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第45章:「巨人の激突」

空気は、二人の戦士が解き放ったエネルギーで震えていた。

黒い炎を纏ったガロッシュが隕石のように突進し、その斧が一歩ごとに唸りを上げる。

対するエミは、光の剣を輝かせながらしっかりと立ち、その瞳には純粋な決意が宿っていた。


ズドン!!


激突は凄まじかった。

ガロッシュの斧が雷のように振り下ろされ、それをエミの剣が受け止めた瞬間、衝撃波が地面を引き裂いた。

弾かれた二人は一瞬距離を取るが、ガロッシュはすぐさま動いた。

巨体とは思えない素早さで体をひねり、黒炎を纏った横薙ぎの一撃を放つ。


エミは反応する間もなく、一振りの剣でなんとか防ぐが、凄まじい衝撃で数メートルも後退した。

足元に深く刻まれた跡が、その一撃の威力を物語っている。


「そうこなくちゃなぁ!!」

ガロッシュが獰猛な笑みを浮かべて叫ぶ。

「どっちかが倒れるまで戦おうぜ!!」


エミは息を吐き、身体中を駆け巡るアドレナリンを感じながら囁く。

「……望むところよ。」


次の瞬間、剣を強く握りしめ、ガロッシュへと突進した。


ガロッシュも負けじと猛然と突っ込む。

黒炎の斧が破壊の軌跡を描きながら振り下ろされる。

しかし、エミは避けずに剣を交差させ、その刃に魔力を集中させた。


「――鏡光剣!」


バァァァン!!


閃光が戦場を包む。

ガロッシュは一瞬、自分の攻撃が鏡のように跳ね返されたのを見た。

咄嗟に斧を振りかざし、光を打ち払うが、その刹那――


エミの剣が黄金の炎を纏い、ガロッシュの胸を貫くように横薙ぎに切り裂いた。


「ぐぅっ……!」


ガロッシュの黒い血が地面に滴る。

しかし、その表情に浮かぶのは苦痛ではなく、興奮だった。


「いいぞ、エミ!!」

血を拭いながら、ガロッシュは高らかに笑う。

「もっと本気で来い!!」


ガロッシュが斧を地面に叩きつけると、闇の裂け目が広がり、黒炎の柱がエミを包み込む。


「――!!」


灼熱の黒炎がエミの体を襲う。

だが、その目の光は決して消えなかった。


「……こんなもので、私が止まるとでも?」


光の波動が爆発し、黒炎をかき消す。

エミの体が輝き始め、まるで戦場に太陽が昇ったかのように光を放つ。


ガロッシュの目が歓喜に染まる。

「いいぞ、いいぞぉ!! もっとだ!! もっと俺を燃え上がらせろ!!」


エミは剣を天に掲げ、全身の力を解放する。


「……最終奥義――」


二本の剣が一つになり、純粋な光の刃へと変化する。

その剣から放たれるエネルギーは、まるで天の裁きを体現するかのように眩い。


「――暁の一閃!!!」


エミは一気に間合いを詰め、神速の斬撃を繰り出す。

その一撃が戦場を切り裂き、黄金の光がガロッシュを飲み込んだ。


ガロッシュは斧を振り上げ、防ごうとするが――


ドガァァァァン!!!


爆発的なエネルギーが周囲を襲い、大地は崩壊し、天は光で満たされた。


光が消えた時、ガロッシュは膝をついていた。

手にした斧は、真っ二つに砕け散っていた。


「……すげぇな……」


かすかに呟くと、そのまま力尽きて倒れる。


エミは剣を消し、息を切らしながらも立ち続けていた。

その瞳には、満足そうな輝きが宿っていた。


「……全力を尽くしたわね。」


――その時。


砂埃の中から、アレックスとアリアが駆けつけた。

戦場は、荒れ果てた大地と未だ燃え続ける魔力の残滓で埋め尽くされていた。


そして、その中心には、疲れながらも誇らしげに微笑むエミの姿があった。


「エミ!! やったね!!」

アリアが興奮気味に駆け寄る。


アレックスも静かに歩み寄り、腕を組む。

「……すごい戦いだったな。」


エミはアレックスを見つめ、わざとらしく肩を落とし、疲れた様子を見せる。


「ア、アレックス……」

か弱い声で囁く。

「私……エネルギーが……もう……ないの……」


アレックスは眉を上げたが、すぐにその芝居を見抜いたようだった。

「……へぇ、本当に?」


「うん……だから……」

エミは可愛らしく唇を尖らせる。

「サポートの技……お願い……」


アリアは呆れ顔で腕を組む。

「ふーん、都合のいい時だけエネルギー切れになるのね?」


エミは気にせず、キラキラした瞳でアレックスを見つめ続ける。

アレックスは小さくため息をつき、額に指を当て、サポート魔法をかけた。


温かな金色の光がエミを包み、彼女の疲れを癒やしていく。


「……あぁ~、これこれ……」

満足げに息をつくエミ。


すると――


ポンポン


アレックスが突然、エミの頭を軽く撫でた。


「……よくやったな、エミ。」


エミの目が一瞬で輝きを増す。

その笑顔は、まるで太陽のようだった。


「ちょ、ちょっと!!」

アリアが割り込んでくる。

「私も戦ったんだから、私にも撫でてよ!」


「え?」


「当然でしょ!!」


アレックスは一瞬戸惑っ

たが、ため息をつきながら、アリアの頭にも手を置く。


「はいはい……」


「んふふ~♪」


嬉しそうに目を閉じるアリア。

その様子を見て、エミは小さく頬を膨らませた。


「……私の特別なご褒美だったのに。」


アレックスは小さく笑った。


しかし、次の瞬間――


地面が激しく震え始めた……!


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