夜が公爵の館を覆い、魔法の光が闇を切り裂きながら戦場を照らしていた。エミは巧みに戦い、彼女の光の魔法が灯台のように輝きながら次々と襲い来る魔物たちを撃退していた。その隣では、アレックスが集中力を高め、エミの能力を増幅する魔法を放ちながら戦局を支えていた。そのおかげでエミの攻撃はより迅速かつ正確になっていた。
「右だ、エミ!」
アレックスは指さしながら叫び、彼女を包囲しようとする魔物の群れを知らせた。
エミは頷き、光の波動を放って魔物たちを一掃した。しかし、彼女の表情は暗く、遠くから彼らを見つめる巨大な魔物の存在に気づいた。周囲の魔物たちを差し向けながらも、冷静さを保つその姿に、得体の知れない不安が広がった。
その時、紫の髪が戦場の中央に現れた。それはアリアだった。彼女は公爵の武器庫から持ち出した剣を手にし、即席の鎧を身に着けて戦いに飛び込んできた。
「私だって黙って見てるだけじゃない!」とアリアは叫び、小さな魔物たちに向かって駆け出した。
エミはその姿を見て一瞬攻撃の手を止め、驚きと苛立ちをあらわにした。
「ここで何をしているの?これは遊びじゃないのよ、アリア。」
「助けに来たのよ!あなたの許可なんて必要ないわ!」とアリアは反論し、攻撃をかわしながら魔物を切り伏せた。
二人の緊張感が再び高まる中、アレックスはなんとか二人を冷静にさせようとした。
「魔物に集中しろ、二人とも!」
しかし、混乱の中でエミとアリアはお互いの動きを妨げ合ってしまった。アレックスの魔法で強化されたエミの光の攻撃が危うくアリアに当たりかけ、一方でアリアの動きがエミの正確な攻撃を遮った。
混乱が頂点に達し、ついに二人は互いの魔法に巻き込まれてしまった。エミはアリアの風の魔法を軽く受け、アリアはエミの光の閃光に一瞬目を眩ませられた。
アレックスは二人を支援するために魔力を使い続けていたが、ついに膝をつき、息を切らしてしまった。
「アレックス!」二人は同時に叫び、対立を忘れて彼のもとに駆け寄った。
エミが一番に膝をつき、肩に手を置いた。
「大丈夫?ごめんね、無理をさせちゃった。」
アリアも彼の手を取り、後悔の色を浮かべながら言った。
「私のせいよ。私が来なければこんなことにはならなかった。」
アレックスは苦しそうに顔を上げ、二人を見つめた。
「責任の押し付け合いはやめろ... 一緒に戦え... お前たちが争ったままじゃ勝てるものも勝てない。」
彼の言葉に、二人は深く反省した様子で視線を交わした。そしてわずかに頷き合った。
「とりあえず、力を合わせましょう。でも、エミ、だからって諦めるわけじゃないから!」とアリアは強い決意を示した。
「私だって同じよ。」とエミも言い返し、敵に向き直った。
二人は互いに背を預け、魔物を次々と撃破していった。まだ完璧な連携ではなかったが、その動きには確かな進歩が見られた。
しかし、巨大な魔物はなおも遠くからその様子を観察していた。そしてついに動き出し、一歩一歩地響きを立てながら近づいてきた。魔物が手を掲げると、闇のオーラが周囲を包み込み、放たれる魔法を吸収していった。
「嘘でしょ...」エミは自分の光の魔法が無力化されるのを見て呟いた。
「私たちの魔法を吸収して力に変えてるのね...」アリアは歯を食いしばりながら状況を分析した。
魔物は低く響く声で笑った。
「愚かな人間ども、その努力は無意味だ。」
二人は後退しながら作戦を考えようとしたが、時間はなかった。アレックスも立ち上がろうとしたが、未だに力が戻らない。
「どうするの?」アリアがエミを見ながら問いかけた。
「分からない。でも諦めるわけにはいかない。この魔物が館にたどり着いたら、全員が危険にさらされる。」
魔物が突進してくる中、エミ、アリア、そしてアレックスは、乗り越えられそうにない試練に立ち向かおうとしていた。