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第11章: オーラと影の間で

公爵の館の部屋の雰囲気は、小さな対立の後で一変していた。エミとアリアはそれぞれ別々の部屋に引き下がり、アレックスは自分がよく分からない感情の嵐の中に取り残されていた。椅子に座り、公爵の前で水の入ったグラスをいじりながら、彼はため息をついた。


「どうやら女性との問題の方が、悪魔との戦いよりも多いようだな。」

公爵は背もたれの高い椅子にもたれかかりながら、皮肉っぽい笑みを浮かべた。


アレックスは頭を振り、苛立った様子で答えた。

「僕は何もしてないんです。どうしてエミとアリアがあんな風に振る舞うのか全然分からない。まるで...何かを競っているみたいです。」


公爵は深い笑い声を漏らし、何かを理解したように頷いた。

「分からないのか?彼女たちはお前に好意を持っているのさ。」


アレックスは公爵を驚いた目で見つめた。

「それはありえません。エミは僕の仲間だし、アリアとは知り合ってからまだ数日しか経ってない。」


「おお、若いアレックスよ、感情というものは理屈に従うものではない時がある。一つの親切な行動や言葉が、誰かの心に何かを目覚めさせることだってあるのさ。」


アレックスは黙り込み、公爵の言葉を考え込んだ。その時、エミが戻ってきた。光のオーラはかなり抑えられていたが、その表情には困惑と決意が混ざり合っていた。


「アレックス、話があるの。」


彼が答える前に、アリアも入ってきた。足音は力強く、彼らの会話を遮る形で部屋に現れた。


「私もよ。」


二人の女性は互いに横目で見合いながらも、表面上は冷静を装っていた。アレックスは深いため息をつき、この場を避けられないことを悟った。


「分かった。でも、一人ずつ話そう。」


「私が先!」二人は同時に声を上げ、緊張が一瞬走ったが、公爵はその場面を大いに楽しんでいるようだった。


「皆で話すのはどうかな?」アレックスは、場を和らげようと提案した。


エミは腕を組み、アリアを睨みつけた。

「何を話す必要があるの?全ては明らかよ。私は彼の仲間で、いつも一緒に旅をしている。」


アリアは自信たっぷりに微笑んだ。

「それが何?私も一緒に旅に出ればいいだけのこと。それに、アレックスには選ぶ自由があるわ。」


「彼はもう私を選んだわ、そうでしょ?アレックス?」エミは決然とした目で彼を見つめた。


アレックスは両手を上げて降参の姿勢を取った。

「待って!誰も何も選んでない。これが競争だなんて考えてないし、僕はここで...」


彼の言葉が終わる前に、轟音がその場の会話を遮った。それは咆哮のような音であり、それに続いて遠くからいくつかの爆発音が聞こえてきた。公爵は即座に立ち上がり、その表情は険しくなった。


「何が起こっているの?」エミは窓へと急いで駆け寄り、外の様子を伺った。


遠く、公爵の館の外で巨大な影のような姿が現れた。それは以前対峙した教団のリーダーに似ており、その体は光を吸い込むような闇のオーラを放っていた。その周囲には、小さな生物が地面から這い出て、暗闇の波のように館へ向かって進んでいた。


「悪魔だ...しかも一体じゃない。」アレックスは眉間に皺を寄せながら言った。


エミは拳を握りしめ、その光輝くオーラが強烈に輝き始めた。

「どうしてここに?もう片付けたはずなのに。」


公爵は彼らを振り返り、憂慮の色を浮かべた表情を見せた。

「誰かが裏で糸を引いているようだ。館の防衛を急いで整える必要がある。」


アリアは恐怖を浮かべながらも、毅然と顎を上げた。

「私も戦うわ。」


「いや、ここに残れ。」アレックスは断固とした声で言った。


「私には戦う力がある。父もそう言ったでしょう?」


議論が激化する前に、悪魔の咆哮が再び鳴り響き、今度はさらに近くから聞こえた。アレックスは深呼吸し、エミに視線を向けた。


「話してる時間はない。行こう。」


エミは頷き、二人は出口へと向かった。その途中、アレックスは肩越しにアリアを見つめた。


「ここにいて、他の人たちを守ってくれ。」


アリアは抗議したそうだったが、軽いため息をつき、頷いた。


二人が戦場へ向かう中、公爵は窓

の外を眺めながら憂いを帯びた表情を浮かべていた。


遠く、悪魔の群れは勢いよく近づいてきていた。館とその住人たちの運命は、闇の中に包まれつつあった。

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