそれがありません。どうやって身分を証明するかというと、住んでいる村や町の長が保証をするのです。だから簡単には村や町に新しい人間が住めませんし、家を借りることも難しい。
保証する人間からしたら、危険人物かも分からないのに、見知らぬ人を受け入れることは難しいですからね。」
「なるほど……。」
だから俺も、最初、ラグナス村長の村に住まわせて貰おうとした時に、ラズロさんに断られたのかな。保証人や保証会社をつけずに家を借りるのって、日本でも難しいけど、この場合村長が保証会社の代わりをするみたいなことか。それは確かに、恐ろしいよな。
「冒険者たちは、最終的に自分の家を、せめて借家でも持つことが夢の人が多いのです。
その日暮らしの平民もそれは同じですが、冒険者よりもその道はさらに厳しい。
冒険者のように身分証も持てず、スキルがなければ稼げる仕事も限られます。
ですが、エイトさんのハンバーグ工房につとめれば、家を借りることが出来る。スキルだってなくていい。出稼ぎと違い安定した給与も払われる。平民からすれば、夢のような職場と言えるでしょうね。」
なるほどな……。
「その功績をたたえて、お2人には勲章と、男爵の地位を与えることが決まりました。
今後税を集めて、国におさめる立場となります。国におさめる分以外の、地方税を徴収し、その土地を発展させる義務もしょうじます。メッペンさんも、エイトさんのように住居を貸し出して、近隣の領地の住民を増やしてもいいかもしれませんね。」
「お、俺が男爵!?」
メッペンさんは目を丸くしていた。
「所有する土地の割り振りについては、後ほど別のものから説明があるでしょう。エイトさんは既に申請されたハンバーグ工房周辺の土地ですね。空いている土地を有効活用申請すれば、今後領地は増えていきます。」
「ええと……。爵位は断れないものなのてしょうか?俺には身に余るといいますか、領地の発展だなんて、とても出来る気が……。」
俺がそう言うと、メッペンさんが驚いた表情でまばたきもせずに俺を見てくる。
「残念ながら、それは出来ません。」
サミュエル宰相が首をふる。
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