確かに、それはそうだな。
どう見ても王族席にいる筈のない人物にばかり、注目が集まってしまうことだろう。
「そこで聖女様には変装していただき、一般席で観覧いただこうと思うのですが、ジョージさん、聖女様のエスコートをお願い出来ませんでしょうか?
離れたところに、護衛は付けますので。」
サミュエル宰相がそう言って、1人の女性を紹介してくれた。髪を後ろで纏めた明るい茶髪に、切れ長のクールな目元。この国じゃ珍しい一重だが、個性的な美人の範疇だな。
その女性も正装をした姿だった。俺に目を合わせた後でお辞儀をしてくれたが、なぜかニコリともせずに無表情なままだった。だが不思議と嫌な印象は受けない女性だった。
「聖女様付きの護衛兼侍女のアイリスです。
彼女は他の者にエスコートをさせて、聖女様の隣に座らせる予定です。ですので万が一にも襲われた場合の点はご安心下さい。」
サミュエル宰相がそう言った。
「分かりました。俺は問題ありません。」
アイリスさんのエスコート役はダニエルさんと言う人だった。この人も一重で、この国の人にしてはアッサリした顔をしていた。
日本人に比べれば当然濃いんだが、護衛として目立たない為なんだろうか?
「さ、行きましょうか!」
円璃花が笑顔で楽しそうにそう言って、腰に両手を当てて胸を張った。
赤い絨毯の敷かれた廊下を、円璃花とアイリスさんが並んで歩き、俺とダニエルさんが並んで歩く。円璃花はこの短時間で、すっかりアイリスさんと仲良くなったようだった。
アイリスさんは無表情だから、あまり話さない人なのかと思ったんだが、それはあくまでも仕事上の立場からのことみたいだ。
……というか、むしろ、円璃花よりお喋りだよな。その光景を後ろから見ていた俺に、
「初対面でアイリスと打ち解けた人を初めて見ましたよ。」
と、笑いながらダニエルさんが言った。
「……アイリスさんとは、長いお付き合いなんですか?」
仕事だけの関係じゃないかのような口ぶりと気安さだな。かと言って、恋人同士のような甘い雰囲気でもない。幼なじみとかかな?
「実は、妹でして。」
「──ああ。それで。」
2人とも一重だし、確かに兄妹と言われれば納得出来る雰囲気だな。
「ここから先は、従業員用の出入り口になります。王族用から出ると目立ちますので。
ひとまずご了承下さい。」
アイリスさんが無表情に振り返って言う。
俺はうなずいて、従業員の出入り口から出ると、一度表に回って、改めて入口から、円璃花をエスコートして入った。
「あれ?ジョージさん?」
王宮の奥に消えた筈の俺が、さっきまでいなかった女性を連れて、入口から戻って来たことに、エリックさんたちが驚いている。
なぜかルピラス商会副長の、エドモンド・ルーファスさんの姿も見えるな。
「エドモンドさん!なぜここに?」
「今日は父の代理としてな。
俺も一応、貴族なもんでな。」
と言ってエドモンドさんが笑った。
今日ここにいるのは、伯爵家以上の家格の貴族だと事前に聞いている。つまりはエドモンドさんは伯爵令息以上だということか。
随分とフランクだったから、まさか貴族だとは思わなかった。エドモンドさんはヴァッシュさんの工房にいる、ミスティさんという職人さんのことを好きな筈だが、貴族って平民と結婚出来るものなのかな?サニーさんはそれで、家を出て平民として、イヴリンさんと結婚したんじゃなかったっけか?
────────────────────
7/29よりピッコマでコミカライズ先行配信中です!
アプリ(インストールのみ)または
https://piccoma.com/web/product/188067?etype=episode
から会員登録が必要です。
9話(1話3分割)まで無料で読めます。
1話につきハート10個までつけられます。
たくさんの応援お待ちしています!
継続の為には売れ行きが大切なので、よければ買って下さい(*^^*)
X(旧Twitter)始めてみました。
よろしければアカウントフォローお願いします。
@YinYang2145675
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。