目次
ブックマーク
応援する
2
コメント
シェア
通報

第142話 アイリスさんとダニエルさん③

 確かに、それはそうだな。

 どう見ても王族席にいる筈のない人物にばかり、注目が集まってしまうことだろう。

「そこで聖女様には変装していただき、一般席で観覧いただこうと思うのですが、ジョージさん、聖女様のエスコートをお願い出来ませんでしょうか?

 離れたところに、護衛は付けますので。」


 サミュエル宰相がそう言って、1人の女性を紹介してくれた。髪を後ろで纏めた明るい茶髪に、切れ長のクールな目元。この国じゃ珍しい一重だが、個性的な美人の範疇だな。

 その女性も正装をした姿だった。俺に目を合わせた後でお辞儀をしてくれたが、なぜかニコリともせずに無表情なままだった。だが不思議と嫌な印象は受けない女性だった。


「聖女様付きの護衛兼侍女のアイリスです。

 彼女は他の者にエスコートをさせて、聖女様の隣に座らせる予定です。ですので万が一にも襲われた場合の点はご安心下さい。」

 サミュエル宰相がそう言った。

「分かりました。俺は問題ありません。」


 アイリスさんのエスコート役はダニエルさんと言う人だった。この人も一重で、この国の人にしてはアッサリした顔をしていた。

 日本人に比べれば当然濃いんだが、護衛として目立たない為なんだろうか?

「さ、行きましょうか!」

 円璃花が笑顔で楽しそうにそう言って、腰に両手を当てて胸を張った。


 赤い絨毯の敷かれた廊下を、円璃花とアイリスさんが並んで歩き、俺とダニエルさんが並んで歩く。円璃花はこの短時間で、すっかりアイリスさんと仲良くなったようだった。

 アイリスさんは無表情だから、あまり話さない人なのかと思ったんだが、それはあくまでも仕事上の立場からのことみたいだ。


 ……というか、むしろ、円璃花よりお喋りだよな。その光景を後ろから見ていた俺に、

「初対面でアイリスと打ち解けた人を初めて見ましたよ。」

 と、笑いながらダニエルさんが言った。

「……アイリスさんとは、長いお付き合いなんですか?」


 仕事だけの関係じゃないかのような口ぶりと気安さだな。かと言って、恋人同士のような甘い雰囲気でもない。幼なじみとかかな?

「実は、妹でして。」

「──ああ。それで。」

 2人とも一重だし、確かに兄妹と言われれば納得出来る雰囲気だな。


「ここから先は、従業員用の出入り口になります。王族用から出ると目立ちますので。

 ひとまずご了承下さい。」

 アイリスさんが無表情に振り返って言う。

 俺はうなずいて、従業員の出入り口から出ると、一度表に回って、改めて入口から、円璃花をエスコートして入った。


「あれ?ジョージさん?」

 王宮の奥に消えた筈の俺が、さっきまでいなかった女性を連れて、入口から戻って来たことに、エリックさんたちが驚いている。

 なぜかルピラス商会副長の、エドモンド・ルーファスさんの姿も見えるな。


「エドモンドさん!なぜここに?」

「今日は父の代理としてな。

 俺も一応、貴族なもんでな。」

 と言ってエドモンドさんが笑った。

 今日ここにいるのは、伯爵家以上の家格の貴族だと事前に聞いている。つまりはエドモンドさんは伯爵令息以上だということか。


 随分とフランクだったから、まさか貴族だとは思わなかった。エドモンドさんはヴァッシュさんの工房にいる、ミスティさんという職人さんのことを好きな筈だが、貴族って平民と結婚出来るものなのかな?サニーさんはそれで、家を出て平民として、イヴリンさんと結婚したんじゃなかったっけか?


────────────────────


7/29よりピッコマでコミカライズ先行配信中です!


アプリ(インストールのみ)または

https://piccoma.com/web/product/188067?etype=episode

から会員登録が必要です。


9話(1話3分割)まで無料で読めます。

1話につきハート10個までつけられます。


たくさんの応援お待ちしています!

継続の為には売れ行きが大切なので、よければ買って下さい(*^^*)


X(旧Twitter)始めてみました。

よろしければアカウントフォローお願いします。

@YinYang2145675


少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?