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第139話 まさかの叙勲と予定外の叙爵③

「そうするには、営む事業が大き過ぎるのですよ。ひとつの都市であればそれも可能な場合がありますが、お2人の事業はいくつもの土地に拠点があります。お2人に爵位がなければ、おさめる税金は、その土地をまとめる有力な貴族によって決められてしまうものです。──例えそれが7割でも、領地の発展に必要と貴族が決めれば、従わざるを得ないのです。それがこの国の法律です。支払えなければ物でおさめる──つまり事業を取り上げられる場合もあります。これはいわばお2人を守る為の救済措置でもあるのですよ。」


 専門知識と意欲のある方に、長く事業を営んでいただきたいですからね、とサミュエル宰相は微笑んで言った。

「つまり、特例措置、というわけですね。」

「ご理解いただけて幸いです。」

 勲章授与までは、まあ、ここまで早くても理解は出来る。

 日本でだって、オリンピックで優秀してすぐに勲章を与えられることがあるからな。


 だが、爵位はそう簡単に授与出来るものではない筈だ。派閥ってもんがあるし、元からの世襲貴族の反発も多いだろう。王族の判断だけで爵位を授けられるのだとしてもだ。

 俺たちの事業は利ザヤがデカく、その土地の貴族にすぐに目をつけられ、利益どころか事業そのものを引っ剥がされる恐れがあるということか。そうならない為には、俺たちが最低限領地を持った貴族である必要があるわけだ。だからこんなにも早く爵位をくれた。


「……ルピラス商会ですね。」

 その言葉に、サミュエル宰相がにっこりとする。

「お2人がルピラス商会に事業の協力を打診されてすぐに、この規模になる予定なので、爵位の授与を検討して欲しいと話がありましてね。おかげでこちらも早く動くことが出来ました。国にとって有益な事業を、ごうつくばりどもに潰されずにすんで、こちらとしても感謝しているのですよ。──おっと、これはここだけの話にしておいて下さいね。」


 恐らくわざと言ったのであろう、サミュエル宰相の軽口に、ははは……、と、俺とメッペンさんは苦笑したのだった。

「それではそろそろ、他の方々にもご紹介しましょう。お2人と違い、勲章を授与されるだけの方々です。ああ、それと、エイトさんは少しだけ残っていただけますか。別のお話がありますので。メッペンさんは先に移動なさって下さい。案内させますので。」


 そう言ってサミュエル宰相が、こちらを向いたまま右手を軽く上げると、侍女が小さくお辞儀をして、ご案内いたします、とメッペンさんに言った。メッペンさんが侍女に連れられ出て行くと、元からそういう打ち合わせだったのか、護衛の男性も外に出ていき、俺はサミュエル宰相と2人きりになった。


「──決まりましたよ。」

 サミュエル宰相が声を落としながら言う。

 俺にだけコッソリと告げる話。決まったということ。つまりは、ずっと他国と相談していた、聖女である円璃花の所属する国が、ようやく決まったのだ。円璃花の希望で、所属する国が決まるまで、俺の家に住んでいたから、それがついに終わるということになる。


「そうですか……。ちなみにどちらに?」

 せっかく再会出来たのに、浄化の旅が終わるまで、しばらく会えなくなるんだな。お別れのパーティーでもしようかな。

「ええ。この国に。」

 サミュエル宰相がニッコリとする。


「──え?ですが、先代の勇者様と聖女様がこの国に降臨されたから、他の国のいずれかに、という話ではありませんでしたか?」

 直接降臨された場合は、続けて同じ国ということもあったようだが、今回はそうじゃないから、先代の勇者がいるこのバスロワ王国と、ノインセシア王国以外のいずれかに行くであろうという話だった筈なんだが。


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