「聖女様が当初降臨なされたノインセシア王国では、嫌がる聖女様に無理やり虫料理を食べさせ、拒否された聖女様に他の料理を出さずに衰弱させた罪として、聖女様に優先的に国内を浄化していただく権利を失い、かつ、国王は王太子に王位を譲り、王宮内にて蟄居することとなった。また、それに関わった貴族は爵位を剥奪、国外追放となったのです。
聖女様に対する不敬は国をも揺るがす。
お前はそれだけのことをしたのですよ。」
サミュエル宰相が冷たく言い放つ。
というか、そんなことになってたのか。
「聖女様たっての希望により、このたび我がバスロワ王国にいらしていただけることになったというのに……。──この罪、お前の首だけでは償えんぞ、ストークス伯爵。」
「わ、私は、私は……。」
「捕らえよ!!」
「待て!待って下さ……!!」
サミュエル宰相の言葉で、ストークス伯爵は捕らえられ、兵士たちに引きずられて行った。アーサー国王陛下は振り返ると、
「さて、聖女様、本当にこの国を出て行かれるおつもりなのでしょうか?」
と微笑んだ。これが円璃花の作戦だと、恐らく気が付いているんだろうな。
今まで持て余していた貴族たちを、処罰するきっかけをくれたのだ。そこに感謝して、円璃花とアイリスさんの無茶には、この際目をつぶってくれるということか。円璃花が本当にこの国を出るつもりがないのを分かった上で、貴族たちに大上段を振り下ろす為に、聖女様の言葉を聞かせるつもりなのだろう。
「それはこの国次第ね。まずは芸術大賞の授賞式をやり直していただきたいわ。気分が悪いもの。評価されるべき人が正しく評価されるところを、見せていただきたいわ。」
「かしこまりました。
ヒューストン夫妻をお連れしてくれ。」
サミュエル宰相が文官に指示をする。
どうやらどこかの控室に足止めされていたらしいエリックさんとジュリアさんが、困惑したようにこちらにやってくる。
「先ほどは失礼をしたね。」
「国王陛下……!」
エリックさんとジュリアさんが、慌ててアーサー国王陛下に頭を下げる。
「君たちを苦しめてきた人間は、先ほど排除したよ。あの司会者も、聖女様に対する不敬罪で、既に捕らえられている頃だろう。
改めて、あなたの授賞を祝いたいのだが、受けていただけるだろうか?」
アーサー国王陛下が優しく微笑んだ。
聖女様に対する不敬罪?
聖女様に嫌なものを見せたから、ということか?それとも、彼自身も、見ていないところで、円璃花に何かしていたんだろうか。
「そんな……。私は、せっかく国王陛下にいただいた賞を辞退するような不敬を行った人間です。勿体ないお言葉です……!!」
「奥方様の名誉の為だ。私があなたであっても、恐らく同じことをしただろう。
頭を上げて欲しい。この国の国民を苦しめるような輩の手綱を、今まで握れなかった、情けない私を許しては貰えないだろうか。
もしも許して貰えるのであれば、ぜひ賞を受け取ってはくれまいか。」
「国王陛下……!!」
そこまで言われては、エリックさんも断れなかったようだ。改めて授賞式が執り行われることとなり、今度はアーサー国王陛下直々に盾を授与されたのだった。俺の隣で、円璃花は嬉しそうに拍手をしていた。
そして、最後に円璃花が聖女として紹介される番になった。堂々と舞台上に上がり、舞台下の貴族たちの顔を一人ひとり見渡した。
「このたび神より、当代の聖女を拝命いたしました、エリカ・トーマスと申します。
私のような人間が神の勅命を受けましたことは、この世界の瘴気のみならず、汚れた人間をも浄化し、瘴気が生まれる元を絶つべしとの、神の意志であると思っております。」
円璃花がニッコリと微笑む。
「──人は、恨み、苦しみ、妬み、嫉み、あらゆる負の感情から、自ら瘴気を生み出し、また瘴気にとらえられる存在でもあります。
自然や瘴気だまりから発生するものであると伺っていたのですが、私は隣国ノインセシア王国にて、人の中から瘴気が生み出されるさまを、何度となく見てまいりました。」
そうなのか?うちの解体職人のワッツさんと、肉加工職人のエイダさんの体から、瘴気がにじみ出ていたように見えたのは、俺の気の所為ではなかったと言うことか。
「聖女の私から見ると、体内に瘴気だまりを抱えている人間はすぐに分かります。アーサー国王陛下の、なんとお綺麗なこと!私がこの国に来たいと思った理由のひとつです。」
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