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第142話 アイリスさんとダニエルさん②

 みんなで一緒に肉まんを作って、食べたいという円璃花と子どもたちにも、肉まんを渡し、特に普段と変わらない会話をかわした。

 俺は朝の担当兵士の人たちにも、無事に肉まんと飲み物を渡して、お礼とお別れの言葉を言うことが出来たのだった。


「──それじゃ、また王宮でね。」

 どうせまたすぐに会うことになるしね、という雰囲気で、円璃花は王宮からの馬車に乗り込んで去って行った。確かにこの後、パーティクル公爵家の温泉にも行くし、円璃花が浄化の旅に出るのはまだ先のことだ。


 お別れという実感がわかないのかも知れないな。キラプシアは巣箱に入って貰ってお留守番、カイアとアエラキにマジックバッグの中に入って貰い、俺の為に到着した馬車──円璃花のよりも当然グレードが落ちるやつだ──に乗り込んで、護衛の兵士の人たちに手を振った。帰る頃にはもういないだろうな。


 王宮につくと、最後の練習をすると言われて、メッペンさんとエリックさんとともに、授与式典のしきたりを練習した。エリックさんは、金髪のウィッグをつけて正装し、嬉しそうに微笑むジュリアさんを連れていた。ジュリアさんは輝くばかりに美しかった。


 エリックさんの隣でとても幸せそうだな。

 今日という日を2人が共に祝うことが出来て、本当に良かったと思った。

 前回俺とばかり話していたエリックさんを俺がメッペンさんに、エリックさんがメッペンさんに、ジュリアさんを紹介する。


 そこに、予定よりもだいぶ早く到着したのだろう、従者を伴った、貴族らしい男性が何人か、壁際からちらりと遠目でジュリアさんを見て話していた。……なんだろうな?ジュリアさんが美人だから見ていたというには、嫌な視線だ。ジュリアさんの題材役という職業を知ってて、見下しているんだろうか?


 メッペンさんは、エリックさんと気が合ったのか、義弟のエムスラントさんと共に、今度エリックさんの家に遊びに行く約束をしているようだ。仲がよくなってなによりだな。

 授与式が始まるまで話し込んでいると、

「エイト様、ご歓談中のところ大変申し訳無いのですが、お連れの方がお呼びです。こちらにいらしていただけませんでしょうか。」


 と、文官らしき人が俺を呼びに来た。

「わかりました。

 すみません、ちょっと失礼いたします。」

 メッペンさん、エリックさん、ジュリアさんにそう告げて、文官の後に従って歩く。

 ……やけに王宮の奥に行くんだな?


「こちらです。」

 文官に通された部屋に入ると、

「ジョージ!待ってたわ!」

 笑顔の円璃花が待ち構えていた。服を着替えてバッチリと正装をし、──なぜか俺のやった、茶髪のウィッグをつけた状態で。


「聖女様が授与式典をご覧になりたいとおっしゃられるので、ご覧いただくことにしました。ただ、聖女様が金髪なことを、どうも一部の貴族たちが耳にしたようでして。」

 ああ、さっきのジュリアさんに対する視線はそれでなのか。護衛も付けずにいたら、さすがに違うだろうとヒソヒソしてたんだな。


「会場にいる、金髪の女性に声をかけているようなのです。変に聖女様に近寄ろうとされても困りますのでね。貴族たちが手出し出来ないようにしたいと思っています。

 ですが式典の前に聖女様に王族席に同席いただきそこで観覧となりますと、本日の主役の筈の勲章授与者と芸術大賞受賞者たちが、注目されなくなってしまうことでしょう。」


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