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第3+1章: 影の存在

一行がヴェルダラの村に到着したのは夕暮れ時だった。空は赤く染まり、最初の星々が瞬き始めていた。ヴェルグリスとは違い、この村は完全に放棄されてはいなかったが、まるで人の気配がないように見えた。扉は閉ざされ、窓はしっかりと塞がれていた。重苦しい静寂が村を覆い、聞こえるのは一行の足音が地面を踏む音だけだった。


「何かに見られている気がするのは俺だけか?」アレックスは身に着けている服の襟を直しながら尋ねた。


「その感覚は正しいかもしれないわね。」アリアは剣を片手に構えながら答えた。


EMIは慎重に辺りを見渡した。

「ここには前の村よりも強い魔力が漂っている。何か、あるいは誰かがこの場所を操作しているわ。」


彼らは通りの隅々まで目を凝らしながら慎重に進み、手掛かりを探した。村の中央広場に近づくと、ヴェルグリスの円形模様に似た印を発見した。しかし、ここではその印がより完成されており、不気味な暗いエネルギーが漂っていた。


「間違いないわね。あの闇の魔導士か、その手下たちの仕業よ。」EMIはしゃがみ込み、ルーンを調べながら言った。


アレックスは周囲を見回し、不安そうに言った。

「戦闘の跡が全然ないのはおかしくないか?村人たちはただ…消えたみたいだ。」


「それがかえって不気味なのよ。」アリアは屋根の上を警戒しながら、何かが影に隠れているのではないかと睨んだ。


EMIがルーンを解読しようとしていると、静寂を破るように柔らかく嘲笑するような拍手の音が響いた。


「おやおや、ここには何があるのかな?三人の侵入者が立ち入るべきではない場所で何をしているのやら。」


一行は一斉に声の方を見上げた。村で一番高い建物の屋根の上に、月明かりを背景に人影が浮かび上がっていた。その人物は忍者を思わせる装束を着ていたが、装飾が派手で、羽根や金の刺繍、そして風になびくマントが特徴的だった。


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その顔は黒い仮面で隠されていたが、赤い模様が施されていた。口元だけが露出しており、不気味な笑みを浮かべていた。その笑みには鋭い牙が覗いている。


「お前たちは王国の新しい犬ってわけか?」男は誇張された仕草で首を傾けながら言った。「つまらないね。もっと面白いものを期待していたんだが。」


誰も反応する間もなく、その男の姿は一瞬にして消えた。


—どこにいる?! —アリアが叫び、剣を高く掲げたまま素早く振り向いた。


アレックスは背後に強烈な存在感を感じ、背筋に冷たい震えが走った。


—ここだよ、小さな英雄さん。 —その奇妙な男の声が、グループのすぐ背後から囁いた。


アレックスが急いで振り向くと、男はすでに少し離れた場所に立っており、無造作に体を揺らしながら彼らを見つめていた。


—お前は何者だ? —EMIが問いただし、グループの周囲に魔法のバリアを張った。


男は嘲笑を浮かべながら笑い声を上げた。

—俺の名前か?面白い質問だな。知る必要はないが、どうしてもというなら...ザレクとでも呼んでおけ。ただし、この夜が終わったあとに覚えているとは思えないけどな。


—お前は闇の魔導士の手下か? —アリアが剣をしっかりと握りながら尋ねた。


ザレクは首を傾け、その笑みをさらに深くした。

—そうかもな。それがどうした?俺はただの使い走りにすぎない。お前たちがこれ以上首を突っ込むべきではないと忠告しに来ただけだ。


彼らが応答する間もなく、ザレクは手を動かし、暗黒のエネルギーの波を彼らに向かって放った。EMIは素早く反応し、バリアを強化したが、その衝撃で一瞬よろけた。


—危ない! —アレックスが叫び、ルーンの力で攻撃を繰り出した。


光の爆発はザレクを直撃したかに見えたが、彼は次の瞬間、別の場所に移動しており、手すりに座って足を組んでいた。


—予想通りだな。 —彼は皮肉を込めて笑った— だが、新米にしては悪くない。


ザレクは立ち上がり、彼らに指を向けた。その手から暗黒のエネルギー球が放たれ、グループに向かって飛んでいった。アリアは素早く身をかわし、EMIは火の魔法でエネルギー球を打ち消した。


アレックスはザレクを側面から攻撃しようとしたが、彼は再び姿を消し、アレックスの背後に現れて囁いた。

—お前にはまだ無理だな、坊や。


何もできないままのアレックスに対し、アリアが素早く割り込み、剣を一閃してザレクを後退させた。


—やるじゃないか。グループの番犬ってところか? —ザレクは笑いながら、容易に攻撃をかわした。


ザレクが戦いをさらに激化させようとしているように見えたそのとき、彼は突然動きを止めた。その笑顔が一瞬だけ消え、遠くの方を見つめた。


—どうやら呼ばれているようだな。残念だ、いいところだったのに。


ザレクは軽やかに後方へ跳び、高い屋根の上に再び着地した。


—最後に忠告しておいてやる。もし本当に俺の主と戦うつもりなら、覚悟を決めることだな。これはほんの序章にすぎない。


そう言い残し、ザレクは影の煙となって消えた。重苦しい沈黙がグループを包む。


—あの男...何者だ? —アレックスは息を荒らげながら呟いた。


—忠実な部下。そして非常に危険な存在ね。 —EMIはバリアの損傷を確認しながら答えた。


アリアは拳を強く握りしめた。

—守りに入っているだけではだめだ。この闇の魔導士とその部下たちについて、もっと情報を集める必要がある。


一行は、この戦いがもっと大きなものの始まりにすぎないことを悟った。



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